事業活動を進めるにあたって、戦略立案は重要な意味を持ちます。
なかでも営業戦略は売上に直接関わるといえる部分であり、企業の成績を左右する要素。そんな営業戦略を立案するにあたって、効率的かつ確実な成果実現のためには、正しい理解と実行が欠かせません。
本記事では営業戦略の意味、戦略立案の流れ、役立つフレームワークなど、実践において重要な点を解説します。
目次
営業戦略の意味
営業戦略とは売上や利益などの目標を実現させるために立てる、営業活動に関する計画のことです。
効率的な営業活動のためには、営業戦略の立案が重要です。何の計画も立てずに行動を進めては、方向性のブレや無駄の発生などが起こる恐れが大きくなってしまいます。また組織全体で効率良く営業成績を高めるために、連携や協力がしやすい仕組みも必要です。
営業戦略は、営業活動において効率よく目標達成するために必要なものです。
営業戦略と似た用語との違い
営業戦略と似た用語として、以下の3つが挙げられます。
1. 営業戦術 |
それぞれの意味と、営業戦略との違いについて解説します。営業戦術経営戦略マーケティング戦略
営業戦術
営業戦術は営業活動を進める上でとる、具体的な手段を意味する用語です。戦略は英語でStrategy(ストラテジー)と表現しますが、戦術は英語でTactics(タクティクス)となります。
営業活動の進め方に関する計画は営業戦略ですが、その計画を実行する具体的な方法が営業戦術です。例えば「Webの集客力を高める」が営業戦略だとしたら、「コンテンツの発信量を増やす」が営業戦術となります。
営業戦略を先に立案し、その後に具体的な手法として営業戦術を決める流れが一般的です。
経営戦略
経営戦略は組織としての存続やさらなる発展のために立てる、中長期的な目標および計画のことです。名称に「経営」が入っているように、営業に限らず広い範囲を指します。
営業戦略はあくまで営業に関する戦略であり、範囲は限定されています。一方、組織の方針に関する総合的な戦略が経営戦略であり、営業戦略は限定された範囲の戦略といえるでしょう。
大きな目標に向かって進む際には、全体的な計画を立てた後、さらに細分化して計画を立てていきます。企業経営も同様であり、全体的な計画として経営戦略を立て、経営戦略達成のために営業戦略を立てる流れです。
範囲の広さや目標とする対象が、経営戦略と営業戦略の大きな違いといえます。
マーケティング戦略
マーケティング戦略はターゲットへ商品・サービスを届けるためのマーケティング面に関する計画です。
顧客満足度や長い目で見たトータルでの売上などを高めるためには、単にその場での売上のみを重視すれば良いわけではありません。ニーズを考えた上で商品・サービスを開発し、適切な情報発信および宣伝活動を行った上で、必要とする人に届ける必要があります。
そのため、良い商品・サービスを扱うだけでなく、生活者に自ら買いたいと思わせるような仕組みが必要です。ビジネスモデルによって営業戦略とマーケティング戦略の関連性は異なりますが、いずれにしても連携して戦略を立てていくことが重要です。
営業とマーケティングが別個の目的で動いてしまう場合、外部に対して一貫したメッセージを届けられなかったり、非効率な組織になったりするリスクがあるからです。
関連記事:「顧客起点」で組織連携を進化させる3STEPとは?
営業戦略立案の流れ
営業戦略立案の流れを紹介します。
企業・状況によって最適な方法に相違はありますが、一般的な流れは以下のとおりです。
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現状分析
営業戦略は目標達成のために立てる計画ですが、その目標を設定するためには、まず現状の把握が必要です。
自社の状態以外にも、以下のような幅広い要素を確認する必要があります。
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営業活動を左右させる可能性がある要因を、なるべく多く洗い出します。
なお現状分析では、フレームワークの活用が便利です。詳細は後述します(今すぐ確認したい方はこちら)。
関連記事:CRMデータを用いた顧客分析はじめの一歩
課題の明確化
営業活動に関わる要素の洗い出しを行ったら、課題の明確化を行います。
営業状況を改善するためには、現状で妨げとなっている要素の解消が重要です。問題が残った状態のままでは、スムーズな営業活動が難しいためです。したがって、目標設定を行う以上、課題の明確化も非常に重要となります。
基本的な戦略の設定
ある程度の情報が集まったら戦略の設定に移ります。いきなり細かな戦略立案を行うのではなく、まずは基本的な部分から計画し、その後さらに細かい内容を決めていくと効率的です。
営業戦略の立案を効率良く進めるために、基本的かつ全体的な戦略からの着手が大切です。
営業戦術の設定
営業戦略が決まれば、続いて営業戦術の設定です。立案した戦略を実現させるためにとる具体的な方法を決めていきます。
営業戦術の設定で大切なのは、目標達成に効果的であり、自社との相性の良さも期待できる方法の選択です。営業戦術に該当する方法にはさまざまなものがあり、期待できる成果や進める際の特徴などが異なります。営業戦術について調べるうちに、効果を絶賛されている方法を見つけるかもしれません。
しかし、自社に合わない方法の場合、いくら評判が良さそうでも、営業戦術としての採用が逆効果になってしまう恐れがあります。営業戦術を設定する際は、自社にとってのメリットや相性の良さなどの確認・検討が必須です。
評価や管理、改善
営業戦略は一度立案した内容を使い続けるとは限りません。営業活動の進捗および成果を振り返りながら、営業戦略に関する評価や管理を行い、必要に応じて改善を進めます。
誤った方法や合わない進め方を続けてしまうと、効率的な成果の実現は難しいです。定期的に振り返り、営業戦略の調整を行います。
関連記事:営業管理とは?5つの管理指標と管理方法を効率化するコツを解説
営業戦略で役立つフレームワーク
営業戦略立案では全てのステップが大切ですが、なかでも現状分析は方向性を左右する重要なポイントです。そんな現状分析を効率的に進めるには、フレームワークが役立ちます。
有用な6種類のフレームワークを紹介します。
1. 3C分析 |
3C分析
3C分析とは営業活動に関わる要素のうち、以下3項目に関して行う分析です。
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現状分析は特定の分野だけでなく、さまざまな視点から要素を洗い出す必要があります。一部に偏りすぎてしまうと、正確性が高い分析結果とは言えません。自然に広い視野を得られるため、3C分析は有用です。
4P分析
4P分析ではマーケティングと関係のある要素を分析します。
以下の頭文字から構成された用語です。
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これらの項目について、それぞれ関係する要素をなるべく多く洗い出します。それぞれの要素について、優位性の有無や課題を抱える部分などを分析していきます。
SWOT分析
SWOT分析とは営業活動に関わる要素について、4つの種類に分類する方法です。
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コントロールの可否についても検討するために、外的要因・内的要因それぞれの分類も必要です。
MECE
MECEとは網羅的かつ重複のない様子を意味します。
以下の頭文字から構成されています。
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不足・無駄のいずれも発生させないために、MECEの観点を用いた現状分析が効果的です。
PEST分析
PEST分析とは現状分析の中でも、外的要因に関して活用しやすい手法です。
営業活動に影響を与える、外部環境を構成する要素を、以下4つの分野で抽出・分析します。
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外部環境のより深い分析に便利です。
「選択」と「集中」戦略
「選択」と「集中」戦略とは、大きな効果が期待できるものを選択し、力を集中させることをいいます。多角化経営と正反対の性質を持つフレームワークです。
業績・売上が出ていない事業について、場合によっては切り捨ても行います。より効果の期待できる活動への集中により、効率的かつ確実な売上拡大を目指します。
こちらのフレームワークでは、短期的な売上回復の効果を非常に期待できるでしょう。一方で、分散によるリスクヘッジが解消されてしまう恐れや、長い目で見た時の成長鈍化・選択肢縮小などが懸念点です。
まとめ
営業活動を効率良く進めるためには、営業戦略の立案が欠かせません。適切な順序を踏み流れに沿って進めれば、無駄なく営業戦略を設計できるでしょう。現状分析では必要な要素の洗い出し・分析を十分に行えるよう、フレームワークの活用が便利です。
ただし営業戦略を立案したとしても、リソース不足などの理由により、実行が難しいケースも起こり得ます。せっかく効果の期待できる営業戦略が設計できたとしても、具体的に進められなければ意味がありません。
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今井 晶也(いまい・まさや)
株式会社セレブリックス 執行役員 マーケティング本部長 セールスエバンジェリスト
セールスエバンジェリストとして、セールスモデルの研究、開発、講演を行う。23年間におよぶ営業支援で蓄えた「売れるノウハウ」をもとに、法人営業のバイブルとなる顧客開拓メソッドを作成。2021年8月には本書の一般販売向けとなる書籍「Sales is 科学的に成果をコントロールする営業術」を扶桑社より出版。現在は執行役員 マーケティング本部長として、セレブリックスのコーポレートブランディング、事業企画、マーケティング、営業の統括責任者を兼任。