2024年3月12~15日、博報堂による生活者発想の「トータルなエクスペリエンス」である顧客体験事例を紹介した大型ウェビナーを実施しました。4日間に渡り最新のCX事例を紹介し、多くの方にご視聴いただきましたので、その模様をお伝えします。
この講演では、「社会価値起点のトータル生活者エクスペリエンス」の事例として、日本初の公共ライドシェア「ノッカル」と、マイナンバーカードを使った新しいサービスの「ロコピ」、2つの事例をご紹介していきます。
目次
はじめに
スピーカー:堀内 悠(博報堂)
私たちのプロジェクトは、マーケティングのために社会課題を活用しようというプロジェクトではなく、本質的な社会課題をリアルな社会で解決していくことを目標にしています。
社会課題を解決するためには非常に困難な問題も多いので、そこを解決する手法やソリューションを見つけていくことで日本全体の社会課題解決に繋がるのではないかと考え、クライアントとの共創ビジネス、博報堂の新しいビジネスに繋がっていくことを模索しながら取り組んでいます。
さらに、社会課題の解決をPOCでとどまらせるのではなく持続的に運営していくために、リアルな社会で地域の皆さんと一緒にやっていくことを肝に銘じながら推進しています。
本日ご紹介する「ノッカル」と「ロコピ」は、社会課題プロジェクトの具体的開発事例です。同時に、日本初のサービスを社会実装したものでもあります。これらの業務は、クライアント業務の延長線上から開始したものがほとんどで、共創もしながら、博報堂独自のプロジェクトへ拡張したものです。
社会課題プロジェクトの本質を考えた時、現在の社会インフラ、生活インフラは、ほとんどが高度経済成長期に設計されたもので、人口減少社会を迎えた現代では立ちいかなくなっていないかという疑問があります。
それゆえ、こらからの日本を子供世代へ継承していくためにも、いま、このタイミングで、自分たちの手で再構築していくことが必要なのではないかと考えます。
今回ご紹介する富山県の朝日町も、すでに20年後の日本の社会課題が既に顕在化しているエリアです。この朝日町で社会実装モデルを創ることで、いわゆる国家戦略のデジタル田園都市国家構想も含めて全国に展開していくことができる、そんな構想のもとで進めたプロジェクトであることをご理解ください。
私たちのプロジェクトでは、何か新しいものを持ち込むというよりは、地域のアセットや人材と、地域のニーズや課題というものを組み合わせながら、その地域で住民の皆さんがお互い助け合うようなカタチの「共助共創サービス」を作ることを目指しました。
マイカー公共交通「ノッカル」の事例
「ノッカル」は、一言で言うと、ご近所同士の助け合いの気持ちをカタチにしたマイカー公共交通で、その日本第一号モデルです。現在は延べ3,500人以上の方が利用しています。先ほどもご説明したように、朝日町の既存のアセットを最大限に活用した、地域による、地域のための運営が特徴です。
モビリティ資産はもちろん、地方ならではのコミュニティ資産、既存交通としてのバス・タクシーを活用しながら、サービス設計しています。
「ノッカル」は社会課題解決に、マーケティングの思想を持ち込むことで、徹底した生活者発想でのプランニング、地域共創での社会実装を推進した事例です。
実際の導入後、利用者の皆さんからは、移動の選択肢が増えたことで外出のハードルが下がったという趣旨の声や、ドライバーの方からは、コミュニティへの貢献が生きがいにつながるといった声をたくさんいただきました。
公共交通という市場は、収益性が厳しい市場になります。それゆえ、私たちが何か持ち込むのではなく、既に朝日町にある地域の既存アセットやハードを活用しながら、それをどう生かしきるのかという視点で、サービス開発、ソフト開発を進めました。
とくに今回は余分なコストをかけない設計ということが一番重要だと考え、これは他のサービス開発でも徹底している考え方です。つまり地域交通全体の再編ということをゴールにしながら、必要なことを実現する姿勢が最も大事だと思っています。
今後は、「ノッカル」単体ではなく、日本全国の地域交通課題を解決するソリューションとして育てたいと考えています。
「LoCoPi」(ロコピ)の開発事例
社会課題解決プロジェクトの具体的サービス開発事例として、次にご紹介するのは、マイナンバーカードサービスの「LoCoPi」(ロコピ)です。
「LoCoPiあさひまち」はマイナンバーカードを利用することで、町内の様々な施設が便利に使えるサービスです。カードをピッとかざすだけで街の施設の充実やサービス向上に繋がったり、子供やシニアの見守りが便利になったり、町の施設やサービスを利用するたびにポイントが貯まるなど、生活がより便利になるサービスです。
そもそも朝日町は富山県下でも最も高齢化が進む地域であると同時に、マイナンバーカード保有率が80%と、富山県下No.1のエリアだということに私たちは着目し、この資産を何とか生かしたい、スマホやPCを持っていない高齢者や子供のデジタル化を推進する最大資産にしたいと考えました。
すなわち、今回の施策をノッカルの地域交通はじめ、地域活性、地域教育、地域脱炭素、地域福祉などの「地域創生プラットフォーム」として位置づけられないかと考えたわけです。
さらに、朝日町役場内や住民のDXを公共サービスを中心に推進することで、町政や運営の最適化が図られ、同時にデータ活用も可能になります。今回の「LoCoPiあさひまち」の取組みはスタートしたばかりですが、2年後にはほぼすべての住民が活用するサービスにする予定です。
最後に
「ノッカル」、「LoCoPiあさひまち」、2つの事例には、私たち博報堂グループがもつ2つの強みが生かされています。まず1つ目は、「全体設計できる強み」です。
私たちは日々、クライアントやパートナーの課題解決に取り組んでいるわけですが、構想だけではなく、アウトプットにまでつなげて商品やサービスを設計することを得意としています。
そして2つ目は「実装力」です。一緒に仕事をさせていただいているコンサルティング企業の方からも、その点は評価いただいています。
私たちはビジネス化ということはもちろんですが、それ以上に、自分たちの構想力や実装力がどれぐらいその地域の役に立てるのか、生活者の皆さんに役に立てるのかという思いで取り組んでいます。
今後も、本日ご紹介したような地域交通の再編や、いわゆる自治体の再編など、次の日本の100年を創造するような、社会を動かすエンジンを開発し、これからの地域社会や国の社会課題解決に取り組んでいきたいと考えています。ぜひお声がけください。
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プロフィール
(役職肩書は2024年3月時点のものです)
堀内 悠
株式会社博報堂
DXソリューションデザイン局
局長代理
2006年博報堂入社。入社以来、一貫してマーケティング領域を担当。事業戦略、ブランド戦略、CRM、商品開発など、マーケティング領域全般の戦略立案から企画プロデュースまで、様々な手口で市場成果を上げ続ける。近年は、新規事業の成長戦略策定やデータドリブンマーケティングの経験を活かし、自社事業立上げやDXソリューション開発など、広告会社の枠を拡張する業務がメインに。
BIZ GARAGE 編集部
ビジネスをとりまく環境の大きな変化により、最適な手立てを見つけることが求められる現代。
BIZ GARAGEのコラムでは、生活者の心を動かし、ビジネスを動かすために、博報堂グループのソリューションや取り組みのご紹介、新しいビジネスの潮流などをわかりやすく解説しています。