本記事は、法人向けに商品やサービスを提供している企業に対して、デジタルマーケティングの技術や手法を活用して、潜在リードから効率的に売上をつくる方法や、業務を効率化させる方法など、最新の考え方やノウハウを体系的にまとめています。
経営者の方は、全社視点で、どのようにデジタルマーケティングをマネジメントに組み込んでいけばいいのか、マーケティング担当者の方は、どのようにマーケティング施策を立案し、現場に落とし込んでいけばいいのか、営業担当者の方は、自分の業務がどのように変化していくのか、という視点で読んでもらえればと思います。
本記事では、「デジタル時代の基礎知識『BtoBマーケティング』」の第3章を3部構成でお伝えいたします。
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BtoB マーケティングを統合的に推進するためには?(1/3)
目次
MAを導入する
MAの導入にあたり、初期フェーズでやるべきことと、運用フェーズでやるべきことを整理します(図12)。
(図12:MAの初期フェースですべきこと)
MA 導入前にすべきこと
初期フェーズでやるべきことは、まずは、MA 関連の情報収集(RFI: Request for Information)です。大手ツールベンダーが定期的に開催しているセミナーに参加したり、ネット上でも様々な情報が発信されているので、必要な情報を収集したりしていきます。
また、ツールの選定に入る前に、MAで実現したいことを提案依頼書(RFP:Request for Proposal)としてまとめておきます。例えば、すでに導入している他システム(名刺管理システムやCRMなど)との連携方法や、求めている機能などをまとめていきます。
情報の整理ができてから、ツールベンダーを招き、MAの選定をしていきます。7章で詳しく整理しますが、通常、提案からクロージングまではツールベンダーが対応します。
しかし、実際の設計や実装はシステム開発会社が対応することになるので、システム開発会社がどこまで対応してくれるのかなども把握する必要があります。ツールベンダーとシステム開発会社が決まった後は、設計・実装のフェーズに入っていきます。
マーケティング部門も対応することになりますが、テクノロジー領域になるので、情報システム部門に対応し てもらうほうがスムーズかと思います。
関連記事:“To Be”を見据えたマーケティングシステムがもたらすデジタル変革とは?
MAの運用はコミュニケーション重視
運用フェーズに入ると、実際のコミュニケーションの設計・運用が重要になってきます(図13)。
まず、シナリオ設計を行う必要があります。例えば、問い合わせや 資料ダウンロードがあった見込み顧客(新規リード)に対して、自動返信メールを行うなど、よくあるシナリオを準備しておきます。
また、リード登録された見込み顧客が、サイト内でどのようなアクションを起こしているのかすべてトラッキングできるようになるので、すべての顧客のアクションに対してスコアを設定しておきます。
設定したスコアがしきい値を超えた見込み顧客を抜き出し、個別にイン サイドセールスをかけたり、個別にメール配信を行ったりして、関係値を深める取り組みを推進していきます。顧客分析に関しては、MA に登録された新規リードが一定数を超えてきてから、顧客の傾向値を把握するために分析をかけていきます。
すでに 取引のある既存顧客と新規の見込み顧客を比較してみるのも有効です。MAの機能に関しては、かなり多機能になってきているので、運用フェーズのスタート段階では、すべてを使いこなすのは難しいかもしれません。
まずは、必要最低限の機能に絞って、コミュニケーション運用のPDCAを回せる体制をつくっていくことが重要です。
また、リードジェネレーションとリードナーチャリング双方をマーケティング部門で担うのが理想的ではありますが、初期段階では、すべてをやり切るのは難しいです。営業部門が推進している取り組みと連携をとりながら、徐々に部門間での役割を明確化していきましょう。
(図13:運用フェースですべきこと)
潜在顧客は、MAを活用してリードナーチャリングを行う
MAを活用してリードナーチャリングを行う場合、主な打ち手は、シナリオ設計にもとづくメール配信と、電話によるインサイドセールスです。ここでは、シナリオ設計にもとづくメール配信にフォーカスして見ていきたいと思います。
メール実例付き「デジマで獲得したリードを上手にナーチャリングする方法」
シナリオ設計例
シナリオ設計とは、見込み顧客のステイタスに応じて、想定される対応方法を事前に設定することです(図14)。
(図14:シナリオにもとづくリードナーチャリング)
よくあるシナリオ例は、問い合わせやホワイトペーパーなどの資料ダウンロードがあったときの対応メール、無料トライアルの申込があったユーザーに対するステップ(引き上げ)メール、セミナー申込メールと参加後のお礼メールなどです。
「MA シナリオ例」などのワードで検索すると、様々なシナリオ例がでてきます。また、最近ではツールベンダーが、シナリオ例をホワイトペーパーにして配布していたりもするので、いちからつくりこむのではなく、ある程度、汎用的なシナリオ例を入手してアレンジしていくと導入しやすいです。
メール配信後、実際にどれぐらいの企業がメールを開封してくれたのかや、テキスト内のURLをクリックしてくれたのかを、MA側で把握できるので、企業の反応率も見ながら、スコアリングデータがしきい値を超えている企業に対しては、インサイドセールスの担当者から、電話でフォローアップし、必要であれば、営業が顧客訪問するなど、連携していく必要があります(図15)。
(図15:メール配信と開封率)
ユーザーのアクションに点数をつける
日々の営業活動で獲得した名刺や、オンラインから問い合わせのあった新規リードは、すべてMAのデータベースに登録されていきます。
登録された段階では、まだ、興味・関心が低かった新規リードに、メールを配信したり、セミナーに参加してもらったりすることでホットリード化させ、営業部門にリードを引き渡せる状態まで引き上げていきます。
ホットリード化していく動きを可視化するために、MA側で事前に行う作業が、ユーザーのアクションに点数をつけることです(スコアリング )。例えば、フォームに登録したら50ポイント、メールを開封したら10 ポイントなど、それぞれのアクションに点数をつけていきます(図16)。
(図16:スコアリングルール例)
点数をつけることのメリット
点数をつけることの最大のメリットは、見込み顧客のステイタスを数字で確認できることです。点数が低い場合は、自社のサービスに興味がないか、まだ導入の検討を始めていないといえるかもしれません。
一方で、点数が急激に伸び始めている場合は、該当するサービスに興味があるか、何らかの検討をしている可能性が高いです。インサイドセールスとの連携でいうと、点数がある一定基準(しきい値)を超えた場合は、電話でフォローを入れるようルールを決めておきます。
しきい値を決めておけば、無駄な電話でのフォローもなくなり、見込み顧客側も支援側もお互いストレスを感じることはなくなります(図17)。
(図17:スコアリングデータのしきい値設定)
ユーザーの行動履歴をチェックする
MAにリードとして登録されている見込み顧客が、メールを読んだり、サイト内のコンテンツを見たり、ホワイトペーパーをダウンロードしたりすると、すべての行動はMA 内に行動履歴(ログ)としてスコアリングされ、記録されていきます。
通常のアナログ的な営業では、営業担当者が異動や退職をした場合、情報をうまく引き継いでいないと、過去のやりとりが全くわからなくなってしまい、改めて見込み顧客にヒアリングを行う必要がでてきます。
一方で、MA に行動履歴が記載されていると、アクティビティ(行動)の変遷を見れば、過去のやりとりから、見込み顧客がどのようなことに興味があったのか、簡単に把握することができます。
顧客の行動を分析して優良顧客を見つける
図18では、リードとして登録された見込み顧客が、2020年2月から3月の間にどのようなアクティビティをとったかを行動履歴として把握することができます。
このユーザーは、2月にブログを閲覧して資料ダウンロードを行った後、3月にセミナー案内のメルマガを閲覧して、実際にセミナーに参加していることがわかります。
このように、見込み顧客であったとしても、MA上にリードとして登録されていれば、セミナー参加のオフラインの動きも含め、すべての行動を把握することができます。この中でスコアリングがしきい値を超えた見込み顧客を絞り込み、インサイドセールスなどの動きにつなげていきます。
(図18:見込み顧客の行動履歴をチェックする)
関連記事:CVRの平均はリアル店舗20%、ECは1%|購買率の差の要因と改善方法
関心度が高まっている顧客にインサイドセールスをかける
リードクオリフィケーション(リードの絞り込み)では、設定したしきい値を超える数値をだしている見込み顧客に対しては、インサイドセールスをかけていきます。
インサイドセールスとテレアポの違い
インサイドセールスとテレアポの違いをよく聞かれます。最大の違いは、インサイドセールスが、MAに登録された新規リードに電話をするのに対して、テレアポは、何の接点もない企業に対して、代表番号に電話します(図19)。
MAに登録された新規リードの場合、担当者に直接電話をしてニーズを聞き出したとしても、それほど嫌がられません。それは、すでに接点がある顧客を対象としていること、また、スコアリング状況を見て、しきい値を超えた企業のみにアプローチしているからです。
一方で、テレアポの場合、代表番号からコンタクトをとっているため、アプローチすべき担当者までたどり着けない、仮にたどり着けたとしても、会話が成立しないこともしばしばあります。
電話をするという行為自体は同じでも、インサイドセールスとテレアポでは、その後の成約率も含めると、全くもって「似て非なるもの」です。
アポイントメント率は、企業の知名度や商材の売りやすさによる違 いはありますが、一般的に100社アプローチして、インサイドセールスで10件アポイントメントがとれるのに対して、テレアポの場合は1~2件程度です。成約率は、さらに2~3倍程度の開きがあります。
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(図19:インサイドセールスとテレアポの違い)
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