2024年9月5日、博報堂 CRM&システムコンサルティング局 CRM推進グループGMの上田から、顧客ID統合でマーケティングDXを実現する「IDベースマーケティング」について紹介するウェビナーを実施しました。
顧客ニーズが多様化し、生活者視点のマーケティング施策が、どの企業にも求められているなか、サイロ化されたデータ、カスタマージャーニーの分断、運用コストの増大といった課題に悩まれている企業も多いのではないでしょうか。
ウェビナーでは、博報堂がご支援した事例や、IDベースマーケティングの導入効果を詳しく紹介し、沢山の方にご視聴いただきましたので、その模様をお伝えします。
後編の本記事では、「IDベースマーケティング」の障壁となりやすいポイントや具体的な活用事例などをご紹介します。
登壇者
上田周平(博報堂CRM&システムコンサルティング局 CRM推進グループGM)
目次
IDベースマーケティングの障壁となりやすいポイント
以下の3つのポイントについて、「プロジェクトの障壁となりやすいポイント」という観点でもう少し具体的に紐解いていきたいと思います。
- プロジェクトのスコープ/計画が曖昧
- 組織の壁によりプロジェクトがうまくいかない
- プロジェクトフェーズやパートナー企業を跨ぐことによるギャップ
プロジェクトのスコープ/計画が曖昧
まず、 “Can Be” =実現できることから着手するということに関しては、プロジェクトのスコープや全体の計画を曖昧にしないことです。
そのために、戦略であれば、長期的な理想のビジョンだけでなく、現実的に実現しうる短期目標も描けていることが必要です。
同時に、業務プロセスや組織/人材に関しても、いきなり全自動化、全内製化を目指すのではなく、マニュアル作業と自動化のハイブリッドだったり、内製化範囲を少し広げるなど、現状課題に対して無理のない範囲で改善を目指す、といった “Can Be” なプロジェクト計画をたてる必要があります。
いきなりすべてを揃えて始めるのではなく、 “できること” を1つひとつ検証し、踏みながら進めていくことが重要です。
組織の壁によりプロジェクトがうまくいかない
「組織の壁」もその名のとおり、障壁になりやすいポイントです。私たちも様々な企業の支援をさせていただいていますが、システムやデータが絡む作業になるので、IT/DX関連組織が主導するケースが多いです。
一方で、全社的なプロジェクトといことを考えると、マーケティング・事業関連部門の関与も無視できません。しかも組織風土の違いから、プロジェクトを推進していく上でお互い相容れないことも出てきます。そのため、ITとビジネスをつなぐ組織、あるいはプロジェクトチームが必要になってきます。
プロジェクトフェーズやパートナー企業を跨ぐことによるギャップ
最後の注意ポイントは、「プロジェクトフェーズやパートナー企業を跨ぐことによるギャップ」です。プロジェクトは戦略を決めて進めていくわけですが、システム環境を実装して運用というフェーズに入っていくと、パートナー企業の支援を受けることが多いと思います。
ただ、その時に気をつけたいのが、実現したいマーケティングとテクノロジーの繋ぎが、どこかのフェーズで弱くなり、結果的に実行段階で大きなギャップが生じてしまうことです。
そうならないためにも、PJ全体を通じて常にマーケティングとテクノロジーの両面において、計画から外れないような社内のPJ体制、パートナー企業選びが重要になってきます。
IDベースマーケティングの成功事例・失敗事例
これらの障壁をどう乗り越えていくのかということに関して理解を深めていただくために、具体的な失敗事例と成功事例を紹介したいと思います。
顧客データ統合 アパレルチェーンの事例
まず、某アパレルチェーンの事例です。この企業は他社のマーケティングDX成功事例を参考に、経営トップの判断でベンダーを選定しました。
システム部門が主導してマーケティングプラットフォームを構築し、IDをベースにデータの部分統合を行ったわけですが、結果的にビジネス視点が欠けたプラットフォームになってしまい、現場で活用されず、プロジェクト自体を再始動することになりました。
実はこうしたケースは稀有な例ではなく、他社でも十分起こりうることなのです。
正しいプロジェクトの在り方をあらためて整理すると、次のことが重要です。
- 「検討」段階においては、目的と戦略を明確にし、実行可能なプロジェクトであることを確認した上で進めること。
- 「実装」段階では、CX(顧客体験)/ビジネス観点を踏まえた要件定義と柔軟な開発工程と体制を整え、運用までのプロセスを描いておくこと。
- 「実行」段階では、確実にやるべき施策でスモールサクセスを目指し、分析と施策実行を行き来しながらできる体制を整え、さらなる高度化に向けた追加開発やツールの導入を見越しながら進めること。
サービス・ID統合 化粧品メーカーの事例
次は、某化粧品メーカーの成功事例についてご紹介します。この企業は、コロナ禍の影響もあり、デジタルシフトへの必要性という大きな課題を抱えていました。
あわせて、複数のブランド間の重なりによるマーケティング活動の無駄と機会損失、美容部員への依存ということも課題でした。
そこで、新オウンドサービス開発によるCX向上、統合IDでのデータ集約、デジタルシフトによる365日型マーケティングを実現することを目的に、プロジェクトを推進しました。
この事例で良かったポイントはいくつかありますが、一番大きな成功要因は、新しいオウンドサービスを立ち上げてCXを向上させるプロジェクトとしてスタートさせたことです。
つまり、テクニカルなデータ間の統合にとどまらない、顧客=生活者にとってのメリットを追求したことが、結果的にうまくいったと考えられます。
実際に、この企業は、顧客データの蓄積環境を構築した上で、新たにブランドを横断するサービスサイト/アプリを開発し、そのリリースと併せて、統合IDサービスをスタートさせました。
博報堂グループによる支援の特徴
先ほどもお話したように、私たち博報堂の業務も、マーケティングを中心にしながら顧客である生活者に認知してもらって獲得するという領域だけではなく、顧客になってもらった後の定着、そしてファン化まで繋げる、いわゆるCRM領域にまで拡大してきています。
そのための専門組織として対応しているのが、「CRM&システムコンサルティング局」です。総勢60名ほどのスタッフが、マーケティングITシステムやDXコンサルティングのビジネス成長を目指した戦略の立案・実施推進と、蓄積されたデータの活用を通して、得意先企業の事業成長に貢献しています。
コンサルタント、システムデータに通じたエンジニア、データアナリスト、プロジェクトマネージャー、UXUIのデザイナーなど、それぞれが専門のスキルを発揮しながら連携し、得意先の課題解決に取り組んでいます。
また、博報堂グループ全体、博報堂DYグループの組織も合わせると、500名を超える人材を抱えているので、幅広い支援が可能です。加えて、これまでのプロジェクト支援のノウハウをベースに、独自のソリューションを展開しているので、あらゆる課題に対応できることも大きな特徴です。
最後に
最後に、これまでお話したポイントをまとめさせていただきます。
まず、生活者、社会の急速な変化により、IDベースマーケティングによるLTV型ビジネスへの必要性がますます高まっています。このとき重要になるのが、ただのIT対応にとどまらない、マーケティングそのものの変革ととらえてプロジェクトをスタートさせることです。
同時に、高い理想像を掲げるのではなく、実行できること=Can Beを見極め、スコープを明確にしたプロジェクト計画を設計することが肝要です。
さらに、企業目線ではなく、顧客にとってのCX向上を目指すことも忘れてはいけません。つまり、ID統合とサービス開発はセットで考えるということです。
繰り返しになりますが、出来ないことを無理に頑張るのではなく、フェーズを跨ぎ伴走できるパートナーを選定することは、プロジェクトを成功に導くためには、とても重要です。
私たち博報堂の「CRM&システムコンサルティング局」も、ぜひ皆様の事業成長の一助になればと思っています。ぜひお声がけください。
博報堂では、 DX事業構想のコンサルティングから、CRMやデータドリブンマーケティングのシステム企画・開発、そしてマーケティングテクノロジーを活用した運用まで、各分野の専門家が一貫してサポートします。詳しくは、以下らからサービス資料をご確認ください。 |
プロフィール
上田 周平
株式会社博報堂
CRM&システムコンサルティング局CRM推進グループGM
SI企業を経て、2005年よりマーケティングシステムのプロデュース、プロジェクトマネジメントに従事。2018年博報堂入社。企業のマーケティングDX/デジタルマーケティング実行へのコンサルティング~システム導入~運用までシームレスに支援。
BIZ GARAGE 編集部
ビジネスをとりまく環境の大きな変化により、最適な手立てを見つけることが求められる現代。BIZ GARAGEのコラムでは、生活者の心を動かし、ビジネスを動かすために、博報堂グループのソリューションや取り組みのご紹介、新しいビジネスの潮流などをわかりやすく解説しています。