電子商取引(EC)市場は、コロナ禍を経た現在も急速に拡大しています。BtoC-EC市場は、2022年に市場規模が22.7兆円※を突破するなど引き続き成長傾向にあり、中でもECモールにおける競争はさらに激化しています。
※経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査」より
本記事では、ECモールの概要・メリット・デメリットなどとともに、ECモールビジネスを勝ち抜くための、博報堂グループならではのソリューションをご紹介します。
目次
ECモールとは
「ECモール」を深く理解するために、まずECモールの概要・特徴・自社サイトECとの違いについて、解説します。
概要
「EC」は、Electronic Commerce(電子商取引)の略で、ECモールとはインターネット上で商品売買やサービス取引をする複数の店舗やブランドが、1つの場所に集まって出店しているオンラインプラットフォームを指します。オンライン上のショッピングモールとも言えるでしょう。
大手ECモールと言えば、Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピング・ZOZOTOWNなどが挙げられます。
ECモールのユーザーは、多様な商品やサービスのラインナップからインターネットを通じて注文し、希望の場所に商品を配送してもらうことができます。
特徴
ECモールは、出店の簡単さと集客力の高さが特徴です。
企業や個人は既に完成しているECシステムを利用するため、サーバー準備・独自ドメイン取得・コーディングなどの作業の必要がなく、出店申請とストア・ページのデザインなどするだけで比較的容易にECモールに出店ができます。
また、ECモール自体がマーケティングやプロモーション活動を行ってユーザーを獲得しているため、Web広告・SEOなどに時間やコストをかけなくても、一定の新規顧客獲得が期待できます。つまり、出店して間もない時期でも比較的高い集客力が見込めると言えます。
自社ECサイトとの違い
自社ECサイトは、企業や個人が商品・サービスを独自で制作しているサイト上で販売します。自社ECサイトの代表例は、ユニクロ、無印良品、ニトリなどが挙げられます。
自社ECサイトはECモールと違って、デザインや機能を運用体制に合わせて自由にサイト設計でき、ECモール出店費用や販売手数料などがかかりません。
一方で、ECモールのように既に利用しているユーザーが存在しているわけではないので、広告やSEOなどにより立ち上げ時から、積極的な集客への投資が必要です。
そのため、自社ECサイトでまだブランド力がない商品・サービスを販売する場合、売れるまでに時間がかかることが多くあります。
ECモールの種類とは
次に、以下のECモールの主な3つの種類を見ていきましょう。
- マーケットプレイス型ECモール
- テナント型ECモール
- 統合管理型ECモール
マーケットプレイス型ECモール
マーケットプレイス型ECモールは、店舗ごとの「出店」ではなく、商品ごとに「出品」するECモールで、代表例はAmazonです。
ECモール内に簡単な出店者と商品情報のみを登録すれば販売できるので、設定に時間がかからず、手軽にECモール販売を始められます。
しかし各店舗のオリジナリティを出すことが難しいため、商品1つ1つの特徴や魅力などの情報をいかに充実させて登録するかが重要になります。
テナント型ECモール
テナント型ECモールは、店舗やブランドごとにページを作成して商品情報を登録するECモールで、代表例は楽天市場やYahoo!ショッピングです。
「テナント」という言葉が「ビルなどの一部区画を借り受けて営業する店舗」を意味する通り、ECモール内の一区画を借りて店舗を運営するようなイメージです。
店舗・ブランドごとにページを作成することから、マーケットプレイス型ECモールと比較すると、店舗のオリジナリティを出しやすい傾向にあります。
ユーザーも大型ショッピングモールに訪れたときのように、ある商品を目当てにページを閲覧して商品を購入することもあれば、店舗ページを横断的に閲覧して気に入った商品を見つけることもあります。
統合管理型ECモール
統合管理型ECモールは、自社内の複数の店舗・ブランドを一元管理して運営しているECモールです。
ターゲット層が異なる複数のブランドを展開している企業などの場合、統合管理型ECモールで商品販売することで、ユーザーに他ブランドも認知してもらいやすくなります。また、在庫管理から注文処理などの業務効率化も図れます。
一方で、サイトの構成やページ内遷移などを常に検証し、優れたUIやUXを目指す必要があるため、自社内での労力がかかるという特徴もあります。
ECモール出店のメリットとは
ECモールにはさまざまな種類があり、それぞれに出店することでどのようなメリットがあるのでしょうか。
- 顧客の規模が広がる
- リアル店舗を持たずにビジネスを始められる
- 多様なデータを収集できる
それぞれを見ていきましょう。
顧客の規模が広がる
ECモール出店のメリットの1つ目は、顧客の規模が広がることです。
生活者は購買環境をますますECへシフト/利用者の増加に伴い市場規模も拡大
ECモールに出店することで、これまでのエリア商圏や既存流通に縛られずに巨大なECモール商圏でスピーディーに展開でき、リーチできる顧客の数が圧倒的に広がります。
新たな顧客層にアクセスしやすくなることで、従来のオフライン店舗や自社ECサイトでは届けることが難しかった顧客に対する認知度も向上させられる可能性があります。
リアル店舗を持たずにビジネスを始められる
ECモール出店のメリットの2つ目は、リアル店舗を持たずにビジネスを始められることです。
ECモールで販売を始めれば、24時間365日オープンしている巨大商圏で顧客が必要なタイミングで必要な商品を、自由に商品を販売できます。
リアル店舗では、エリア商圏にどれくらいの人口がいるか、どの商品を店頭スペースに置いてもらえるかといった要素が重要になり、店舗ならではの立地の制限などもあります。一方ECモールは地理的な制約を気にせず、全国あるいは世界中といった広範囲な市場に展開ができます。
このようにECモール出店は柔軟性が高く、店舗の制約をうけずに、かつ初期投資も抑えてビジネスをすることが可能です。
多様なデータを収集できる
ECモール出店のメリットの3つ目は、多様なデータを収集できることです。
ECモールは多くの顧客が集まるプラットフォームであり、顧客の購買データや閲覧履歴などから、興味関心・行動などに関する情報を収集しやすい環境です。
こういったデータをマーケティング活用することで、ターゲット層が適しているのか、ターゲットのニーズは何なのかなどを把握することができ、事業PDCAやマーケティングに活用できます。
また、ECモール自体が様々なマーケティングツールや分析ツールを提供していることもあるので、それらを活用することでさらに効果的な営業戦略を展開することができるでしょう。
ECモール出店のデメリットとは
ECモール出店のデメリットはどういったものなのでしょうか。
- 競争が激しい
- ECモールの規定による各種費用がかかる
- ブランドイメージを確立しにくい
それぞれを解説します。
競争が激しい
ECモール出店のデメリットの1つ目は、競争が激しいことです。
ECモールには多様なブランドが参入しており、数多くの商品が出品されているため、競争が非常に激しい環境であると言えます。
その中で売上を伸ばしていくためには、商品・サービスの差別化や独自のキャンペーンが求められますが、比較検討が用意なECモールでは、価格競争に陥りやすいです。
価格を下げることで売上が上がる可能性はありますが、その分利益率は圧迫されますし、ECモール起点で市場全体に波及する値崩れを引き起こす危険性もはらんでいます。
このようなECモールの競争の激しさを理解したうえで、ECモールでの販売戦略を策定していくことが求められます。
ECモールの規定による各種費用がかかる
ECモール出店のデメリットの2つ目は、各ECモールが定める様々な運営コストが発生することです。
ECモール出店には、初期登録料・月間出店料・システム利用料・売上手数料・決済手数料・広告料などがかかるため、意図せず運営コストがかさむことが多いです。
また、商品注文・販売・在庫管理までを一括で対応できるECモールであれば、在庫保管手数料・配送代行手数料などがかかる場合もあります。
いくら売上が上がっても、運営コストが積み重なることで利益率を圧迫し、ビジネスに悪影響を与える可能性があります。
ブランドイメージを確立しにくい
ECモール出店のデメリットの3つ目は、ブランドイメージを確立しにくいことです。
ECモールに出店するには、そのECモールの機能や規定に合わせて出店する必要があります。つまり、デザイン・機能に制限があり、自社ブランドのイメージやオリジナリティを出すことに制約があります。
そのため、独自のブランドイメージ確立を重視する店舗にとっては、デメリットとなるでしょう。
ECモールビジネスで勝ち抜くための戦略とは
激化するECモール競争から抜け出すためには、ECモールの特性を理解した販売戦略の策定が非常に重要です。大切なのは、ECモールをリアル店舗の副次的なチャネルとして捉えるのではなく、一つの事業と捉え戦略を立てて運営する視点です。
また「単なるチャネル開設・整備」に終始するのではなく、「事業として成り立つか」を意識し、他事業・リアル店舗とも連携して戦略を考えていく必要があります。
ここでは、ECモールの戦略について、以下の3つを詳しく掘り下げていきます。
- 自社の課題がどこにあるのかを把握する
- ECモール戦略領域ごとの「点」ではなく事業全体の「面」で捉える
- ECモールを起点とした商品開発や流通販路確保を行う
自社の課題がどこにあるのかを把握する
ECモールにおける企業の課題は多種多様で、そもそも自社の課題がどこにあるのかを把握できていないケースも多数存在します。
自社の課題を正確に把握することは、ECモールで勝ち抜くための戦略の基礎となり、競争力を高めることにつながります。自社のポジショニングやターゲットを明確化し、各モールの特性を把握した上でECモール運営を行えば、日本全国そして海外にまでお客様を拡大できる可能性をも秘めています。
大きな成長余地があるチャネルのECモールにおいては、自社の商品やサービスが他社と比較してどのような特長や競争力を持っているかを評価するとともに、生産性低下を招いている課題を見つけ出すことが非常に重要です。
博報堂グループでは、ECモールの専門知見を持つコンサルタントが、EC事業全体のどこにボトルネックがあるのかを探し出し改善に並走する事業コンサルを提供しています。。課題は表層的なところではなく事業の根幹のところに課題もあるケースもあります。まずは課題を可視化して、手をつけられるところから改善していくことが肝心です。
ECモール戦略領域ごとの「点」ではなく事業全体の「面」で捉える
ECモールの戦略を、オペレーション運営・店舗運営・広告・ブランディングなどの「点」で考え、個別で最適化を図っている企業も多くあります。
しかしECモールは独自のシステムが連鎖して、影響を与え合っていることが多いため、単発で課題対策を行っても、大きな効果には直結しません。また企業が課題と認識していない部分に、課題の真因があることもあります。
ある企業では、広告運用や商品ページ改善を積極的に行っていたものの、売上が低迷していたことがありました。さまざまなデータを分析するなかで、根本的には欠品対策に課題があり、ECモールへの納品スピード遅延などが欠品につながって、売上低迷に寄与していることが分かりました。このケースでは、物流まわりのオペレーションを改善した結果、売上が向上しました。
つまりECモールで成功するためには、戦略領域ごとの「点」を近視眼的にみるのではなく、トータルの「面」で複眼的に課題をとらえ、対応することが必要なのです。
しかし全ての「面」での対策を、自社の限られた担当者が行うのは大きな負担になることが多いです。そこで博報堂グループでは、ECモールにおける戦略策定から事業運営、施策実行まで、フルファネル・ワンストップで対応しています。
オリジナルの市場分析データや生活者データベースに基づいた戦略立案を始め、各ECモールの特性に基づいた改善ポイントの洗い出しから、日々のPDCA運用、さらには総合広告会社としてのナレッジを活かした広告制作から、物流・コールセンター業務などの実装まで、豊富なソリューションを提供しています。
また、多様化するEC課題に対し、博報堂グループ内外のEC領域に精通したプロフェッショナルが、会社の壁を越えてワンチームで連携。短期的な数字の改善だけではなく、長期的な事業の成長につなげています。
ECモールを起点とした商品開発や流通販路確保を行う
ECモールを起点とした商品開発や流通販路確保によって、さらなるビジネス戦略を展開することもできます。
博報堂グループはあるメーカー企業に対し、ECモールに特化した商品のローンチを企画段階からフルでサポートさせていただいた例があります。
独自のデータから市場の流行や生活者のニーズを読み解き、新商品のコンセプトをご提案。販売シミュレーションはもちろん、どのような戦略を策定し、商品ページでは生活者にどのように訴求をするか。値崩れしないようにいくらで価格設定を行うか、ローンチ後に垂直立ち上げのためにどのような販促施策を行うかなど、ゼロから一気通貫してサポートさせていただきました。
その結果、新商品の立ち上げが難しいと言われているECモールでも、想定以上の売上を記録することができました。新商品が軌道にのったことで、今ではさらなる商品開発の企画も立ち上がっています。その他の商品サイトも改善を図り、全体的なECモールでの売上も、サポート前と比べ急成長することができています。
ECモールビジネスでの成功が必要不可欠な時代が訪れる
ECが一般的に根付いた現代。特にECモールは、利便性や購買体験も拡張していき、生活者の主要購買チャネルとしてさらに存在感が増すことが予想されます。売上に占める割合もますます大きくなっていくことでしょう。だからこそ、ECモールで成功することが企業にとっては必要不可欠となってくるのです。
博報堂では、ECモールの専門知見を有したコンサルタントが多数在籍しており、ECモール領域を全方位的に網羅したコンサルティング、新規EC事業の立ち上げ、海外への越境ECなど幅広い対応が可能です。
我々はECモールをコンサルティングしておしまいというわけではなく、経営戦略立案から各種サービス実装、日々の地道な事業運営とまで徹底並走してクライアント企業様の成果につなげることをを強みにしています。
博報堂グループ内でもワンチームのスタッフで対応していますが、企業の皆さまともワンチームで並走して、長期的なゴールを目指していきたいと思っています。Amazonや楽天市場などECモールでの成長に伸び悩んでいる企業や、ECモールへの新規参入を検討されている企業のご担当者は、ぜひお気軽にご相談ください。
小田 塁(おだ るい)
HAKUHODO EC+
博報堂 ショッパーマーケティング事業局
メーカーDX推進グループ ビジネスプラニングディレクター
2019年博報堂中途入社。マーケティングリサーチ会社や大手ECモールでのキャリアにおけるデータ・ドリブンな事業支援経験をもとに、さまざまな企業のEC事業戦略策定から施策の実行に至るフルファネルでのコンサルテーションに従事。「HAKUHODO EC+」のメンバーとしても、グループを横断したEC業務対応やソリューション開発を推進。