OMOとはOnline Merges with Offlineの略で、オンラインとオフラインの融合を意味する用語です。オンライン(インターネット)とオフライン(実店舗)の区別をせず、チャネルの違いを意識する必要のない最適なサービス提供を目的としています。
OMOは小売業界を中心に注目を集めている、新しいマーケティング概念です。デジタル化が発展している現代において、OMOの導入で顧客体験のさらなる向上が期待できます。
本記事では、OMOの意味や活用のポイント、また導入時の参考になる施策内容について解説します。
目次
OMOの意味|オンラインとオフラインが融合した世界
OMOとはOnline Merges with Offlineの略で、オンラインとオフラインの融合を意味する用語です。オンライン(インターネット)とオフライン(実店舗)の区別をせず、チャネルの違いを意識する必要のない最適なサービス提供を目的としています。
OMOは、2010年代後半に生まれた新しいマーケティング概念です。デジタル化が発展し、IT技術の活用が重要な昨今において、顧客体験のさらなる向上を実現できる方法として注目を集めています。
OMOの例として挙げられるサービス・仕組みは以下のとおりです。
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関連記事:CVRの平均はリアル店舗20%、ECは1%|購買率の差の要因と改善方法
OMOが注目されるようになった背景
OMOが注目されるようになった理由は主に以下の2点です。
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ライフスタイルの変容
OMOが注目を集め始めた理由として、スマートフォンの普及やインターネットなどIT技術の発展が挙げられます。人々は日常的にインターネットを利用するようになり、ライフスタイルが大きく変化。オンラインが日常に溶け込んだ状況の中で、オンラインとオフラインの融合が必要と考えられるようになりました。
価値観の変化・顧客体験の重要性の高まり
価値観の変化も、OMOの注目に影響を与えています。かつての生活者は、商品の価格や機能などを重視していました。しかし昨今では商品・サービスを通した満足感や、購入後のアフターフォローなど、重視するポイントが広がっています。心理的価値観を重視する傾向の強まりにより、顧客体験の向上を実現させるOMOの注目も高まりを見せました。
関連記事:現在注目される「OMOストア」とは?成功のポイントや実例を紹介
OMOと似た用語との違い(O2O、オムニチャネル)
OMOと似た用語として、以下の2点が挙げられます。
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これらもオンラインの活用やチャネルの増加などを主軸としますが、OMOとは異なる意味を持つ用語です。具体的な内容やOMOとの違いについて解説します。
O2O:オンラインを使って来店のキッカケを作る
O2OはOnline to Offlineの略で、オンライン(インターネット)からオフライン(実店舗)への来店を促す手法です。
例としてSNSやアプリなどによる実店舗用のクーポン配布や、メルマガやWebサイトの会員が利用できる実店舗での特典などがあります。オンラインを活用する点は共通していますが、OMOとは異なる性質・目的を持つ用語です。
OMOはオンラインとオフラインの融合が前提であり、両者を区別しません。一方でO2Oは、オンラインを利用してオフラインへの誘導を図る目的であり、オンラインとオフラインは別個に扱われています。
O2Oはサービス提供の主軸があくまでオフラインに存在する点が、OMOとの大きな違いです。
オムニチャネル:多様なチャネルに対応しサービス提供をする
オムニチャネルとはオンライン・オフライン問わず多様なチャネルに対応し、顧客との接点を増やした上でサービス提供を行う手法です。
実店舗での直接的な接客だけでなく、電話・ハガキ・インターネットなどあらゆるチャネルへの対応が求められます。
オムニチャネルは、企業と顧客のタッチポイントや販売経路をすべて統合し、総合的に顧客へアプローチする手法です。オムニチャネル化を進めれば顧客にとっての利便性が向上し、商品の販売機会も増える可能性が高まります。
OMOとの違いとして、重視するポイントの違いが挙げられます。OMOはオンラインとオフラインの融合により、顧客体験(カスタマージャーニー)のさらなる向上を目的にしており、購入やサービスの利用時だけでなく、アフターフォローなどを含む全体的なフローを重視しています。
一方でオムニチャネルは、購買数・販売額の向上が主な目的です。チャネルの統合によって顧客の購買意欲を高め、全体の売上向上を実現します。
OMOで必要な施策
新たなマーケティング手法・概念を導入する際は、その実現に向けた施策の導入も必要です。
OMOの実施において必要な施策として、以下の3点が挙げられます。
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関連記事:OMO施策立案のための顧客データ分析~EC・リアル店舗の相互利用に向けて~
ICT(情報通信技術)の活用
オンラインとオフラインの融合であるOMOを実現させるには、ICT (Information and Communication Technology)の活用が重要です。ICTとは情報通信技術を意味する用語で、インターネットで見られるさまざまな技術を指します。
OMOのためには商品や顧客など、あらゆるデータの一元管理が必要です。
現場を問わずサービスの質を保つためには、どのような状態でもデータにアクセスできる仕組みが求められます。ICT技術を活用すれば、データの一元管理および容易なアクセスが可能になります。
OMOの実現に効果的なICTの例をいくつか紹介します。
CRM(Customer Relationship Management)
CRM(顧客管理)は、OMOの実現に有効な手法です。CRMとは顧客に関するさまざまな情報を管理し、施策に活かすことで、その過程においてデータ整備が必須となります。
データを整備することで、
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が容易になるため、効率的かつ高品質なサービス実現が期待できます。
関連記事:CRMはLTV構築の要!その機能とメリット、活用方法などを解説
MA(Marketing Automation)
マーケティング活動におけるさまざまなステップを自動化させる、MA(マーケティングオートメーション)も便利なツールです。
MAではメールマガジンの自動配信などのサービス提供だけでなく、顧客情報の収集および分析なども自動で行われます。マーケティング活動の自動化が進むほど、人の手が必要かつ売上につながる重要な要素に集中できるようになります。
紹介したもの以外にも、顧客体験を向上させるようなサービスの提供を実現するため、新たなシステムや技術の開発も必要不可欠です。新技術の開発や導入により、OMOのさらなる発展が可能となります。
このようにOMO実現のためには、ICTの導入・活用に対する積極的な姿勢が求められます。
関連記事:CRMツールとは?主な機能や比較のポイントをわかりやすく解説
多様な販売チャネルの展開
多様な販売チャネルの展開も、OMOの実現に欠かせない要素です。顧客体験の最大化を叶えるには、企業と生活者の接点となり得るさまざまなチャネルを展開する必要があります。販売チャネルの選択肢を増やす、もしくは接点を作りやすくする工夫が求められます。
昨今の生活者は商品の購入やサービスの利用にあたり、以下のようにさまざまなステップを踏むケースが多くなっています。
【購入前】
【購入時】
【購入後】
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このような状況であるため、企業には多様な販売チャネルの展開や、あらゆる接点でのサービス強化などが求められます。またさまざまな角度でのデータ収集および分析も重要になってきます。
関連記事:ワークスモバイルジャパン×博報堂 「タッチポイントのデジタル化が新たな価値を生む」(前編)
適切な社内教育・担当者登用
新たな手法・概念を導入する際は、概要や重要性などの正しい理解が必要不可欠です。また、最新技術の活用も求められるため、IT人材の関与も求められます。したがって、適切な社内教育および担当者の登用が重要です。
OMOの導入を進めると決断しても、関係者が積極的な姿勢でなければ、スムーズな進行が叶いません。認識の相違や理解不足も、施策導入を妨げる原因になるため、関係者全員が正しい情報を得られるよう、OMOに関する社内教育が必要です。
OMOをスムーズに実現させるには、知識があり専門性を持つ担当者を登用するのが理想的です。ただし、新たに導入する手法の場合、既存メンバーに専門性を持つ人がいない可能性も考えられます。知識・専門性に高すぎる基準を設定してしまうと、担当者候補が非常に少なくなってしまう恐れがあるため注意が必要です。
OMOが特に浸透しているのは?
OMOは世界各地で発展を見せていますが、中でも特に浸透している国は中国です。中国はIT技術が非常に発達しており、多くの場面でOMOの仕組みが見られます。
例として、多くの都市部ではスマートフォンを利用した決済は一般的であり、日常的な買い物の際にはスマートフォンで支払いをする人がほとんどです。また、インターネットで事前に決済をしてサービスの予約をするシステムにおいても、クレジットカード情報の入力や複数回のページ遷移などの手間がありません。ネット決済全般が非常にスムーズであり、手軽にサービスを利用できます。
OMOの浸透はスマートフォン利用者の急激な増加と、実店舗におけるシステムなどのインターネット連携の発展により実現しています。特に都心部では、現金を持たずに外出する人も珍しくありません。
まとめ
BIZ GARAGE 編集部
BIZ GARAGEコラムでは、ビジネスをとりまく環境の大きな変化により、最適な手立てを見つけることが求められる現代において、生活者の心を動かし、ビジネスを動かすために、博報堂グループのソリューションや取り組みのご紹介、新しいビジネスの潮流などをわかりやすく解説しています。
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