スタートアップ支援とは、国・自治体・ベンチャーキャピタル・民間企業などによる「新たなビジネスモデルで短期間のイノベーションを狙う企業」を支援する仕組みのことです。
スタートアップ企業を立ち上げるときには、国や自治体、民間からスタートアップ支援を受けることでさまざまなメリットがあります。
しかし、スタートアップ支援にはどのような種類や選択肢があるのかよくわからないという経営者も多いでしょう。
そこで本記事では、スタートアップ支援の種類や選択肢、支援を受けるときのメリット・注意点を詳しく解説します。
目次
スタートアップ支援とは?
スタートアップ支援とは、新規事業やスタートアップ企業に対して、事業拡大に欠かせない指導や援助活動を指します。
ここでは、スタートアップ企業の定義とベンチャー企業との違いを解説します。
スタートアップ企業の定義
スタートアップ企業とは、革新的な事業構想を通じて社会に変革をもたらし、創業から短期間で急成長する企業のことを指します。多くの人が「スタートアップ」と聞いてIT関連の企業を連想するかもしれませんが、IT分野に限定したものではありません。
「スタートアップ」という表現は、もともとシリコンバレーでの用語であり、GoogleやApple、Facebook、Amazonといった、いわゆるGAFAが台頭するにつれ、これらの企業が「スタートアップ」と称されるようになりました。そこから、スタートアップという言葉は、短期間で顕著な発展を遂げる企業を指す名称として定着しました。
スタートアップ企業とベンチャー企業との違い
スタートアップ企業とベンチャー企業の主な違いは、ビジネスモデルと成長速度です。スタートアップは通常、画期的なアイデアや技術で市場に参入する企業を指します。短期間での急速な成長を目指すという特徴があり、最終的には、IPOやM&Aによる莫大な収益を出口戦略としています。
一方、ベンチャー企業とは、既存のビジネスモデルを基に、独自性を加えて新たな商品やサービスを生み出す事業を展開していく企業のことです。成長速度は、長期的で安定した成長を目指していきます。また、新規株式公開を経て、上場を果たすことを出口戦略としていることが一般的です。
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スタートアップ支援に注目が集まる理由
近年、スタートアップ支援への注目が高まっている背景には、国や自治体が支援を行っていることにあります。
2022年に経済産業省が発表した「スタートアップ育成5か年計画」では、岸田内閣が推進する経済政策「新しい資本主義」の一環として、スタートアップ企業への投資額を、2027年までに10兆円に拡大することを目標としています。
国や自治体の支援は、経済発展の促進、イノベーションの促進と、それに伴う雇用創出を意図しています。公的な支援を受けてスタートアップ企業が成長すれば、日本経済の発展にもつながるためです。
企業側としては、国や自治体の支援を受けて資金調達がしやすくなることで、新たなビジネスの立ち上げや起業への一歩が踏み出しやすくなるという利点があります。
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スタートアップ支援の種類
スタートアップ支援の種類には、以下の4つがあります。
- 補助金や助成金
- 投資
- ノウハウの共有
- 税制優遇
それぞれについて、詳しく解説していきます。
補助金や助成金
スタートアップ支援の代表的なものには、補助金と助成金があります。主に国や地方自治体が支給する支援金です。
原則として、返済は不要です。要件が合致すれば基本的には受給可能ですが、上限が決まっているため、時期によっては受け取れないこともあります。
また、補助金・助成金いずれも、基本的には後払いで支給されます。スタートアップ支援の補助金・助成金はさまざまなものがあるため、自社にあったものを選択することが重要です。
投資
スタートアップ支援には、投資もあります。
代表的なステークホルダーには、ベンチャーキャピタル・コーポレートベンチャーキャピタル・エンジェル投資家があります。
主な特徴を下表にまとめました。
スタートアップ支援ステークホルダー | 特徴 |
ベンチャーキャピタル | 成長の期待度が高い未上場企業に投資する投資会社 |
コーポレートベンチャーキャピタル | 自社との相乗効果を目的として、自社事業と関連性のある企業に投資する事業会社 |
エンジェル投資家 | 個人単位でスタートアップ企業やベンチャー企業に資金を供給する投資家 |
ベンチャーキャピタルは、スタートアップ企業やベンチャー企業のように成長が見込める未上場企業に対して出資を行う投資会社です。
コーポレートベンチャーキャピタルは、自社のビジネスに関連する企業への投資を通じて相乗効果を期待する組織のことを指します。
また、エンジェル投資家はスタートアップやベンチャー企業に個人で資金を提供し、株式取得を目指す投資家のことです。ステークホルダーの目的は、投資先の上場や売却から利益を得ることにあります。投資を返済する必要はありませんが、ステークホルダーは経営に介入する可能性があることは理解しておきましょう。
ノウハウの共有
スタートアップ支援の1つに、ノウハウの共有があります。
一部の自治体では、事業計画の策定支援や、スタートアップと投資家を結ぶイベントの開催など、知識の共有を促進するイベントを開催しています。多くの場合、無料でセミナーを受けることができ、実績のある企業からの事業モデルや経営に関する知見を学ぶことが可能です。
税制優遇
スタートアップ支援には、税制優遇もあります。代表的なものに、オープンイノベーション促進税制とエンジェル税制の2つがあります。
オープンイノベーション促進税制は、国内企業や企業内ベンチャーキャピタルを対象とした制度です。
スタートアップの新規株式を特定の金額以上購入した場合、購入金額の25%を所得から控除するという制度です。また、スタートアップ企業を買収する場合、買収によって得た発行済みの株式も、税制の適応対象です。
エンジェル税制とは、スタートアップ企業やベンチャー企業への投資を行う個人投資家に対して、株式の取得時と売却時に、税制上の優遇措置を行う制度です。スタートアップへの資金提供を奨励する制度として注目を集めています。
参照:オープンイノベーション促進税制|経済産業省、エンジェル税制のご案内|中小企業庁
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国・自治体によるスタートアップ支援の例
ここでは、国と自治体によるスタートアップ支援の例を、以下の2つに分けて解説します。
- 国のスタートアップ支援
- 地方自治体のスタートアップ支援
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
国のスタートアップ支援
国のスタートアップ支援には、経済産業省が運営する「J-Startup」があります。
J-Startupは、実績のあるベンチャーキャピタリスト・アクセラレータ・大企業の新事業担当者など外部の専門家から推薦された企業を対象に、海外展開を含む幅広い支援を、官民パートナーシップで提供する支援プログラムです。
公募ではなく推薦に基づく選定方式を採用しており、すべての起業家が支援を受けられるわけではありません。J-Startup認定企業に選出されると、広報活動支援や海外・国内展開支援、補助金の審査加点などの優遇措置が受けられます。
地方自治体のスタートアップ支援
地方自治体のスタートアップ支援は、主にその地域の居住者を対象としていますが、Uターン・Jターン・Iターンをする人に向けたプログラムも豊富に用意されています。地方自治体ごとに制度も支援内容が異なります。
例えば、東京都の「東京都創業NET」は、東京都内の創業・起業を目指す人々を支援する情報プラットフォームです。スタートアップ企業を立ち上げる人に向けて、創業や起業に関するノウハウや法令・融資制度・支援プログラムなどの情報を提供しています。
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民間企業によるスタートアップ支援の選択肢
民間企業によるスタートアップ支援の選択肢には、以下の2つがあります。
-
コンサルティング支援
-
営業代行の利用
それぞれについて、詳しく解説します。
コンサルティング支援
民間企業によるスタートアップ支援の代表的なものに、コンサルティング支援があります。経営戦略の立案・市場分析・財務計画の策定など、ビジネス運営に必要な支援を、専門家が行うサービスです。
コンサルティング支援を利用するメリットは、客観的な視点から企業の強みを活かし、弱点を克服する戦略を立てられる点です。コンサルティング支援を行う企業は多数あるため、自社の目的を明確にし、解決に向けて必要なサポートを受けられる企業を選ぶことが重要です。
営業代行の利用
営業代行の利用は、スタートアップ企業が自社の製品やサービスの市場への導入および販売活動を外部の専門業者に委託することです。
営業代行サービスを活用することで、営業組織を持たない初期段階の企業でも、専門的な営業戦略に基づいた効果的なマーケティングと販売が可能になります。特に、新市場への進出や顧客基盤の拡大を目指すときに、短期間での成果実現が期待できる手段です。
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スタートアップ支援を利用するメリット
スタートアップ支援を利用するメリットには、主に以下の4つがあります。
- 無料で支援が受けられる
- 他企業のノウハウが得られる
- 事業拡大のチャンスが得られる
- 事業の成長が見込める
それぞれについて、詳しく解説していきます。
無料で支援が受けられる
スタートアップ支援を利用するメリットの1つ目は、無料で支援が受けられることです。
補助金や投資といった起業支援を利用するときには、基本的に経費はかかりません。支援の目的が、新規事業者の養成及び革新的な取り組みの推進であるためです。
しかし、一部、有料の支援内容もあるため注意が必要です。具体的には、事業計画の策定や知的財産の申請等、専門的な作業を必要とするときには、費用が発生することがあります。それでも、多くの起業支援組織や投資家は、スタートアップ企業の成功を目指しているため、無償または低価格のサポートを積極的に行っています。
他企業のノウハウが得られる
スタートアップ支援を利用するメリットの2つ目は、他企業のノウハウが得られることです。
エンジェル投資家やベンチャーキャピタルによる事業支援は、事業モデルや経営ノウハウを学ぶ機会にもなります。投資する側は、スタートアップ企業の拡大を支援し、将来的なリターンを目的としています。
スタートアップ企業は、成功への道のりに多くの不確かさを抱えているためビジネスがうまくいかないリスクもありますが、支援者や投資家から提供されるアドバイスや支援を参考にすることで、失敗のリスクを回避できるでしょう。
事業拡大のチャンスが得られる
スタートアップ支援を利用するメリットの3つ目は、事業拡大のチャンスが得られることです。
スタートアップ支援には、ビジネスモデルの構築や人材育成などの多様なサポートがあります。例えば、事業計画のアドバイスやセミナーを受けることで、自社の事業計画の質を高め、問題解決策を見出す機会が得られるでしょう。
事業の成長が見込める
スタートアップ支援を利用するメリットの4つ目は、事業の成長が見込めることです。
スタートアップ支援では、資金調達・人材養成・事業戦略の策定・市場進出・技術の獲得など、多方面からのサポートが受けられます。
例えば、市場進出のための資金支援を受ければ、事業の成長を促進させることが可能です。さらに、スタートアップが支援を受けて成長した実績があれば、ステークホルダーによる資金提供の増加が見込めます。より多くの資金調達が実現すれば、事業展開の拡大が期待できるしょう。
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スタートアップ支援を利用する際の注意点
スタートアップ支援を利用する際の注意点には、以下の3つがあります。
- 経営に介入される場合がある
- 斬新なアイデアが出にくくなる
- 補助金・助成金は必ず受け取れるとは限らない
それぞれについて、詳しく解説します。
経営に介入される場合がある
スタートアップ支援を利用する際の注意点の1つ目は、経営に介入される場合があることです。
資金提供を受けると、投資家が経営に関与することがあります。ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家は、投資した企業の急速な成長と投資回収を目指し、経営指導を提供しているためです。
介入されることで経営の視点を拡げる機会にもなりますが、望む通りの経営が難しくなるリスクもあります。特に、資金額が大きかった場合、自社が意思決定を下す自由度が制限される可能性が高まります。
投資を受け入れる場合は、投資家との間で信頼関係を構築し、自社がコントロールを維持する必要があるでしょう。
斬新なアイデアが出にくくなる
スタートアップ支援を利用する際の注意点の2つ目は、斬新なアイデアが出にくくなることです。
経営への考慮が必要になるため、革新的なアイデアに基づくビジネスの推進が困難になるリスクがあります。資金援助を受けると、提案した計画や戦略に沿って行動する必要があります。このとき、ステークホルダーや支援機関の期待に応えることに重点を置くあまり、独自性や創造性が後回しにされがちです。
スタートアップ支援を受けるときには、自社のビジョンと支援者の期待とのバランスを見極めることが重要です。支援を得ながらも、独自のアイデアやイノベーションの追求を目指す必要があるでしょう。
補助金・助成金は必ず受け取れるとは限らない
スタートアップ支援を利用する際の注意点の3つ目は、補助金・助成金は必ず受け取れるとは限らないことです。
補助金や助成金にはそれぞれ異なる要件があり、要件を満たしていない限り、支給を受け取ることはできません。
補助金・助成金の申請については、以下の3点を認識しておくと良いでしょう。
- 募集期間を逃すと申し込みができないことがある
- 予算には上限が設けられているため、募集期間内でも予算が尽き次第終了することがある
- 補助金や助成金は通常、後払いで支給されるため、早く資金を受け取りたくても実現できないこともある
補助金・助成金に申請するときには、支給の要件や時期を事前に確認しておくことが重要です。
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まとめ
スタートアップ支援の種類には、補助金や助成金、ステークホルダーからの投資など資金調達支援や、ノウハウの共有があります。スタートアップ支援を利用することで、経営戦略の策定や市場への進出がスムーズに行えるようになります。
しかし、選択する支援サービスによっては、企業の自由度が制限される可能性もあるため、目的と条件に合ったスタートアップ支援を選ぶことが重要です。スタートアップを成功に導くためにも、自社にあった支援サービスを選びましょう。
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今井 晶也(いまい・まさや)
株式会社セレブリックス 執行役員 マーケティング本部長 セールスエバンジェリスト
セールスエバンジェリストとして、セールスモデルの研究、開発、講演を行う。23年間におよぶ営業支援で蓄えた「売れるノウハウ」をもとに、法人営業のバイブルとなる顧客開拓メソッドを作成。2021年8月には本書の一般販売向けとなる書籍「Sales is 科学的に成果をコントロールする営業術」を扶桑社より出版。現在は執行役員 マーケティング本部長として、セレブリックスのコーポレートブランディング、事業企画、マーケティング、営業の統括責任者を兼任。