消費財メーカーが抱える店頭活動の課題
各メーカーにおいて、売上に直結する実店舗の重要性が増しています。一方でECサイトの台頭などによって実店舗での競争が激化し、長期的な戦略や競合ブランドとの差別化が求められるようになっています。
「——店舗の売上を向上させる」。それは簡単なことではありません。全国津々浦々、店舗によってさまざまなケースが存在します。またECサイトと違い、実店舗では来店客の行動を定量的に判断することは困難です。このような理由から、各担当者が自社商品の店頭における課題を、正しく認識しきれないケースが多く見受けられるようです。
実店舗の実態を数値化し可視化できなければ、せっかくのプロモーションや販促ツールの効果検証ができず、勝ち負けの要因もわかりません。店舗について語る共通言語がないため、現場と上層部の意思疎通が困難になるといった課題も生まれているようです。
店頭状況を因数分解することで、課題もゴールも明らかに
そこで博報堂は、店頭の現状を数値化し分析するコンサルティングサービス「配荷方程式™」を開発しました。これは小売店における配荷力(=小売店における自社商品の売上高)の向上を目的とした科学的分析ソリューションです。
配荷力を左右する要因
小売店における自社製品の売上は、自社SKU※シェア・フェースシェア・品揃え実現率・フェース実現率など、さまざまな要因が複雑に影響しあって決まります。売上を決める各要因のうち、ある指標がゼロであれば、いくら他の指標を伸ばしても、高い効果は望めません。
※ SKU:Stock Keeping Unit(ストック・キーピング・ユニット)の略。商品の在庫管理等を行う際の最小の管理単位のこと。
配荷方程式™は、店舗における売上に関わる複数の要素を因数分解し、どの項目がどれくらい売上に影響を与えているのか、それぞれの寄与度の大きさを算出。店頭の売上に大きく寄与する要素を見つけ出し、今後注力するべき領域がどこなのか、また、その要素の数値を改善するための課題や機会がどこにあるかについてもご提案します。
配荷方程式™における売上寄与度の分析
「配荷方程式™」の具体的な流れをご紹介しましょう。
まずは店頭に精通したラウンダーが、対象となる全国の店舗に行き、対象企業と競合他社の店頭データを収集。商品がどのくらい棚に置かれているか、どの位置に陳列されているか、販促ツールは置かれているかなど、各項目が達成できているかどうかを細かく確認し数値化します。
その後、データサイエンティストとプランナーが、収集した店頭のデータやPOSデータ、棚割データなどを総合的に分析し、売上に影響を与えている指標や店頭の課題を抽出。店頭の状態を定量的に把握することで、売上を伸ばす近道や、競合他社までの距離が見えるようにします。
さらに、それぞれの指標を改善することで、どの程度の売上向上が見込めるのかのシミュレーションも行い、改善のための店頭設計案や、時には具体的な店頭ツールの制作までご提案します。売場に関しての情報収集から、改善するためのプラン策定までを一貫して支援するソリューションです。
配荷方程式™の流れ
店頭分析データをもとに、改善点を導き出す
従来把握が難しかった店頭の状況を数値化することで、客観的にブランドの課題や特徴が判断できます。現場の把握や上層部への提案時のファクトとしても使え、商談材料としても活用できます。
配荷方程式™のアウトプットイメージ(一部)
2022年秋にローンチしたばかりのサービスですが、提供に先駆けて行った実証実験では大きな効果があらわれました。あるヘアケアブランドと共同で行った実証実験では、売上寄与率のうち、価格相対値と陳列位置実現率が4割以上を占めており、重要な指標であることがわかりました。また店頭ツールによって販促効果に大きな差があり、「香りテスター」が設置されている店舗では売上パフォーマンスが高い傾向にあることが判明しました。
このブランドでは今まで香りテスターを重要視しておらず半分の店舗にしか設置していなかったのですが、この結果をもとに、パフォーマンスの低かった店頭ツールの制作を取りやめ、香りテスターを設置することを検討し始めています。配荷方程式™は、次の戦略やアクションに活かす有効な手段であると言えそうです。
配荷方程式™は、GMS/スーパーやドラッグが主な販売チャネルである消費財メーカーであれば対応可能なソリューションです。特に定番棚における競争が激しいカテゴリーほど、分析によって得られる示唆の価値が大きいと思います。消費財/小売業界に知見をもつメンバーが担当させていただきますので、まずは、ぜひご相談いただければと思います。