さまざまな企業が争うように新商品を投入する市場環境において、これまで自社で扱っていなかった新商品を販売することはもちろん、既存商品の機能や価格を改良することも広い意味での商品開発に含まれます。
本記事では、商品開発とは何か、なぜ今それが必要とされているのか、実際の手順などを解説していきます。
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目次
商品開発とは
「商品開発」とは、その名の通り、自社の商品やサービスを開発することを指します。商品のイメージやコンセプトを「商品化」する業務とも言い換えられます。
商品開発の意味には、形のあるモノを開発する場合もあれば、サービスなど形のないモノを開発することも内包しています。
サービス業であれ、製造業であれ、企業は自社の商品を開発し、販売することで利益を確保し、存在することができます。すなわち、商品開発とは、企業が存在する上で不可欠なプロセスだといえるでしょう。
商品開発の前のプロセスには「商品企画」があります。商品企画と商品開発の違いを見ていきましょう。
商品開発と商品企画の違い
商品開発は「商品イメージやコンセプトを商品化する業務」ですが、その前の段階で必要になるのが「商品企画」というプロセスです。商品企画は、イメージやコンセプトを作成することを指します。ゼロから商品を生み出す場合、商品開発の前のプロセスを担うのが商品企画です。
ただし、商品企画は商品開発の前のプロセスではあるものの、実際は商品企画と商品開発が同じ部門で行われることも、中小企業などでは多く見られます。
また、商品企画には「商品ができるかどうか」が問われないケースもあります。それに対して、商品開発は研究開発や設計、製造など、技術やアイデアを商品やサービスとして具現化する役割を指します。
商品開発には、今まで自社にはなかった商品を開発する「新商品開発」と、既存商品に新たな価値を付加する「既存商品の改良」の2種類があります。
それぞれの特徴について見ていきましょう。
新商品開発
「新商品開発」とは、「自社で新たな商品を生み出すこと」を指します。自社が新規事業を立ち上げる中で新たな商品を開発する場合もあれば、既存事業の中で新たなカテゴリーとなる商品を開発する場合もあります。
既存商品の改良
「既存商品の改良」とは、「すでにある商品に新たなアイデアを取り入れて、新たな価値を付加する」ことを指します。
既存商品の改良が必要な主な理由として、以下のポイントが挙げられます。
- 変化した生活者のニーズに対応する
- 成熟してきた市場から成長する新市場に打って出る
- 流通経路やプロモーション、価格設定の変更が必要になってきた
新商品をゼロから考案し、開発・販売に至るまでには長い時間がかかりますが、既存商品の改良ではそのプロセスを大幅に短縮できます。
また、BIZ GARAGEでは、「ユーザー・イノベーション・プログラム」というソリューションを公開しています。これは、自社ブランドのユーザーとともに、商品改良に取り組んでいくプログラムです。これまでとは異なる商品開発手法に取り組みたい方や自社チームだけでのアイデア出しに行き詰まりを感じている方は、ぜひご検討ください。
商品開発が重要視される背景
次に、今、商品開発に注力する必要が出てきている背景について解説します。
企業の存続のため
新商品・新サービス開発の必要に迫られるのは、収益と売上の停滞である場合が多いものです。収益と売上が停滞したとき、コスト削減に取り組めば収益性は一時的に向上するかもしれません。しかし、新商品・新サービス開発をしなければ売上は増加せず、経営は先細りするばかりです。
また、近年「プロダクト・ライフサイクル」という考え方がポピュラーになってきたことも、商品開発が重要視される理由です。ひとつの商品やサービスは、商品開発の段階を経て市場に投入されると売上規模が拡大してやがてピークを迎え、その後少しずつ売れなくなっていきます。このプロダクト・ライフサイクルが、生活者ニーズの多様化により、年々短縮しているのです。
つまり、企業にとっては、全く新しい商品・サービスを開発し、新規顧客を獲得していく必要が出てきた、ということです。また、既存商品の改良においても、新たな顧客を獲得できるほか、これまでとは違った価値を打ち出すことで、プロダクト・ライフサイクルを伸ばすことが可能になってきます。
技術の進化や改良のため
さらに、日進月歩で新技術が進歩していることも、商品開発に本腰を入れて取り組むべき理由です。食品であれば、包装技術の発展により消費期限を延長できる機能、日用品であれば家事の時間を短縮できるさまざまな技術など、技術発展によって生活者の暮らしを便利にするさまざまなソリューションが提供されています。
そうした中で顧客はさまざまな選択肢から商品・サービスを選ぶことが可能となり、新しい技術が搭載されていない商品を買わないという選択をする可能性が高まっています。
また、企業の存続には、新技術を自社で独占したり、特許という形でライセンス販売したりする機能を担う研究開発部門(R&D部門)の発展が不可欠です。企業内で新技術をつくり、それを商品化すると、競争力強化につながります。
商品開発の実践前に確認すべき2つ視点|目的の明確化
次に、商品開発を実際に行う上で必要な視点を考えていきましょう。
新商品開発であれ、既存商品の改良であれ、商品開発には目的があるはずです。その目的を言語化していきましょう。目的は、大きく自社視点での目的と顧客視点での目的があります。
自社視点での目的
- 会社の新たな柱となる事業を立ち上げたい
- 赤字が続いていた既存事業を黒字化させたい
- 下請け状態から脱却し、自社ブランドのビジネスを開始させたい
顧客視点での目的
- 社会課題を解決する
- 流通プロセスを変革したい
- 顧客にとっての価値を最大化する
- その商品があることで、生活や仕事が便利になる
商品開発を行う際には、この自社視点での目的と、顧客視点での目的の2つを意識しましょう。特に、顧客視点での目的を留意することが重要です。商品開発で失敗するケースのほとんどが「新たな商品を投入したが全く売れない」というもの。顧客がなぜその商品を必要としているのか、徹底的に考え抜きましょう。
商品開発のやり方|実践の手順を解説
次に、具体的に商品開発を行うステップについて紹介していきましょう。
- 市場分析
- ターゲティング
- コンセプト開発
- マーケティング戦略の策定
- テストマーケティング
- プロモーションの設定
1.市場分析
商品開発には、市場に対する理解が必要です。
- 市場規模
- 生活者のニーズ
- 競合状況
- 自社の強み/弱みの分析
市場を分析しながら、顧客の姿を正しく認識し、そこに自社の強みにレバレッジをかけるという方法が王道です。
前述したように、商品開発においては、顧客理解が鍵となります。例えば、使用実態把握調査や、ブランドイメージ調査、購買行動調査などのリサーチを実行し、顧客の特徴や不満、商品購入のポイント、自社の商品に対するイメージや認知率などを明らかにしましょう。
2.ターゲティング
顧客理解が深まった後は、商品を投下する市場を設定していきましょう。ターゲティングとは、「誰に、どのような価値を提供するか」を決定するプロセスです。ターゲットはできるだけ明確に、特定の顧客層に絞ることが肝要です。
そもそも、老若男女すべてのニーズを満たすことは難しいです。「(自社にとっては)素晴らしい商品を開発したが、誰もその商品を求めていなかった」というケースを避けるためにも、ターゲットは絞れるだけ絞りましょう。
ターゲティングで参考にすべき基準は以下になります。
- 地理的変数:居住地域、生活圏など
- 人口統計的変数:年齢、性別、職業、家族構成など
- 行動変数:購買状況、行動パターンなど
- 心理的変数:嗜好、趣味、価値観など
3.コンセプト開発
次に、商品のコンセプトを固めていきましょう。商品コンセプトとは、ひと言でいうと「顧客に届ける価値」です。顧客に届ける価値の中には、以下の3つのベネフィット(便益)があります。
・機能的便益
商品がもたらす効果や利便性=「この商品があって、生活の手間が減った!」「競合他社より安くて、長持ちする商品が買えた!」
・情緒的便益
商品がもたらす心理面へのポジティブな影響=「健康になった」「幸せになった」「友達が増えた」「自分の時間をつくることができた」
・自己表現便益
商品を利用することで得られる自己イメージ=「この商品を使っているときの自分が好き」
ターゲット層に対してはこの3つのベネフィットを複合したコンセプトを訴求していきましょう。
4.マーケティング戦略の策定
ターゲットを設定し、商品コンセプトが固まったら、次に具体的なマーケティング施策を決定していきましょう。
手法としては4P(Product:製品、Price:価格、Place:流通経路、Promotion:販売促進)分析が重要です。顧客が「何を、いくらで、どこで、どのように」買うのかをイメージしたマーケティング施策を打っていきましょう。
5.テストマーケティング
マーケティングの方向性が固まったら、次にテストマーケティングを行います。テストマーケティングとは、本格的に新商品を市場に流通させる前に、地域や販売ルートを限定して販売し、顧客の反応を確認することを指します。
テストマーケティングには、オンライン上での調査とオフライン上での調査があります。
オンライン上でのテストマーケティングには、「Webモニター」「SNSキャンペーン」「購入型クラウドファンディング」などがあり、低コストで幅広い層の顧客のデータを入手することが可能です。
一方、代表的なオフラインのテストマーケティングの手法としては、「会場テスト」と「ホームユーステスト」の2つがあります。オンライン上の調査とは異なり、時間や金銭的なコストはかかりますが、その分、生活者の習慣に密着した、生の声を聞くことができる点が強みです。
6.プロモーションの設定
最後に、SNSでの告知やクーポン配布など、プロモーションを実施していきましょう。商品に対する認知が購入可否を決定づけるケースも多いので、商品を知ってもらう努力は必要です。
プロモーションの施策には、以下の具体的な例があります。
- 広報・パブリシティ:プレスリリース、自社メディア・SNSでの告知など
- 広告・宣伝:Web広告、SNS広告、動画広告、TVCMなど
- 販売促進:クーポン配布、懸賞の告知、ポイント付与、サンプリングなど
- 口コミ:SNSでの拡散など
まとめ
新商品開発と既存商品の改良は、現在の企業活動において、無くてはならないものになっています。
博報堂が提供する「ユーザー・イノベーション・プログラム」は、生活者の知識やアイデアを取り入れて、革新的な商品を生み出したり、イノベーションを起こせるソリューションです。「革新的なアイデア」を持っているリードユーザーの探索や、生活者の声から新奇性や顧客便益の高い製品アイデア創出のための、専門的なノウハウがあります。
自社の商品開発に、ユーザー・イノベーション活用の導入を検討している企業の担当者は、ぜひ一度ご相談ください。
BIZ GARAGE 編集部
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