D2Cとは?
D2Cとは、メーカーなどが自社で企画・製造した商品を、小売店や中間流通業者を介すことなく消費者に直接販売する形態のことです。「Direct to Consumer」の略で、日本語では「消費者直接取引」との意味を持つ用語です。
D2Cで販売される商品は、Amazonや楽天市場などのオンラインショッピングモールを利用することなく、自社のECサイト経由で販売されることが一般的です。販売のベースはオンラインで、期間限定でポップアップショップの開催やブランドの認知が高まった段階で実店舗を持つこともあります。
新型コロナウイルス感染症の影響によって非対面・非接触での商品購入のニーズが増えました。対面営業が基本の百貨店が一時閉鎖し、経営破綻する小売企業も出ました。しかしD2Cモデルに転換できた企業は、うまく生き残れています。
このように、自社ECサイトでD2Cを行う大手企業や新興企業が増加しているのです。
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D2Cの市場規模
D2Cの市場規模は年々増加しており、2025年には市場規模が3兆円に達するとの予測が出ています。
D2Cの市場規模は、2015年が約1兆3,000億円でした。2019年には初の2兆円超えと、テレビ広告費を逆転しました。テレビを中心としたマスメディアからデジタルへと移りつつあるのです。デジタルD2Cの需要は今後も右肩上がりで推移していくことが予想されます。
D2Cが普及した理由
D2Cは2000年代後半にアメリカで登場し、世界的に普及したといわれています。D2Cが広まった背景として以下の2つが主な理由として挙げられます。
それぞれの理由を確認しましょう。
デジタルツールの普及
1つ目の理由はデジタルツールの普及です。現在は多くの人がインターネットやスマートフォンを利用しています。そのため、常に最新の情報を発信し、販路や顧客の獲得ができます。D2Cに欠かせないオンライン宣伝が容易にできる時代になったのです。
幼少期からスマートフォンやパソコンを使いこなすデジタルネイティブ世代は、情報リテラシーが高く、SNSなどで情報を収集し、ECサイトから商品を購入することに抵抗がありません。
また、Twitter、Instagram、YouTube、TikTokなどのSNSに普及によって、企業と消費者が直接コミュニケーションをとることができるようになりました。モールを介さなくても消費者とつながる環境が整ったのです。
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消費行動の変化
消費行動の変化もD2Cが普及した理由として挙げられます。大量生産・大量消費されるモノではなく、地球環境に配慮したサスティナブルな商品など、こだわりや独自性の高いモノを購入したいと考える人も増えています。
今までは、モノを所有することに価値を感じる「モノ消費」が一般的でした。しかし現在は、商品購入で得られる体験を価値とする「コト消費」に人々の意識が変わりつつあります。これも商品の独自性を全面に打ち出せるD2Cの追い風になっています。
また、ブランドや商品のビジョン、コンセプト、ストーリーに共感して購入する消費者が増えていることもD2Cが注目される要因です。
現代の人々はネットメディアの利用が当たり前です。そのため、消費者へいかに上手く訴求するか、いかに共感しファンになってもらうかが、D2C事業を拡大するポイントになってきます。
D2Cのメリット
D2C販売には以下のメリットがあります。
- 消費者との距離が近い
- 販売方法の自由度が高い
- 収益性が高い
- コストを削減できる
- 顧客データを収集できる
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それぞれのメリットをご紹介していきます。
消費者との距離が近い
SNSなどを活用して消費者と直接やりとりすることが多くなるため、近い距離感で接することが可能です。
直接コミュニケーションを取ると、機能やサービスのニーズをダイレクトに聞くことができます。市場の声を商品開発に反映させやすくなり、消費者にとって価値の高いプロダクトを提供し続けることができます。
販売方法の自由度が高い
D2Cは販売方法を自由に決められます。オンラインショッピングモールでの販売ではさまざまな制限が発生します。しかしD2Cで独自の販売方法やキャンペーンなどを展開すれば、より多くの生活者に興味をもってもらうことができるのです。
収益性が高い
D2Cは収益性が高いです。商品製造を外注したり、小売店を介して販売したりすると、その分の人件費などがかかるため、利益も少なくなります。一方でD2Cは、自社で商品の企画から製造、販売までを行うため、効率的に高い収益を確保できます。
コストを削減できる
オンラインショッピングモールに出店した場合、手数料がかかりますが、自社のECサイトを構築し販売する場合は、手数料がかかりません。また、実店舗では商品が陳列されるまでにさまざまな費用が膨らみますが、その分のコストも削減することが可能です。
顧客データを収集できる
自社ECサイトのD2Cでは、アクセスする顧客データを収集できます。どんな商品が売れているのか、アクセスユーザーの滞在時間、離脱したページの詳細など、さまざまなデータを収集できます。これは今後の販売戦略や商品開発における効果的な施策構築につながります。データドリブンで改善でき、顧客満足度向上や売上アップが可能です。
D2Cのデメリット
D2Cにはデメリットも存在します。
- 商品自体の魅力が問われる
- 集客コストがかかる
- ノウハウが必要
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商品自体の魅力が問われる
D2Cで売上を上げるには、商品自体の魅力や企業ブランド力が問われます。魅力が低い商品を販売しても、サイトや店舗に生活者を誘導できないため、売上が上がりません。
集客コストがかかる
集客のコストがかかります。商品の魅力が十分にあっても、生活者の目に止まらなければ売れません。そのため、広告宣伝やブランディングによる認知向上に積極的に投資し、集客力を高めることが大切です。
ショッピングモールを活用すれば生活者が集まりやすいため、自社ECサイトよりも売上が出る可能性があります。しかし、先述のとおり、手数料がかかる点や、販売方法の自由度が奪われるなどのデメリットもあります。自社の状況をよく考えて、最適な方法を選択してください。
ノウハウが必要
D2Cのビジネスモデルは、ただ良い商品を製造するだけでは売れません。軌道に乗せるためには、ブランド力や熱狂的なファンの育成が必要です。これらは一朝一夕で実現できるものではなく、コツコツと時間をかけて積み上げなければなりません。軌道に乗るまでの期間は長めに設定しておきましょう。D2C立ち上げ経験者を担当するなどして、規模を拡大していくことが求められます。
D2Cに似た言葉との違い|B2C・B2B
D2Cの関連語として、「B2C」や「B2B」があります。
- B2C:Business to Consumerの略。企業と消費者の間で行われる取引のこと
- B2B:Business to Businessの略。企業同士の取引のこと
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B2CはD2Cと混同されやすいですが、B2Cが取引の種類を指すのに対し、D2Cは取引の形態(どのように生活者に届けるか)を指す言葉です。つまりB2Cのなかでも生活者に直接届ける形態をD2Cと呼ぶわけです。
また、B2Cはプロモーション手段にマスメディアやリスティング広告を使うのに対し、D2CはSNSの利用が多いのも違いです。
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まとめ
D2Cはオンラインショッピングモールや中間流通業者を介さずに自社で企画・製造・販売までを一貫して行うビジネスモデルとして注目を集めています。
SNSやECサイトを活用して商品のビジョンやコンセプト、製造の背景を共有することでファンになってくれる顧客を獲得することや、顧客データに基づいた販売戦略を構築することが可能です。
スマートフォンの普及とともにパンデミックによる非対面・非接触で行われる販売方法のニーズが高まるなか、D2Cの需要は今後ますます増加していくことが予想されます。是非この機会にD2Cについて理解を深めておきましょう。
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