2025年には市場規模が3兆円にまで成長すると予測されているD2C(Direct to Consumer)。
多くの企業がD2Cを検討する一方で、D2Cをダイレクトビジネスの延長線上に捉え、その本質を見誤っているケースは少なくありません。D2Cを成功に導くためには、従来のダイレクトビジネスからの転換が必要であり、新しい発想に基づくプロセスやソリューションがカギを握ります。
今回は、D2Cに特化したプログラムを提供するD2C Design Studioを紹介するとともに、D2Cを成功させるためのヒントを解説します。
目次
D2Cはなぜ、いまの時代に求められるのか?
価値観多様化の時代に存在感を増すD2C
近年、ECの流通形態の1つとして、D2C(Direct to Consumer)が注目を集めています。ECプラットフォームなどを介さず、文字通り、生活者にダイレクトに商品を販売する形態です。
D2Cが注目されている背景には、時代の変化が大きく影響しています。企業と生活者が時間や場所を問わず双方向にコミュニケーションが取れるデジタルシフトが進み、SNSをはじめとするタッチポイントも複雑化するなど、市場は分散化の一途をたどっています。
それに伴い、新興ブランドが台頭し、大手企業とシェアの奪い合いが生じるなど、市場のニーズは目まぐるしく変化しているのです。こうした変化の波は、価値観多様化によるマスブランドのパワー喪失という現象を生み出しました。
価値観多様化によるマスブランドのパワー喪失
市場が分散化する中で、D2Cは自社が運営するECサイトを通じて、生活者と直接結びつくことができます。
顧客のデータを取得してマーケティングに活かせることに加え、ブランドロイヤリティを育成できるという大きなメリットがあります。ブランドに対する愛着を育てることで、長いスパンで生活者とブランドを結びつけるライフタイムバリュー型のビジネスを実現するのです。
D2Cをダイレクトビジネスの延長線上に捉えるのは誤り
新興ブランドの台頭に伴い、既存のブランド/商品ではシェアを維持できないという課題を抱える大手企業は少なくありません。その解決策の1つがD2Cであり、D2CビジネスのサポートをするのがD2C Design Studioの役割です。
ただし、D2Cを従来のダイレクトビジネスの延長線上に捉えている企業も多く、その認識ではD2Cを成功に導くことはできません。前提として、D2Cの本質は「ECビジネス」と「ブランドビジネス」という相反するものの両立であるという認識を持つことが重要になってきます。
例えば、「ECビジネス」に注力すると、商品露出や売上拡大は見込めますが、価格競争に巻き込まれ、ブランド/商品の価値を下げてしまうリスクがあります。一方、「ブランドビジネス」に特化し、ブランディングに時間をかけると、商品を手に取ってもらうハードルが上がり、成果が出るまでに時間を要します。
この2つをいかに両立させるかがD2Cのポイントであり、そのサポートがD2C Design Studioの提供価値でもあります。
ECビジネスとブランドビジネスをいかに両立させるかがポイント
多くの企業は短期的な成果を求めて「ECビジネス」に偏りがちですが、D2C Design Studioでは、中長期的な視点から「ブランドビジネス」に取り組むことの重要性をご説明したうえで、クライアントと共創していくスタイルをとっています。
ブランドロイヤリティの育成やエンゲージメントの向上はD2Cのポイントであり、醍醐味でもあります。今後、D2C市場が活性化した際、差別化の手段として「ブランドビジネス」の重要性は増し、D2C Design Studioの提供価値も高まっていくと考えています。
D2C Design Studioのフィロソフィー
“らしさ”の設計をゼロから研ぎ澄ます
2020年8月に設立したD2C Design Studioは、ブランドコンサルティングに長年携わってきた博報堂ブランド・イノベーションデザインのメンバーを中心に構成しています。ブランディングの考え方のベースであるそのブランド“らしさ”、その商品“らしさ”を重視した戦略を、UX(ユーザーエクスペリエンス)・CX(カスタマーエクスペリエンス)を含めてトータルでプロデュースしています。
一般的に、ブランディングは商品を起点にして行われます。一方、D2C Design Studioは商品を開発する前段階からブランドの“らしさ”を設計し、ニーズやペインを分析して商品の提供価値を定めていきます。商品ありきのブランディングではなく、ブランドありきの商品開発。この視点を研ぎ澄ましていくことは、ブランドロイヤリティの育成やエンゲージメントの向上がキーとなるD2Cの成功の秘訣でもあります。
ブランド開発の初期段階からクライアントと共創し、事業全体をプロデュースできることはD2C Design Studioの強みです。“らしさ”を設計するブランド開発に加え、顧客体験を設計するエクスペリエンス開発、ブランドとの絆を紡ぐコミュニティ開発をワンストップで実施することができます。
ECビジネスとブランドビジネスをいかに両立させるかがポイント
“モノ売りからの脱却”が成功の命運を分ける
ブランド開発と同様に、D2C Design Studioが重視しているのが“サービスデザイン”です。サービスをデザインするという言葉の本質には、モノ売りから脱却してサービス全体を俯瞰的に捉えるという視点があります。D2Cにおいて、商品はあくまでもサービスの一要素に過ぎないのです。
例えば、D2Cでパーソナライズスキンケア商品を販売するとします。生活者が商品を購入する過程には、オンラインで実施する診断コンテンツがあり、診断結果の例を閲覧するSNSがあり、商品に関して質問するチャットが存在します。
こうしたさまざまなタッチポイント=サービスを用意することがD2Cの特徴であり、商品を起点にした体験の創造=サービスデザインを重視したエクスペリエンス開発が重要になってくるのです。
“モノ売りからの脱却”が成功の命運を分ける
D2C Design Studioのソリューション
1.サービスデザイン視点に基づくワンストップ支援
ここからは、D2C Design Studioが提供する具体的なソリューションをご紹介します。
一番の特徴は、ブランド開発からD2Cサイトのシステム開発・運用まで、ワンストップで対応できる点です。D2C Design Studioにはトータルで戦略を練るストラテジストをはじめ、デザイナーやコピーライターといったクリエイターも在籍し、クリエイティブに関してもワンストップ対応が可能です。
下記は、D2C Design Studioのワークプロセスです。D2Cにおいては多様なプロセスが存在するため、時としてバケツリレー的に多くのスタッフが関わり、クリエイティブにブレが生まれる危険性があります。しかし、D2C Design Studioはストラテジストが先導役となり、領域の線引きなくプロセスを統率することで、ブレのないブランド/商品を生み出すことができるのです。
D2C Design Studioの事業プロセス
このワークプロセスにおいても、サービスデザインを重視する考え方は変わりません。プロダクトデザインの前にブランドデザインを位置づけ、商品ありきのブランディングではなく、ブランドありきの商品開発を実践します。
ブランドを構築し、提供価値を反映したプロダクトを設計し、そのブランドにふさわしいエクスペリエンスを開発していく。プロダクトオリエンテッドではなく、サービスオリエンテッドの視点を一貫して重視しています。
2.精度の高い事業を短期間で作り上げるプロトタイピング×アジャイルプロセス
初期段階からさまざまなコンテンツやタッチポイントを設計するD2C Design Studioのワークプロセスでは、ブランドサイトや商品ロゴ、ムービーの作成など、複数のクリエイティブを制作していきます。そこで重視しているのが、プロトタイピングとアジャイルプロセスです。
ワークプロセスの早い段階でプロトタイプとしてクリエイティブを制作し、繰り返しテストマーケティングを行います。生活者に与える印象などの効果を測定し、アジャイルプロセスによってリスクを最小化し、かつ、精度を高めていきます。これによって、適確にブランドロイヤリティの育成やエンゲージメントの向上を図れるサービスを構築していくのです。
サービスのあるべき姿をビジュアルで表現するプロトタイピング手法
このように、D2C Design Studioはサービスの初期段階から支援を行うため、クライアントと一緒に事業計画を作り上げていくことが大半です。
その際、上申用資料を作ったり、事業を円滑に進めるための組織体制の相談に乗ったりすることもあります。上申用資料としてムービーを作成するケースもあり、事業がもたらす生活者への提供価値、社会的価値を視覚化することで、事業イメージを一気に掴みやすくするというサポートも行っています。
3.同居型のアプローチでクライアントと共創し、人材育成にもコミット
クライアントと一緒に事業計画を作り上げていく——対峙型ではなく同居型のスタンスは、D2C Design Studioの特徴の1つです。体制的にもコアメンバーに絞り、クライアントと膝をつきあわせて事業計画を練っていくことを信条にしています。それによって、意思決定や制作のスピードを上げることができる、機動力の高さも大きな武器です。
クライアントの組織に深く入り込むため、ときにはD2Cに関する研修講座を提供することもあります。前述したように、D2Cがダイレクトビジネスの延長線上にはなく、「ECビジネス」と「ブランドビジネス」の両立がカギを握っているといったお話をし、D2Cに臨むための考え方や知識、意思統一を図っています。
D2Cには新たな領域に挑むための熱量やイノベーターマインドが不可欠なので、研修講座はそれらをクライアント内に醸成することにもひと役買っています。また、デジタル教育・人材育成の面でもクライアントの資産になり、将来的にD2Cビジネスを自走させる最終形にとってプラスに働くと考えています。
4.専門パートナーとの協業によって目指すサービス像の実現
現在、D2C Design Studioでは、専門パートナーとの連携強化に力を入れています。例えば、食品や化粧品といったジャンルに合わせ、メディアやインフルエンサーとのネットワークを持った専門パートナーと協業することで、より効果的なサービスの実装を実現できると考えています。
SNS運用やライブコマース、マーケティングなどの専門パートナーとも体制を組み、目指すべきビジョンを実現するための手段を増強しています。D2C Design Studioが培ってきた知見や経験、D2Cをトータルでプロデュースできるソリューションとそれらをかけ合わせることで、クライアントのD2Cビジネスを成功に導くことができると考えています。
まとめ
新たな事業としてD2Cビジネスを計画されている企業や、既存の商品をD2Cで販売することを検討されている企業のご担当者の方は、ぜひ、D2C Design Studioにご相談いただければと思います。
鷹野 翔平(たかの しょうへい)
株式会社博報堂 ブランド・イノベーションデザイン
D2C Design Studioリーダー
イノベーションプラニングディレクター
博報堂入社後、ストラテジックプラニング職として、多様な業種の戦略立案業務に従事。その後、博報堂DYグループ内の社内公募型ビジネス提案制度:AD+VENTUREの下、経営者として新規事業/新サービス開発に携わる。現在は自身の経験を活かし、事業・商品・サービス開発及びUX戦略・ブランド戦略のコンサルティングを行っている。
児玉 誠周(こだま せいしゅう)
株式会社博報堂 ブランド・イノベーションデザイン
D2C Design Studio
イノベーションプラナー/UXプラナー
博報堂入社後は、トイレタリー・通信情報機器・飲料等、様々な業種の戦略立案を経験。ブランド・イノベーションデザイン局に所属後は、イノベーションデザインカンパニーへの出向経験を活かし、デザイン思考をベースとした事業・商品・サービス開発、デザインリサーチ、UI・UXデザインに従事。