ポストコロナの時代を迎え、リアル店舗の利用率はコロナ前の水準に戻りつつあるようです。
リアル店舗は、ECと比較して滞在時間が長くなる傾向があり、商品の直接体験や比較選択が生活者によって行われています。
消費財業界で戦うメーカーにとって、売上と販売量の向上のために重要な鍵を握っているのが、商品の魅力を生活者に伝え、購入に結びつけるプロセスです。
このプロセスにおいて、リアル店舗は欠かせないチャネルとなっています。店頭販促(店頭プロモーション)やインストアマーチャンダイジングは、多くのメーカーにとって非常に効果的なツールであり、最重要な戦略の1つです。
本記事では、様々な店頭販促支援プロジェクトに携わってきた担当者が、店頭での成功に必要なポイントを詳しく解説します。
目次
店頭販促とは
店頭販促とは、実店舗での購入を検討している生活者に向けたマーケティング活動で、消費者の購入意欲を刺激し、競合他社の商品との差別化を図ることを目的としています。
この活動は、生活者にポジティブな体験を提供し、ブランドや商品への好感度を高めることで、売上と販売量の向上に繋がり、単なる売上増加だけでなく、ブランド価値の強化、生活者との長期的な関係構築、市場での地位確立に寄与します。
店頭販促は1度の購入だけでなく、リピート購入や新商品のクロスセリングの機会を提供し、顧客ロイヤルティを向上させるための基盤となります。
現代では、デジタルマーケティングとの統合が強化され、スマートフォンアプリやSNSを通じてオフラインとオンラインの活動を融合させることで、シナジー効果を生み出すことが可能です。
オンラインとオフラインが統合された店頭販促は、生活者の購入経験を豊かにし、記憶に残るブランドイメージの構築に貢献し、結果として長期的な成功を促進します。
店頭販促がもたらす効果
店頭販促がもたらす効果は、以下のとおりです。
- 認知率の向上
- 購買率の向上
- 平均購入点数の向上
- 平均購入単価の向上
- 購入頻度(リピート率)の向上
認知率の向上
認知率は、生活者が特定のブランドや商品の存在をどの程度認識しているかを示す指標です。生活者が特定のカテゴリーで最初に思い浮かべるブランドを「トップオブマインド」と称します。
「トップオブマインド」のブランドになることは、生活者にとって最も手っ取り早く商品を購入してもらう鍵になります。この状態になるためには、ブランドが生活者に対して繰り返し露出され、良いイメージを持ってもらうことが重要です。
広告やプロモーション、実際の商品体験などを通じて、生活者の心に深く刻まれることで、ブランドへの好感度や評価が徐々に高まり、最終的には商品を購入するとき選んでくれる可能性が高くなります。
購買率の向上
購買率は、来店者数の中で実際に商品を購入する顧客の割合を示し、生活者が店頭で商品を手に取るきっかけ作りが重要です。即座の購買行動を促すことが売上向上に直接影響します。
平均購入点数の向上
平均購入点数は、特定の期間内にショッパーが1度の購入で、平均してどれくらいの数量の商品を購入したかを示す指標です。
売り方の演出やPOP・販促物での訴求、サイネージ動画や推奨で、非計画購買をいかに誘発するかがポイントです。
平均購入単価の向上
平均購入単価は、ショッパーが1度の購入で平均してどれくらい金額を支払ったかを示す指標です。ショッパーが商品やサービスの価値を充分に理解し、それに見合う金額を支払うことに納得感を持てるようにすることがポイントです。
購入頻度(リピート率)の向上
購入頻度すなわちリピート率は、生活者が1度購入した商品を再び購入する確率です。商品を使用した後の実際の体験が生活者の意見や感想に反映され、これがリピート購入やブランドロイヤルティの形成に直接関わります。
また、この体験は口コミやオンラインレビューを通じて他の生活者の購買行動に影響を及ぼす可能性があります。重要なのは、生活者との長期的な関係を築き、顧客満足度を高めることに焦点を置くことです。
店頭販促の効果を上げるためにメーカーが取り組むべき施策
売上と販売量を高めるためには、
「認知度(認識度)×理解深度×信頼度(好印象)」
という要素が必要です。
これをさらに詳細に分析すると、
「【認知度(認識度)→認知率】×【理解深度→購入者数(率)×平均販売数×平均販売単価】×【信頼度→購入頻度(リピート率)】」
と表せます。
これらの要素を最大化するためのメーカーの施策と人的支援(ラウンダー、推奨販売員、デモンストレーター、イベントスタッフ)によるアクションを解説します。
認知率の向上に効果的な施策
- IMC(Integrated Marketing Communication/統合型マーケティング・コミュニケーション)を実施する。
テレビCM、オンライン広告、評判管理、SEO(検索エンジン最適化)、プロモーション、PR活動、イベントスポンサーシップ、プレスリリース、メディアイベントを通じた情報発信、インフルエンサーや有名人とのSNSマーケティングのコラボレーションなど。
- 商品取り扱い店舗数や店舗での取り扱い商品数を増加させる。
- パッケージデザインを魅力的にすることで店頭での目立ちやすさを向上させる。
購買率の向上に効果的な施策
- 新商品の開発や商品ラインナップの拡張を通じて、多様な生活者ニーズに対応する。
- 割引キャンペーン、クーポン配布、ポイントアップキャンペーンなどのセールスプロモーションを実施する。
- 試食・試飲やサンプル配布、体験イベントを通じて商品の魅力を伝え、顧客体験を強化する。
平均購入点数の向上に効果的な施策
- 商品の使い方やライフスタイルに合わせたクロスセリングを促進する提案や訴求を行う。
- 関連商品やカテゴリー売場での商品展開、バンドル販売を行い、複数購入を促す。
- 季節やイベントに合わせた特別プロモーションや限定商品(ノベルティ含む)を提供し、購入意欲を刺激する。
平均購入単価の向上に効果的な施策
- 高品質や独自の機能を持つプレミアム商品ラインの開発を進め、高級感や付加価値を訴求する。
- 価格設定を再検討し、コストパフォーマンスに優れた商品と高単価商品の適切なバランスを見つける。
- 競合商品との比較での優位性を明確にアピールし、商品の差別化を図る。
- 商品のパッケージや提供するサービスの質を向上させることで、生活者に高い価値を感じさせる。
購入頻度(リピート率)の向上に効果的な施策
- 商品やサービスの品質を維持し、生活者の期待を超えることで信頼を築く。
- 品質チェックと商品イノベーションにより、市場での競争力を維持する。
- 顧客体験を最適化し、便利な返品・交換ポリシーを提供する。
- リワードプログラムを導入し、生活者の忠誠心を高める。
- データ分析を活用して生活者の好みを理解し、パーソナライズされた商品やサービスを提供する。
- 生活者とのコミュニケーションをパーソナライズし、フィードバックを改善に活かす。
- ブランドストーリーと倫理的価値観を通じて、生活者との感情的結びつきを強化する。
- 社会的な取り組みやサステナビリティを強調し、限定版商品で特別感を演出する。
リソース不足を解決する人的支援
施策の効果を高めるためには、商品の店頭での露出を増やすことが重要です。現在、ドラッグストアを中心に実店舗数が増えており、人手不足に直面しています。流通本部は予定利益達成のために条件の良いメーカー商品を大量に仕入れ、その販促を店舗に任せる傾向があります。
この結果、商品部や販売部、エリア統括、店舗責任者などからの多くの指示や情報が店舗担当者に発信され、情報過多で陳列作業が追いつかず、店頭での施策が十分に実現できていない状況が生じています。適切なタイミングと場所で商品を展開するためには、店舗への適切な情報案内や陳列サポートが必要です。
これらを実現するための人的支援について説明します。
ラウンダー
ラウンダーは、メーカーまたは卸店に代わって小売店舗を定期的に訪問し、自社商品の陳列状況や在庫をチェックし、商品の注文促進や販売促進活動をサポートする役割を持つ人材です。小売店とメーカーの間のコミュニケーションを円滑にし、商品の市場での露出を最大化し、小売店舗を管理する重要な役割を果たします。
具体的な活動例
- POPや販促物の設置により、商品の注目度を高める。
- 客導線上やレジ前など、売場の重要な位置での商品展開を交渉し、ディスプレイを最適化する。
- 関連商品の近くでの商品展開交渉や複数箇所での展開を通じてクロスセルを促進する。
- 商品や施策の案内を通じて、店舗販売員と継続的なコミュニケーションを取り、ブランド・商品のファンにし、来店する生活者への推奨を得る。
推奨販売員/イベントスタッフ/サンプリングスタッフ
推奨販売員は、特定の商品やブランドを推奨し、生活者に商品の特徴や利点を伝えることに特化した販売員です。商品やサービスに関する専門知識を持ち、生活者のニーズに合わせて最適な商品を提案し、信頼性のある情報源として購入決定をサポートします。
具体的な活動例
- 商業施設や店内で実際に商品を操作するなど、体験型のデモンストレーションを実施する。
- イベント場所やカウンター窓口への誘引や商品案内を行い、サブスクリプションユーザーを獲得する。
- 街頭や店内での試供品やチラシの配布によるサンプリング活動。
- アンケートの実施や商品説明を通じて得た生活者のフィードバック(VoC:Voice of Customer)をメーカーに提供する。
店頭販促の戦略|全国規模の店舗をフォローするには
自社で全国の数万店舗をフォローするためには、どのような方法があるのでしょうか。また、どのようなボトルネックが潜んでいるのでしょうか。
まず、現状よりもコストをかけないで店舗フォローをする手段は、以下の2点があります。
- 自社営業マンに店舗巡回も任せる
- 卸業者に店舗フォローを依頼する
それでは、1つずつ確認していきましょう。
自社営業マンに店舗巡回も任せる
流通本部担当営業は、本部交渉を始めとする多くの業務を抱えており、店頭フォローまで手が回らないことも多く、移動時間などの労力から店舗巡回の優先順位が低くなる可能性が高いです。
個人のスケジュール管理に委ねられると、結局は定期的な店舗へのフォローができず、営業成果や店頭実現度が上がらないこともあります。
卸業者に店舗フォローを依頼する
卸業者は自社の在庫状況やメインメーカーに偏る傾向があり、実際は全くフォローがされていない(店舗に情報が伝わらない、定期巡回ではないためコミュニケーションが取れない)といった事象が多く発生します。
店頭販促に投資してラウンダーを活用する際の問題点
店舗への巡回営業の課題
店舗巡回に投資して、ラウンダーを活用する際の問題点は、以下の2点です。
- 店舗フォロー(フィールド)の自社リソースが足りない
- アウトソーシングの統制が取れない
それでは、1つずつ確認していきましょう。
店舗フォロー(フィールド)の自社リソースが足りない
自社で店舗フォロー(フィールド)組織を形成しようとすると、リソースには制限があり、数多くの店舗フォローは困難です。1人につき20~40店舗を担当することが平均的で、1日に訪問できる店舗も限られているため、スピードある一斉展開が苦手です。その分、機会ロスが発生するリスクが高まります。
また、採用費やフィールド組織運営のためのリソースが必要で、人的コストもがかかることや、無期雇用転換や労使トラブルなどのリスク管理に多くの労力を費やすこともあります。
さらに、エリア営業所に管理を委ねているケースでは、属人的管理や教育不足、運営ノウハウ不足により、統制がとれず、培ったノウハウも体系化できずに、浸透しにくい環境になっていることが考えられます。
アウトソーシングの統制が取れない
店舗の重要性や店頭戦略に力を注いでいるメーカーは、既にアウトソーシングを活用しています。しかし、共通のKPIを設定するなどして統制を図らないと、流通本部担当営業が曖昧な指示や熱量の低い指示を出してしまうことになりかねません。
その結果、ラウンダーが最大限の力を発揮できず「訪問数や店頭エビデンス写真の撮影に注力」することになり、期待値に達しないことも少なくありません。
店頭販促の巡回営業を業務委託するメリット
業務委託のメリット
店舗への巡回営業を業務委託するメリットは、以下3点です。
- コスト削減
- リスク回避
- 営業体制の強化
「店頭巡回営業」は、メーカー商品の市場内のシェアをあげる上で切っても切り離せない戦略の1つです。アウトソーシングは費用がかかる、見合った効果が出ないと思われがちですが、費用の配分・コントロールも可能です。
また、成果をあげるために仕組みや、やり方を変えることで店頭実行力の向上、そして成果向上も期待できます。
店頭販促なら博報堂にお任せを
セレブリックスの強み
店頭販促なら、博報堂が全国の店舗で培った勝ちパターンを惜しみなく提供できます。ここでは博報堂の強みを、以下4点解説します。
- フレキシブルな体制
- 独自の人材育成力
- 高度なプロモーションキャストのアサイン
- 豊富なソリューションメニュー
それでは、1つずつ確認していきましょう。
フレキシブルな体制
兼任スタッフのリソースがあり、巡回訪問する店舗密集度が高いエリアには専属ラウンダーを配置。密集度の低いエリアは訪問数単位での兼任ラウンダーで店舗巡回をすることが可能です。これにより、人に合わせた巡回店舗選定ではなく、最適な巡回店舗選定を実現できます。
また、蓄積された流通知見を活かし、本部主導型チェーン・店舗裁量型チェーンなどチェーン特性に合わせた最適なラウンダータイプの配置が可能で、費用対効果の出やすい仕組みを構築できます。専属タイプについては、自社ラウンダー、外郭エリアや地方エリアはセレブリックスのラウンダー、といった使い方をする企業様もいらっしゃいます。
さらに、最重要施策や新商品の立ち上げにおいては、そのタイミングだけ兼任スタッフによる店舗フォロー範囲を増やしたり、同一店舗に専属と兼任の2名体制でフォローしたりすることで、スピード感ある店頭一斉展開も実現可能です。
独自の人材育成力
高速活動指示(水平展開)フィードバック
経験豊富な熟練のSVやトレーナーが開発したラウンダーのスキルマップを基にした、独自の教育カリキュラムやコンテンツがあります。これにより、超実践的な研修や効果抜群なOJTを習得度・依存度に合わせて定期的に実施可能です。
成長意欲を刺激するインセンティブ企画(コンテストなど)や評価制度も得意先様へご提案し、モチベーション管理も実施します。また、一気通貫な研修でスキルの平準化を実現できます。
事務局は、得意先のご担当者や流通本部担当営業に対して、本部商談に有益な情報提供(課題/解決策/KFS〔成功要因〕)に力を注ぎ、常時仮説実証の高速PDCAサイクルで次の一手に向けて最大のサポートをします。
一方、KFSはラウンダーにも即日共有して、成功事例の店頭実現の速度を早めます。
メーカー企業の自社ラウンダー組織運営とアウトソーシング会社を活用した運営を比較すると、費用面では、採用費や社内管理者の人件費の削減に繋がります。
また、固定人件費ではなく変動販促費として扱うことが多いため、予算増減や情勢によってコントロール可能で、無理やムダ、ムラなく店頭パフォーマンスの向上が期待できます。
推奨販売員/イベントスタッフは高度なプロモーションキャストのアサイン
プロモーションキャストとは、舞台俳優、役者、芸人など、夢を追求する表現者たちです。セレブリックスの推奨販売員/イベントスタッフ/サンプリングスタッフは、高度なコミュニケーションスキル、エネルギッシュな表現力、および心を掴む洞察力を兼ね備えています。
その能力と特性を活かして、商品の特徴や価値をより効果的に伝えることができ、結果として高いパフォーマンスを発揮しています。
豊富なソリューションメニュー
実行部隊であるラウンダーの管理、組織運営だけではありません。セレブリックスは博報堂グループの一員であるため、他ソリューションのご提案や連携も可能です。
博報堂プロダクツのAIを駆使したITテクノロジーを組み合わせて、店頭戦略のプランニングから効果効率的な巡回も実現できますし、店舗やラウンダーの意見を反映した販促物提案、キャンペーン施策にラウンド業務をパッケージ化した提案など、他ラウンダー会社にはないソリューション提案ができます。
そして、現在自社ラウンダー組織で店舗巡回をしているメーカー企業に対しては、ITテクノロジーやラウンダー・SVへの教育、研修のみでもご活用いただけます。ぜひ、店頭販促領域で解決したいこと、叶えたいことなどご相談ください。
豊富な店頭販促ソリューションメニュー
稲川 博之(いながわ ひろゆき)
株式会社セレブリックス
HRカンパニー チャネル戦略事業部 マネージャー
小売業で販売職やメーカーで営業職、そして、フィールドマーケティング業界でさまざまなカテゴリーメーカーの店舗営業支援プロジェクトの立ち上げ業務やディレクション業務、マネージメント業務を経て、2019年に株式会社セレブリックス入社。培った経験や知見を活かしフィールド業務の新規顧客獲得や各プロジェクト総責任者としてマネージメント業務に従事。