最終更新日 2024.8.13

障がい者雇用の今の課題とこれからの課題~放っておけないブランド棄損のリスク~(前編)|ウェビナーレポート

2024年3月7日、企業のブランド価値にも影響する「障がい者雇用」に関するウェビナーを実施しました。2023年改正、2024年4月施行の障害者雇用促進法では、企業の雇用義務となる障がい者人数が引き上げられ、雇用した障がい者に合理的配慮を行うことも義務化されます。対応を迫られている企業も多く注目されるテーマで、多くの方にご視聴いただきましたので、その模様をお伝えします。

ウェビナーでは、企業での精神障がい者の雇用拡大と雇用後のキャリアアップ支援サービスを提供する、博報堂と三井不動産株式会社の合弁会社SUPERYARD株式会社から、代表の大益と副社長の松尾が登壇。

ダイバーシティやサステナビリティが重要視されるなか、障がい者雇用義務の法改正に伴う課題について整理し、課題解決に向けて企業が取り組むべきことについて紹介しました。

障がい者雇用にお悩みの方へ
博報堂と三井不動産の合弁会社「SUPERYARD」では、企業での精神障がい者の雇用拡大と雇用後のキャリアアップを支援するサービスを提供しています。企業のダイバーシティや人的資本経営に課題を抱えている方は、ぜひサービス詳細をご覧ください。

目次

はじめに

メインスピーカー:松尾 俊志(SUPERYARD株式会社 取締役副社長) 

本日は、「障がい者雇用の今の課題と、これからの課題~放っておけないブランド毀損のリスク」というテーマでお話したいと思います。

私たちSUPERYARD株式会社は、三井不動産と博報堂が共同で立ち上げた会社で、精神・発達障がい者に特化した雇用支援のサービスを提供しています。いわば雇用する企業と就労する障がい者、双方を支援するという立場で、企業に対して人材を紹介する機能と、障がい者に対して就職後の環境を整えるなどのサービスを行う機能、2つの機能を持っているのが特徴です。

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障がい者が安定して働けるオフィスやサポートスタッフなどの環境を提供するとともに、働きたい能力もやる気もある、でも安定してその力を発揮できていない障がい者の就業支援を中心に活動しています。

精神障がい者は、外見ではちょっと判断しにくいという特徴があります。発達障がい、ADHDASD、うつ病、強迫性障がい、不安障がいに至るまで症状も様々です。障がい者雇用の現場では、同じ症状だとしても1人ひとりへの合理的配慮が異なってくるのが特徴です。

本日は以下3つのお話をしたいと思います。 

  • 障がい者雇用の短期的な課題 
  • 中期的な課題 
  • その課題を解決に繋がるソリューションのご紹介 

障がい者雇用の短期的課題

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まず、現在の障がい者を取り巻く雇用環境についてですが、日本では法定雇用率が法律で定められていて、43.5人以上の企業は、従業員の2.3%の障がい者を雇わなければならないという決まりがあります。 ※2024年3月現在

しかも、この利率が数年に一度、段階的に上がっていて、2026年7月までに2.7%に引き上げられると言われています。雇用が足りていない企業はもちろん、雇用が足りている企業も採用を始めなければならない「精神障がい者、大雇用時代」が近づいていると言えます。

仮に1万人規模の企業だとすると、数十人という障がい者を新たに雇用する必要があり、数十人雇用するためには、数百人レベルで障がい者の採用面接を行わなくてはいけなくなるわけです。

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2018年には、国内には937万人の障がい者がいて、そのうち身体障がい者が436万人、精神・発達障がい者が392万人という数字が発表されていますが、直近の2020年では、精神・発達障がい者が1.6倍の619万人に急増していることが報告されています。採用担当者の体感としては、候補者が10人集まったとすると、そのうち89人は精神障がい者の応募になっているという意見もあります。

では、企業はこの法定雇用率を達成できているのでしょうか?

実は50%の企業が未達成です。なかなか雇用が進んでいないという実態があるのですが、実は達成できていないと複数の罰則が科せられます。足りない人数につき、月5万円の納付金、行政指導の名目で改善計画の提出、さらには社名の公表といったペナルティです。

精神障がい者の雇用が進んでいない背景には、企業の現場が雇用した後に不安を抱えているという実態が挙げられます。現に雇用された精神障がい者の50%が、1年で離職してしまっているというデータもあります。

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ここまで障がい者雇用の短期的な課題についてまとめると、 

  • 法定雇用率が2.7%へ増加するに伴い、各社が雇用を拡大しなければならないということ 
  • 精神障がい者の応募が増加しているため、採用だけでなく雇用維持にも工夫が求められている 

ということが課題で、今、対策を打たなければ、企業にとって複数のリスクが生じてくるということがご理解いただけたと思います。

障がい者雇用の中期的な課題

次に、ある程度の障がい者雇用が実現できてきたら、今後検討しなければいけない中期的な課題についてお話したいと思います。

中期的な主な課題は、障がい者はキャリアが望める仕事をしているかどうかということです。それに関しては以下の3つの動きがあります。

  • 障がい者雇用の質の法律化が見込まれている 
  • 合理的配慮の義務化が始まる 
  • 株主総会で争点化される可能性がある 

障がい者雇用の質が問われてきている

厚生労働省では、法定雇用率という人数の議論だけでなく、その障がい者が担っている仕事の質に関しても議論が始まっています。具体的には、雇用の質の向上に向けて、事業主の責任の明確化が言われ、キャリアの形成支援の視点を含めて、積極的に行うことが求められてきています。

つまり、障がい者の仕事を通じてキャリアの形成が望めるかということも、雇用主は視野に入れなければならなくなるわけです。現に2023年6月に厚生労働省は各事業所に向けて、能力の開発向上に関して措置を行うようリーフレットを配布しています。

雇用主の合理的配慮が求められる2024年4月からは、合理的配慮の提供が義務化されます。つまり、障がい者が業務に従事するために、雇用主(企業)は障壁を取り除かなければならないというわけです。

具体的にどういう特性の人がいて、どんな配慮をすればいいのかという実例を、SUPERYARDで対応したケースでご紹介します。

■不安障がいの特性があるAさんのケース

Aさんは、症状でいうと不安障がいがある人で、時間感覚が乏しい、感覚過敏、不安になりやすいといった特性がありました。

そこでSUPERYARDとして、パソコンが眩しすぎる、部屋が明るすぎるというような感覚過敏を解消するためにサングラスを着用してもらったり、ドアの閉まる音が気になってしまうようであれば、イヤーマフを使ってもらったりといった配慮を行いました。また、時間感覚が乏しいため目の前の仕事に集中しすぎて、他の仕事が手につけられなくなるということを防ぐためにアラームを使ってもらいました。

らに、誰かに嫌われているのではないか、自分の仕事は役に立っていないのではないかというネガティブな不安を解消するために、SUPERYARDのスタッフを交えて、今までやり取りをしているチャットやメールを一緒に見返しながら、事実確認をする面談も行っています。

■発達障がいの症状があるBさんのケース

Bさんは、発達障がいで、マルチタスクが苦手、新しいことを始めると不安になる、言葉の言い回しが苦手というような特性がありました。

これに対してSUPERYARDでは、完成のイメージをすり合わせたり、新しい業務が来た時は一緒に相談に乗ったり、質問の仕方の不安を解消するための方法について話しました。また、業務の付与に関しては、チャットや書面でもらう方が進めやすかったので、そのことを所属元の企業の担当者に伝えました。

この配慮によって、Bさんは現場で活躍することができ、今では複数の上司から仕事を依頼されるまでに成長しています。

この2人のケースのように、それぞれの障がいの特性を見極め、それに対する配慮を一つひとつやっていくことで、彼らのパフォーマンスがしっかり発揮されていくことが重要だと考えています。

株主総会の争点化

障がい者雇用そのものが、10年以内に株主総会で争点化されるという意見があります。株主総会は無事に決議されるということが目的ですが、その決議のために、様々な機関投資家から総会中に質問が上がってきます。実際、2023年はサステナビリティに関する質問が急増したと言われています。

こうした流れは今後も続いていくという意見もあり、性別などに関するダイバーシティの質問に次いで、障がい者雇用に関する質問が増えるだろうということを、コンサル企業が予測しています。
 

レポート後編はこちらから
⇒ウェビナーレポート|障がい者雇用の今の課題とこれからの課題~放っておけないブランド棄損のリスク~(後編)

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BIZ GARAGE 編集部

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