2024年3月7日、企業のブランド価値にも影響する「障がい者雇用」に関するウェビナーを実施しました。2023年改正、2024年4月施行の障害者雇用促進法では、企業の雇用義務となる障がい者人数が引き上げられ、雇用した障がい者に合理的配慮を行うことも義務化されます。対応を迫られている企業も多く注目されるテーマで、多くの方にご視聴いただきましたので、その模様をお伝えします。
ウェビナーでは、企業での精神障がい者の雇用拡大と雇用後のキャリアアップ支援サービスを提供する、博報堂と三井不動産株式会社の合弁会社SUPERYARD株式会社から、代表の大益と副社長の松尾が登壇。
ダイバーシティやサステナビリティが重要視されるなか、障がい者雇用義務の法改正に伴う課題について整理し、課題解決に向けて企業が取り組むべきことについて紹介しました。
後編の本記事では、障がい者雇用の課題を整理し、SUPERYARDがどのように課題解決に貢献できるかなどについて、ウェビナー内容からご紹介します。
目次
ここまで紹介してきた短期的な課題と中期的な課題を、それぞれ整理したいと思います。
ヨコ軸に「短期課題:人数の面からの課題」、タテ軸に「中期課題:業務内容からの課題」としてプロットすると、このような課題マップができます。
これを見ると、自分たちの企業は今何を課題として抱えていて、どんな対応が必要なのかわかります。
まず、そもそも、障がい者を十分に雇えていない(従業員の2.5%以下)企業は、採用を強化することが求められます。(採用強化グループ)
次に、十分に雇えているが、業務の内容に課題がある企業は、リスク検証が必要です。(リスク検証グループ)。
今後の動向によっては、かなりリスクが顕在化していくと思われるので、 “障がい者雇用これでいいのか!”といった新聞等の論調にも注意を向けながら、レピュテーションリスクへの対応や、法改正に関する理解を深め、方針策定の議論を進めることが必要です。
障がい者を十分に雇えていて、かつ彼らがキャリアを望める業務に従事している企業(リーディングカンパニーグループ)は、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(帰属意識)を、今後どのぐらい深い企業の体質にしていくのかという議論を深めてください。
課題解決のソリューション~SUPERYARDの貢献領域
最後に、各企業が抱える障がい者雇用の課題を解決するためのソリューションについてお話させていただきます。
これまでの話から要約すると、精神障がい者の雇用拡大を検討するためには、その障がい者がキャリアが望める仕事に従事できるように、業務をシフトしていくことが必要になります。
この課題を解決するために、それまで障がい者が配属されていなかった部門や、担当してこなかった本業に近い業務に挑戦するという方針で整備することが求められます。
- できることを増やしたいという成長を望む障がい者の雇用
- 新しい配属の現場では、未整備な職場環境のサポート
という2つの対策が急務となります。
そこで、その2つの対策に貢献できるSUPERYARDのサービスの特徴についてお話したいと思います。
採用への貢献
SUPERYARDでは、障がい者人材をどのぐらい就労に安定させることができるのかという見込みと業務力について、独自の評価をしています。
実は障がい者の皆さんは、福祉施設でかなりの人数が訓練を受けています。そういった方々がどのぐらい長く働くことが期待できるのか、どのぐらいビジネス力が期待できるのか、オフィスワークができるのかという見立てを、私たち三井不動産や博報堂のビジネス出身の人間が評価し、実際に企業に候補者を紹介することが可能です。
適性と条件の合う障がい者の方を複数ご紹介して、短期の実習の形で働いてもらって、マッチングできると判断されたら、正式に採用していただきます。
雇用維持への貢献
SUPERYARDでは、障がい者社員がより働きやすいように、シェアオフィスを準備しています。障がい者の方にはシェアオフィスに出社してもらって、御社の仕事を担ってもらうことが可能です。
私たちは、日常の相談を受けたり、安心して働ける環境になっているかを細かくチェックしたりしながら、障がい者の皆さんが快適に業務を進めることができるようサポートします。
また、御社の人事部のご担当者や産業医と情報共有することも可能なので、ワンチームになって障がい者社員が十分にパフォーマンスを発揮できるよう支援できます。
採用から雇用の定着まで、丁寧に実習を重ねながらミスマッチを排除するので、現時点で雇用後の定着はほぼ100%です。
ここまで、SUPERYARDの特徴についてご紹介してきましたが最後に、SUPERYARD代表取締役社長の大益よりお話させていただきます。
さいごに
スピーカー:大益 佑介(SUPERYARD株式会社 代表取締役社長 )
日頃、企業の皆さんとお話する中で、障がい者の雇用に関して2つの不安を抱えていらっしゃることがわかります。
1つ目は、精神障がいに関する理解不足という不安です。とくに雇用した後のケアがわからないという声が多く聞かれます。こうした不安に関しては、慣れの問題もあるので、私たちのようなサポート役が並走することで解決できると考えます。
2つ目は、業務面での不安です。例えば、障がい者に対する依頼マニュアルは精緻に作らなければいけないのではないか、業務の質や量に相当な配慮をしなければいけないのではないかという不安に加え、そもそも部門の業務が整理できていない、業務の棚卸ができていないという課題を抱えている企業も多いように見受けられます。
まさにここが、これからの障がい者雇用の課題で、今後企業にとって価値の高い障がい者雇用を実現するためには、福祉の観点だけではなく、ビジネスの目線で障がい者雇用をコーディネートする役割が必要だと考えています。
SUPERYARDを通じて障がい者を雇用し、すでに半年以上、障がい者と一緒に働いている企業の方からは、「障がい者と一緒に働けてよかった」「障がい者が部門に来てくれてよかった」という声をたくさん頂戴しています。これはダイバーシティ・多様性という意味合い以上に、実務として、障がい者の皆さんの能力に対して正当な評価をいただいていると感じています。
あらためて、SUPERYARDでは、より多くの皆さんに障がい者と一緒に働いていただき、障がい者と働くことが自分たちの組織のためになるという経験を積んでいただきたいと思っています。そのためには、障がい者雇用が、よりカジュアルになるべきですし、SUPERYARDとしても、障がい者自身と雇用企業、双方の不安を解消し、溝を埋める役割を果たしていきながら、企業にとっても、障がい者にとっても、より意義のある障がい者雇用を浸透させていきたいと思います。
博報堂と三井不動産の合弁会社「SUPERYARD」では、企業での精神障がい者の雇用拡大と雇用後のキャリアアップを支援するサービスを提供しています。⇒サービス紹介ページはこちら
プロフィール
松尾 俊志
SUPERYARD株式会社
取締役副社長
(株式会社博報堂より出向)
2010年、博報堂入社。
ビジネスプロデューサーとして複数企業の ブランディング・広報活動を支援。
2023年、SUPERYARDを立ち上げ。
大益 佑介
SUPERYARD株式会社
代表取締役社長
(三井不動産株式会社より出向)
2007年、三井不動産入社。
オフィスビル事業や法人営業、総務を経験。
2020年に社内ベンチャー制度へ参加し、現在に至る。
BIZ GARAGE 編集部
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