これからの買物の兆しと3つの買物欲のポイント
スピーカー:河野 美咲(買物研究所 研究員)
このパートでは、提言・サービスの紹介をさせていただきます。パネルディスカッションの内容を受けて、買物欲のツボ、BOOST系とKEEP系の他に、もう1つの分類が見えてきました。それは、「LOVE」と「REASON」です。
「LOVE」は、“買いたい”“これがいい”と意志を持って、自分の評価基準で選ぶことを指しますが、「偏愛性」や「ストーリー性」のツボがこちらに当てはまります。
「REASON」は、これでいい、何が人気か、みんなと合っているかどうかなど、買っても良いと思う理由を作るツボです。こちらは「人気感」や「協調性」などが当てはまります。
それを踏まえて、これから重要になりそうなツボを考えると、KEEPからLOVE&BOOSTへ移っていくことが想定されます。つまり、生活者が買物の主導権を取り戻そうとし始めていることが言えるのではないでしょうか。
では、主導権を取り戻すという部分について詳しくご説明します。改めてまとめると、現在の生活者が求める買い物体験は、KEEPの部分、つまり買物欲をなくさないように維持するツボでした。
例えば、これを買えば間違いない、好きだけどおまかせなど、技術で手間や損が減ることや確信が持てることが重視されました。
それに対し、2030年に向けて重要になるのは、“これがいい”と意志を持って選ぶ生活者の思いです。このことから、これからの買物テーマは、生活者が買いたいという主体的な意思主導権を取り戻すことだと考えられます。
そして、生活者が主導権を取り戻した時代に、“これがいい”という意思をかき立てるポイントは3つです。これから紹介する3つのポイントは、今後重要になるLOVE&BOOSTの中のツボから発想したポイントです。
1つ目が、「ソウルに惹かれるソウル」です。他には提供できない企業らしさや売り場作りに込めた思いです。
安さや品質などの表面的なことだけではなく、企業らしさや思いを存分に感じる買い物体験を提供することが大事だと考えます。
2つ目は、「買い物プロセスを楽しむ」です。わざわざ手間をかけたり、ランダム性といった過程が楽しめ、効率重視の買い物では味わえない体験があることです。
そして最後は、「未来への投資・蓄積」です。これは、目先の損得だけではなく、未来の姿を想像する。つまり、どれぐらい長く使えるか、それを買うと自分がどれぐらい頑張れるかなどを考えて、生活者が未来を見据えた賢い買い物ができるきっかけを提供することです。
これらをそれぞれ、具体事例とともにご説明します。
「ソウルに惹かれる」に関しては、アメリカの食料品店「Pop Up Grocer(ポップアップグローサー)」の事例をご紹介します。
創造性、環境健康への責任感、美しいデザインを担保した商品のみを提供するというように、こだわりを持って選定しており、Pop Up Grocer(ポップアップグローサー)らしさを提供しています。買い手は、売り場やブランドらしさや思いと出会うことができ、存分に買物体験を楽しめます。
「プロセスを楽しむ」、こちらもアメリカで注目されているスーパー「Wegmans(ウェグマンズ)」の鮮魚売り場です。ここは日本の魚屋のコンセプトをそのまま表現していて、買った魚を好きなようにさばいてくれるライブ感が売りで、効率重視の買物では味わえない楽しさがあります。
3つ目の「未来への投資・蓄積」、こちらはSNSのXよりピックアップした投稿を紹介します。例えば、明日頑張るために少し贅沢なおやつを買ったり、自分を奮い立たせて気合を入れるためにコスメを買ったりするなどの投稿が該当します。
そして、パネルディスカッションにおいても、未来を見据えて賢い買物をするというお話がありましたが、目標達成後のご褒美としての消費ではなく、生活者が未来を見据えた賢い買物ができるきっかけを提供することが重要だと考えます。
以上が、本日のまとめになります。買物において生活者は、“これでいい”から“これがいい”という意思を持って選ぶようになり、買物の主導権を取り戻す兆しが見えてきました。
それらを踏まえて、生活者の“これがいい”という意志をかき立てるポイントとして、「ソウルに惹かれる」「プロセスを楽しむ」「未来への投資・蓄積」という3つをご紹介しました。
博報堂買物研究所の買物欲に関してのソリューション
最後に、買物欲に関してのソリューションを紹介させていただきます。今回ご紹介した買物欲刺激のツボは、実はカテゴリーやチャネルによって濃淡があり、特徴が違っています。
例えば、日用品では「社会性」が重視されていたり、家電では「根拠や理由」のウエイトが高くなっています。また、スーパーマーケットとECを比べると、スーパーでは「鮮度・体感」が重要で、ECでは「損を回避したい」という気持ちが強くなっています。
このような買物欲の違いを考慮しながら、商品や売り場、接客で、刺激していくべきツボを明らかにするコンサルティングパッケージの提供を開始させていただきます。
まずはじめに、カテゴリーや商材において大事な買物欲のツボを特定。そしてステップ2として、ワークショップで商材や売り場を採点し、ギャップや機会を把握します。そして最後のステップでは、結果を踏まえた買物シナリオの設計、特定顧客に刺さる“買いたい”を作る販促テーマの開発、生活者特性を踏まえた見られるためのコンテンツ開発など、様々なソリューションを提供いたします。ぜひ、お問い合わせください。
ソリューションの詳細はこちら⇒生活者の買いたい気持ちを誘発し、買物体験を差別化する「買物欲ソリューション」
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