2024年3月12~15日、博報堂による生活者発想の「トータルなエクスペリエンス」である顧客体験事例を紹介した大型ウェビナーを実施しました。4日間に渡り最新のCX事例を紹介し、多くの方にご視聴いただきましたので、その模様をお伝えします。
この講演では、「プロフェッショナルの連携で広がる、顧客ビジネスの多様性」というテーマで、カスタマーリレーション起点のトータルな生活者エクスペリエンス作りを、博報堂プロダクツの3名のスピーカーがそれぞれご紹介します。
目次
Chapter1|ID統合とLINEを活用したオムニチャネルCRM
スピーカー:菊地 友幸(博報堂プロダクツ、グロースデータ)
「ID統合とLINEを活用したオムニチャネルCRM」というテーマでお話させていただきます。
私は、博報堂プロダクツの執行役員を務めながら、データ利活用総合支援会社グロースデータの代表も務めています。
「グロースデータ」はコンサルティング、プランニングから各種エグゼキューションまで、クライアント企業のビジネス成長をワンストップで支援すると同時に、ビジネス人材、技術系人材合わせて120名を擁する博報堂プロダクツのグループ企業です。本日は、この「グロースデータ」が取り組んだ事例を中心にお話させていただきます。
現在、各企業では、ID統合とデータ利活用の取組みが急増していますが、その背景には、リアル・デジタルを通じた顧客接点の多様化と、商品販売にとどまらない顧客体験も含めたサービスの取組みなどがあげられ、企業にとっては、組織を横断した対応や環境づくりが必要になっています。
こうしたビジネス課題の中で、「グロースデータ」は、企業・グループとして共通の会員基盤を導入し、会員拡大・促進することや、保有する各種データ群の名寄せによる共通ID化と基盤の導入・プログラム開発などで課題解決に貢献しています。
本日は、そういった弊社のデータ利活用支援中でもかなり的を絞り、LINEを活用した事例と、それに紐づく弊社のワンストップCRMシステム「ペイ太」というソリューションについてご紹介したいと思います。
ちなみに「ペイ太」は、現状のLINEアカウントを活かしながらデジタル・リアルを串刺しにして顧客管理・営業管理を行う「グロースデータ」独自のソリューションです。
まず、某企業スポーツ事業部の活用事例ですが、こちらの企業は、企業グループとしてOneID化を進めていましたが、スポーツ事業部における重要接点である、試合会場というリアル接点を含めた顧客対応に課題がありました。
そこで、LINEをベースにしたCRMツール「ペイ太」を導入していただき、会場内外での顧客の行動履歴が把握できるようになり、接点があるすべての顧客に対する“おもてなし”が可能になりました。
今回の施策では、来場中に全自動ビールサーバーシステムをご利用いただくことをメインに、来場前のゲーム案内や来場後のメッセージ配信など、日常的にチームを意識してもらう情報やコンテンツを展開しました。
「グロースデータ」は、データ利活用を総合的に支援する企業ですが、デジタル接点のオウンドサイトやECサイトに関しては、博報堂プロダクツに専門機能がありますし、リアル接点では、店舗のDXやプロモーション、イベント事業を手掛けるグループ企業もあります。こういったグループ全体で幅広くケイパビリティを用意しているのが、博報堂プロダクツグループの強みです。
参考:EC、決済、CRMを手軽に始めるワンストップCRMソリューション「ペイ太」
Chapter2|顧客データの利活用によるアフターセールスでの1to1顧客対応、コール対応業務の改善によるカスタマーエクスペリエンスの変化
スピーカー:吉原 進一郎(博報堂プロダクツ)
「顧客データの利活用によるアフターセールスでの1to1顧客対応」と「コール対応業務の改善によるカスタマーエクスペリエンスの変化」についてお話させていただきます。
まず、「CRM・アフターセールスサービスの重要性」に関してですが、人口が減少し、市場全体のパイが縮小している国内の市場環境を見ても、新規顧客の獲得というハードルはますます高くなっています。それゆえ、一度、顧客になっていただいた方には、長く付き合っていただく、すなわち、顧客一人ひとりのLTVを向上させることが重要になってきます。
具体的には、単品リピート商品の長期継続、クロスセルやアップセル、さらに高価格帯の商品であれば、アフターセールス商品の購入や買い替え時の再購入といったことが大事になってきます。
そのためには、顧客の期待通りあるいは期待以上の商品やサービスを提供することと、対応が必要です。顧客にとって自分に合った商品やサービスを提供するためには、1to1マーケティング施策が重要ですし、顧客の期待通り/期待以上の対応というのは、顧客にとって自分を大切にしてくれるお店と思ってもらえるCS向上施策が重要になってきます。これらを継続的に行っていくことは、長期的なカスタマーエクスペリエンスの向上に繋がっていきます。
2つ目は「1to1マーケティングの実現に向けた取り組み」です。私の担当しているカーディーラーの事例では、新規顧客が減っている、アフターセールスがうまくできていない、また頻繁にブランドスイッチする、リピート客が少ないといった課題がありました。
そこで私たちは、長期的なカスタマー・エクスペリエンスを向上させるために、エリアごとにコンサルタントを配し、彼らが全国の販社を巡回し、年間マーケティングカレンダー作成をサポートしたり、現状課題をキャッチアップするようにしました。それをもとに事務局の方では、各販社の課題に応じたキャンペーンの企画、制作、実施検証まで一気通貫して行っております。
ここで重要になるのは顧客データです。私たちは、既納客それぞれに合ったコミュニケーションを実現するために、各種データベースを集約したマーケティングデータベースを構築し、1顧客1IDで顧客データを一元管理するようにしました。
これによって、顧客と各種データが紐付けられ、お客様がいつ、どの店舗で、どの車を購入し、その車が車齢何年で、過去にどんなパーツを交換しているかなどが一目でわかるようになりました。具体的なアウトプットとしては、顧客1人ひとりにカスタマイズした内容のダイレクトメールやアウトバウンドコール、場合によってはLINEを活用して、既納客の来店を促進しています。
3つ目は、「CS向上の実現に向けた取り組み」についてです。ここは具体的なソリューション「HAKUHODO CTI」を例にお話したいと思います。
これは博報堂と博報堂プロダクツが共同で開発したソリューションで、電話コンタクト業務の効率化、顧客満足度の向上に貢献するサービスです。着信ポップアップ機能やメモ機能、録音機能など、主な機能は3つありますが、日々、細やかな対応が可能になることで、CS向上を実現しています。
私達の事例からもご理解いただけるように、1to1マーケティングを実現する体制機能によって、顧客には自分に合った商品サービスを提供してくれると感じていただけますし、CS向上を実現するソリューションを活用することで、自分を大切にしてくれるお店スタッフと感じていただけます。さらに、これらを継続することで、長期的なカスタマーエクスペリエンスが向上すると考えます。
Chapter3|インテントデータ利活用によるUXリサーチと問題提起から広がる今後の展望
スピーカー:高井 新平(博報堂プロダクツ)
最後に、「インテントデータ利活用によるUXリサーチと問題提起から広がる今後の展望」についてお話させていただきます。
今回は、Webサイトにおけるインテントデータ(actualデータと生活者ライフログデータ)を基にサイトの調査を行い、ニーズの考察から問題提議、そして課題解決策のご提示までを手掛けた事例をご紹介したいと思います。
データを基にした調査があらゆる課題発見に繋がっていき、それから様々な施策に広がっていくというのがテーマです。
今回の事例では、ある通信会社のサービスサイトにおける、ユーザーの特徴やニーズを調査しカスタマージャーニーを作成しました。そして、理想的なシナリオとのギャップを埋めるためには何をすればいいのか、仮説を立てて施策の洗い出しを行いました。
そこで見えてきた課題は、サービスサイトが生活者接点として大きな機能を担っているものの、ユーザーがどんな目的で来訪してきているのかが把握しきれていないということでした。マーケットイン型のサービスを訴求していくためには、まずは現状がどういう状況なのか理解した上で対応策を練っていきたいということでプロジェクトはスタートしました。私たちはデータを活用して様々なUX上の課題に向き合って、解決策の提示に至ったというのが本プロジェクトの概要です。
ここで一般的なUXリサーチの全体像について簡単に説明させていただきます。
UXリサーチには6つのSTEPがあります。まず理想のシナリオ策定がSTEP1です。理想像の認識合わせを行った上で次に移っていきます。STEP2は現状のサイトの調査および評価です。そしてSTEP3では、調査で見えてきたことから現状のジャーニーを作成します。STEP4で、最初に策定した理想と現状におけるギャップの分析を行い、STEP5でギャップを埋める施策の検討をして、STEP6では、それらを実装して効果検証します。
今回は、ユーザーがサイトを訪れてから、サービスの契約や店舗への送客までの一連の流れにおける理想形をユーザーの視点で描いていき(STEP1)、現状の実態を把握するために、どんなユーザーがどこから来て、どのページにランディングしているのかを確認し、そこからニーズを分析しました(STEP2)。
そして、作成した行動シナリオとニーズボリュームを掛け合わせ、メインストリームを確認し、ユーザーの行動仮説を立てていき(STEP4)、ギャップ分析も行いながら、それを埋める施策を考えていきました(STEP5)。(ただし、今回はアイディアの提示で終わっています)
博報堂プロダクツでは、今回ご紹介した調査の簡易版をソリューションとしてもご提供しています。自社サイトにおけるさまざまな課題を、多彩なツールを使って、専門のアナリストチームが分析レポートしますので、この機会にご検討いただければと思います。
CX(顧客体験)向上に課題がある方へ 「HAKUHODO CX FORCE」では、生活者価値を起点に、組織・人材・事業戦略領域から、商品・サービス開発、販促・店舗・CRM・アフターサービスに至るまでのバリューチェーン全体のオンラインとオフラインを統合し、すべてのフェーズで優れた顧客体験を提供することができます。企業のビジネス成長を支援し、「長く愛され続ける」ブランド育成につなげ、企業の新たな価値を創出します。⇒ご相談はこちらから |
プロフィール
(役職肩書は2024年3月時点のものです)
菊地 友幸
株式会社グロースデータ
代表取締役社長
株式会社博報堂プロダクツ
執行役員 データビジネスデザイン事業本部長
2004年に博報堂グループに中途入社後、現在まで約20年間データ利活用業務に従事。1stPartyDataを活用するCRM業務や営業支援業務におけるデータ管理環境設計、データ分析設計、MA・SFA活用などのプロジェクトにおけるPM兼プランニング業務を得意とする。現在は博報堂グループのデータ利活用総合支援会社、グロース/CRM支援会社である株式会社グロースデータの代表取締役社長を務める。
吉原 進一郎
株式会社博報堂プロダクツ
カスタマーリレーション事業本部
本部長補佐
食品メーカーのECサイト構築・運用、コールセンター構築・運用、新規顧客獲得、CRM等ダイレクトマーケティング全般に渡ってサポートし、通販事業の拡大に貢献。その後、車メーカーとディーラーのアフターセールスビジネス拡大のプロジェクトを立ち上げ、データと現場の声を収集・分析しながら、CRMの強化、CSの向上をサポートし、メーカーとディーラーのビジネス拡大に貢献。その他、ダイレクトマーケティングの知見を基に、クライアントのビジネス立ち上げ~拡大に貢献を続ける。
髙井 新平
株式会社博報堂プロダクツ
デジタルプロモーション事業本部
チームリーダー/Webプロデューサー
マス連動、スタンドアローン、規模の大小を問わず、Web制作にかかわるあらゆるプロデュース業務を経験。Webコミュニケーション上の課題を解決するための、戦略設計~エグゼキューション、データ起点でのWebサイトグロースを得意としている。
BIZ GARAGE 編集部
ビジネスをとりまく環境の大きな変化により、最適な手立てを見つけることが求められる現代。
BIZ GARAGEのコラムでは、生活者の心を動かし、ビジネスを動かすために、博報堂グループのソリューションや取り組みのご紹介、新しいビジネスの潮流などをわかりやすく解説しています。