2024年3月12~15日、博報堂による生活者発想の「トータルなエクスペリエンス」である顧客体験事例を紹介した大型ウェビナーを実施しました。4日間に渡り最新のCX事例を紹介し、多くの方にご視聴いただきましたので、その模様をお伝えします。
この講演では、フルファネルの生活者エクスペリエンスを実現する、クリエイティブ×メディアの一体型チーム「HAKUHODOサイクロン」の事例を通して、「コミュニケーション起点のトータルな生活者エクスペリエンス」をご紹介していきます。
目次
LOVEとWANTをつくるチーム「HAKUHODOサイクロン」
スピーカー:相沢 理人(博報堂)、貞包 一平(博報堂DYメディアパートナーズ)
「HAKUHODOサイクロン」は博報堂グループ横断のクリエイターとメディアプラナーの一体型チームで、フルファネルの生活者エクスペリエンス開発を行っています。一言で言うと、LOVEとWANTをつくるチームです。
LOVEというのは、企業やブランドに対する好意、エンゲージメントといった、いわば未来の成果を作っていくもので、WANTは、商品やサービス自体の購買意向、売り上げなど、今の成果を生み出していくものになります。
つまり、このブランドが大好きでかつその商品が欲しいという両者が、断絶することなく、この両方に向き合い続けようというのが私たち「HAKUHODOサイクロン」のスタンスです。
従来のIMC領域は、テレビCMや屋外広告、PRといった、比較的アッパーからミドルの施策が中心でした。これがフルファネルに拡張されていくと、認知の先の購買、ファン化まで、ゴールまでの射程距離が変わっていきます。
こうした、これまで広告会社のクリエイティブがあまり関与してこなかった領域まで踏み込み、全ての顧客接点が、生活者にとってのブランド体験であると捉え、再設計するのが私たちが目指すところです。
そのための大きな作戦作りがコミュニケーションデザインになります。
例えばあるターゲットを想定したときに、彼らの本当のインサイト探しから始まって、彼らを動かす購買の決め手やKPI、さらにKPIを実現するためにクリエイティブとメディアをどう使うべきなのか。そのために最適なタッチポイントをどう設計して、それぞれのタッチポイントにおいてどういった表現や体験を提供していくのがベストなのか。さらにそこで得られた成果をどう測って、その学びをどう生かしていくのか。
こういった一連の“戦い方のデザイン”が我々チームの強みだと考えています。
もっと言うと、表現や体験を考えていく手前のところ、つまり、ストラテジーとクリエイティブとメディアの合流地点になる部分を、データによる分析力とクリエイターの発想力を掛け算しながら、戦い方の大きな絵を描いていきます。
本日はこのプランニングのプロセスに沿って、いくつかのアプローチ例を紹介していきたいと思います。
インサイト発掘の事例
最初のステップとして、インサイトを見つけていくという課題に対して私たちができることをご紹介します。それが「メディアデータに基づく機会発掘」です。これは、いわゆるSNSのデータ・検索のデータに基づいて、ターゲットインサイトや提供ベネフィットを分析し、ブランドの成長可能性を発掘するものです。
今は、SNSに限らず、動画視聴データなども含め、生活者インサイトを紐解く様々なプラットフォーマーデータが存在しています。これらは、生活者の無意識レベルの行動データのため、調査等では見えにくい、商品にまつわる本音や兆しを知る手掛かりになります。つまり、そうしたデータ群をクリエイターとメディアプラナーが一緒に見立てることで、新たな機会可能性を探し出すことができるわけです。
実際にエアコンを例に説明させていただきます。エアコンに関してSNS分析を行ったところ、ネガティブな発話が圧倒的に多く共感度も高いことがわかりました。
最初、メディアチームが分析結果からブランド機会を探ろうとしましたが、なかなか難しく、この結果を、クリエイティブチームも参加して新たに読み解いたところ、逆転の発想が生まれ、生活者には「エアコンのことでいちいち煩わされたくない」というインサイトがあるのではないかという認識が共有できました。
つまり、それこそがエアコンに求められる究極のユーザーエクスペリエンスなのではないかという仮説にたどり着きました。
そこから、企業が一方的にベネフィットを押し付けるようなコミュニケーションではなく、生活者が求めるノーストレスという価値をとらえた共感型のコミュニケーションに変えていくべきではないかという結論に至り、クリエイティブとメディアの大方針を作っていったわけです。
POE統合のコミュニケーション設計図作成
次にそのインサイトをもとにアイディアを作っていくときに、KPIをどうすればいいか、クリエイティブとメディアをどう使うべきか、タッチポイントの設定はどうすべきかという課題に対して、POE統合のコミュニケーション設計図を作って取り組んでいく事例を紹介させていただきます。
現在、デジタル化の推進により、コミュニケーションによって攻略していくべきファネルが拡大しています。それゆえ、Paid/Owned/Earned(POE)を統合してフルファネルに対応していくことが必要になり、コミュニケーション設計自体が複雑化しています。
そうした状況に対して、私たち「HAKUHODOサイクロン」は、クリエイターとメディアプラナーが一体となってコミュニケーション全体の設計図を作り、POEで一貫したコミュニケーションを作り上げていくことにトライしています。
例えば先ほどのエアコンをベースに考えてみると、生活者が頑張らなくていい、ノーストレスでいられる価値を、全てのコミュニケーションを通じて実感してもらうということを、クリエイティブとメディアの大方針と捉えた時には、情報をプッシュしません。
CM視聴自体をノーストレスな体験に昇華し、共感で振り向かせることがPaidの役割となり、UX/UIを高め、ノーストレスですぐに知りたい情報にたどり着くプラットフォームを作ることがOwnedの役割になり、ノーストレスなTipsを提供し、日々の接点において定常的に共感と実践を促すことがEarnedの役割となります。
私たちは、こうしたPOEの役割整理をもとに、ファネルのあり方から含めて、クリエイターとメディアプラナーが一から議論していきます。たとえば、ファネル自体も、認知から始まる通常のものではなく、好意・共感から始まる大方針に即したもので規定し、そうした大きなファネルの考え方をもとに、ファネルごとの役割、メディア特性も併せて、POE統合の設計図を作成します。
さらに、それぞれのPOEに詳細にKPIを規定し、明確な役割をもってアイディア開発ができる土壌を形成します。つまり、施策単位で定められた明確なKPIから逆算して、目的に対してシャープな立案が可能になるわけです。
データに基づくPDCA統合マネジメント
最後に、全体の設計図を基にして得られたアイディアや施策の成果をどう証明するのか、どう次の学びに生かしていくのか、ということについて紹介させていただきます。
これまでは、各領域のメイン担当者が分断され、PDCAもメディア領域で小さく回していることが多かったと思います。その課題を解決するために、「HAKUHODOサイクロン」では、クリエイターとメディアプラナーが構想から実装までを一気通貫で伴走する体制を作っています。
先ほどの例からもおわかりのように、施策ごとのKPIが明確だからこそ、データをもとに、ワンテーブルで議論することが可能になり、PDCAを回していくことができます。さらに、これを中長期で回し続けることで、ブランドや事業を運用する“大きなPDCA”が実現し、運用成果を起点にコミュニケーション戦略やブランドのあり方を追求することが可能になります。
以上、本日は3つの事例をご紹介しましたが、こうした事例以外にも、私たちは日々さまざまなテクノロジーやアセットを取り込みながら、手口を探っています。皆さまのニーズや課題に沿ったアプローチを探るためにも、ぜひ、フルファネルの生活者エクスペリエンス開発チーム「HAKUHODOサイクロン」を伴走させてください。
CX(顧客体験)向上に課題がある方へ 「HAKUHODO CX FORCE」では、生活者価値を起点に、組織・人材・事業戦略領域から、商品・サービス開発、販促・店舗・CRM・アフターサービスに至るまでのバリューチェーン全体のオンラインとオフラインを統合し、すべてのフェーズで優れた顧客体験を提供することができます。企業のビジネス成長を支援し、「長く愛され続ける」ブランド育成につなげ、企業の新たな価値を創出します。⇒ご相談はこちらから |
プロフィール
(役職肩書は2024年3月時点のものです)
相沢 理人
株式会社博報堂
生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
コミュニケーションデザイナー
外資系広告会社を経て、2015年博報堂入社。クリエイティブ/メディア/データとの連携をリードし、表現×設計の美しい統合によるネクストIMCの開発に従事。生活者価値あるブランド体験を通じて「愛される成長」を実現する。2022年よりメディア×クリエイティブの一体型チームHAKUHODOサイクロンを設立、クリエイティブ領域のリードを行う。
貞包 一平
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
統合アカウントプロデュース局
メディアプラニングディレクター
前職のデジタルメディアプラナー経験を経て、現在は全メディア統合のメディアプランナーとして、コーポレート周りのブランディング領域から、獲得重視のダイレクト領域まで幅広い案件に対応。データ分析やソリューションを活用した得意先投資対効果最大化に向き合うプランニング、効果検証スキーム規定に強みを持つ。2022年よりメディア×クリエイティブの一体型チームHAKUHODOサイクロンを設立、メディア領域のリードを行う。
BIZ GARAGE 編集部
ビジネスをとりまく環境の大きな変化により、最適な手立てを見つけることが求められる現代。
BIZ GARAGEのコラムでは、生活者の心を動かし、ビジネスを動かすために、博報堂グループのソリューションや取り組みのご紹介、新しいビジネスの潮流などをわかりやすく解説しています。