「自社でもAIの活用に取り組みたいけど、AIをどのように活用すればよいか分からない」
このような悩みを抱えている企業担当者も少なくないでしょう。また実際にAIについて問われたとき、すぐに正しい回答ができる人も限られています。
そこで本記事では、AIの活用について、AIができること・できないこと、AI活用のメリットなどと合わせて詳しく解説していきます。
目次
AIを活用する上での前提知識
AIを活用する際には、AIについて前提知識を把握しておくことが重要です。AIに関する基本的な前提知識を把握しておかないと、そもそもAIとは何かという根底部分の理解が曖昧になってしまいます。
実際に、AIという言葉を使っている人の中には、AIがどのような言葉の略称であるかも知らない方もいるのではないでしょうか。AIを効果的に活用するために、以下の2つの前提知識について把握しておきましょう。
- AIとは?
- 機械学習とディープラーニングの違い
それではAIの前提知識について確認していきます。
AIとは?
AIとは、人工知能を意味する「Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)」の頭文字を取った用語です。AI自体に明確な定義づけはされていませんが、一般的には「人間と類似した知能を搭載したコンピューターシステム」とされています。人間の思考・知的行動を再現できる点がAIの特徴といえるでしょう。
機械学習とディープラーニングの違い
AI関連の用語として、「機械学習」「ディープラーニング(深層学習)」が挙げられます。ディープラーニングは機械学習の一種です。
機械学習とディープラーニングの違いは、機械学習は複雑な処理や高度な分析ができないが比較的少ない時間とデータで学習が行えるものに対し、ディープラーニングは複雑なデータ処理が可能だが掛かる時間・データ量・コストが大きくなるものです。
したがって、機械学習とディープラーニングを目的に合わせて使い分ける必要があります。その上で、時間・データ量・コストなどのリソースを考え、まずは機械学習で処理できないか検討し、さらにディープラーニングの必要があれば対応するという順番で取り組むと良いでしょう。
AIを活用することでできること
ここでは、AIを活用することでできることについて解説します。
- 画像認識
- 音声認識
- 自然言語処理
- 予測分析
- 最適化
- 異常検知
それぞれ詳しく見ていきましょう。
画像認識
1つ目は、画像認識です。
画像認識とは、コンピュータに読み込ませた画像をもとに、顔や物体、文字などを識別する技術です。コンピュータによって処理された大量のデータに基づいて、AIがパターン認識を実施して特徴を分析していきます。
ディープラーニングの発展に伴い、AIによる画像認識の精度が高まっています。顔認証システムや行動検知のシステムにもAIの画像認識機能が導入されており、今後も様々な分野で画像認識の活用が進んでいくでしょう。
音声認識
2つ目は、音声認識です。
音声認識とは、AIが音声を認識して、その音声の内容に応じた処理を自動的に行う技術です。具体的には、AIが認識した音声を文字(テキストデータ)に変換して処理を行っていきます。AIの音声認識は、スマートフォンに搭載されている音声アシスタント、駅に設置されている案内ロボット、議事録の自動作成などで活用されています。
人の言葉を認識するという面で、これまで人が行ってきた聞き取りの仕事をAIが担ってくれるため、業務効率化や人件費の削減にも貢献してくれる機能といってよいでしょう。
自然言語処理
3つ目は、自然言語処理です。
自然言語処理とは、人間が日常的に用いている話し言葉をコンピュータで解析する技術です。日本語、英語など各言語に応じて内容を解析・処理していきます。人間が使用している言語をAIが処理するため、AIの「人間らしさ」を象徴する機能ともいるでしょう。
自然言語処理の活用事例として、Google翻訳などの自動翻訳機能が挙げられます。自動翻訳では、入力した言葉を別言語で自動的に翻訳してくれます。AIの技術発展もあり、以前よりも自動翻訳の精度は劇的に高くなりました。日常会話レベルの翻訳であれば、ほとんど違和感なく実施できると考えてよいでしょう。
予測分析
4つ目は、予測分析です。
AIの予測分析とは、AIを使って過去のデータを分析することで将来の予測をすることを指します。大量の過去データを基に、AIがデータに潜むパターンを見つけることで、将来のあらゆる事象を予想可能です。
AIの予測分析は金融や医療、保険、製造、物流など様々な分野で活用されています。人間の知能のみでは分析が難しいビッグデータの分析もAIの得意分野ですので、予測分析の精度は今後もますます高まっていくでしょう。
最適化
5つ目は、最適化です。
AIの最適化とは、業務における目標・制約を加味しつつ、最良な選択肢を抽出していくことを指します。AIに組み込まれたアルゴリズムを駆使して、制約を守りつつ最適な方法を抽出する形です。
ビジネスの場面では、各種制約の中で行う業務が数多くあります。たとえば、従業員のスケジュール・シフトの作成、交通機関のダイヤ作成、インフラ整備の計画、空調制御のコントールなどが代表例です。AIの最適化機能によって、各種業務の制約を加味しながら最適な選択肢を選ぶことができます。
異常検知
6つ目は、異常検知です。
AIの異常検知とは、大量のデータの中から通常とは異なるデータを検出することを指します。AIの異常検知では、データマイニングを利用してデータ同士の照らし合わせを実行し、異なるデータを抽出していく形です。AIの異常検知の活用事例として、画像認識での異常検出が挙げられます。
通常の画像パターンとは異なる挙動を検出することで、事前に製品などの異常を察知することが可能です。これまで人間の目視で行われてきた異常確認をAIに任せることで、業務効率化に繋げることができるでしょう。
AIを活用してもできないこと
AIは人間の知能では行えなかったデータ抽出・分析を行えますが、AIを活用してもできないことも存在します。AIを活用してもできないことは下記の通りです。
- 感情の理解
- AIの学習に使用されたデータ領域内の活用
- 自発的な活動はしない
各項目について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
感情の理解
AI自体は感情はなく、人間の感情を理解することや、何かを経験したり、共感することはできないと考えられています。たとえば、人間が映画を見て感動したとしても、AIは映画の内容を各種データとして認識・処理します。「感動」という感情自体は、AIには生まれないのです。ただ、AIは感情を持っているように振る舞うことはできます。
たとえば、音声認識の機能を活用してAIに映画の感想を聞いた際に、AIが「感動した」「面白かった」などと返答することは可能です。これはAIが感情を持っている訳ではなく、AIが「この映画について聞かれた際は、このように答えるのが最適」という学習をしているために実施できるものです。現在の技術では、AI自体が人間と同じ感情を持てる状態ではない点を認識しておきましょう。
AIの学習に使用されたデータ領域内の活用
AIは学習に使われたデータをベースに、様々なタスクを進めていきます。このため、学習で使用したデータで推論できない領域には活用しにくいです。たとえば、新しいテクノロジーの出現や過去に例のないような金融危機などは、AIを活用しても予測するのは困難になります。
また、学習したデータに偏りがある場合、AIによって出力される結果も偏った内容になりやすいです。良い意味でも悪い意味でも、学習した過去データに依存してしまう点がAIの特徴であるといえるでしょう。
自発的な活動はしない
何かしらの働きかけがあって初めてAIはタスクを実行します。このため、何の指令もなしにAIは動けません。たとえば、人間は自分の意志で話し出したり行動しますが、AIは自ら話す・行動することができないのです。自らの意思で動くAIの研究も実施されていますが、現状はまだ人間からの指令が必要な状態となっています。
AIを活用するメリット
AIを活用するメリットは数多くありますが、中でも特筆すべきメリットは下記の3点です。
- 業務効率化
- 生産性向上
- 人的ミスの予防・コスト削減
それぞれ詳しく見ていきましょう。
業務効率化
これまで人が対応してきた業務をAIが代わりに担うことで、業務効率化を実現できます。たとえば、データ収集・分析の業務を人手で行っていた場合、データ量が膨大だと時間・労力がかかってしまいます。データ収集・分析の業務をAIに担ってもらえば、人が時間・労力をかけずに業務を進めることが可能です。
浮いた時間・労力を他の業務に注力できるので、適切な人員配置もしやすくなります。AIに任せる業務と人が行うべき業務を区別することが、今後のAI導入のポイントになるといえるでしょう。
生産性向上
AIに業務を代替させることで、スタッフ1人あたりの仕事量を大幅に低減することができます。スタッフ1人あたりの仕事量が低減すれば、人手不足の問題解消にも繋げられるでしょう。
実際に人手不足が深刻な飲食業界・小売業界・介護業界では、AI機器の導入が急務です。自動レジ・自動注文機器・自動カーナビゲーションなど、生産性向上に繋がるAI機器は数多く登場しています。今後、人手不足の業界を中心にAI機器の導入が進んでいくと考えられます。
人的ミスの予防・コスト削減
AIは学習したデータやルールに基づいて正確な情報を返すことが可能です。このため、ミスなく作業を進められます。
人が作業を行う場合、どうしても人為的ミスが生じる可能性があります。ミスを減らすことは教育次第で可能ですが、完全にミスをゼロにすることはできません。AIであれば、データ・ルールに沿って作業を行うため、人為的ミスが生じることはないです。
また、AIが人が今まで行っていた作業を担うことで、人件費の削減にも繋がります。AIが登場する以前は、現状の仕事の品質を保ちながら人件費を減らすのは難しいとされていました。人件費を削減すれば、それだけ生産性が落ちてしまうためです。
これがAIの登場によって、パフォーマンスを落とさずに人件費を削減することが可能になりました。前述した通り、人為的なミスもAIによって削減できるため、コストを削減しつつパフォーマンスを高めることも実現可能な状態になっています。
まとめ
AIを活用することで、これまで人間では行えなかった大規模なデータ収集・解析を実施できます。また人間が行っている業務をAIによって代替することで、人件費削減や業務効率化に繋げることも可能です。AIの活用は、自動翻訳機能や自動レジなど身近なところでも始まっています。ビジネスでもAIの導入・活用がより広がってくるでしょう。
なお、博報堂ではオンボーディングを支援する自社ソリューションとして、「Data Science Boutique:AIコンサルティング・開発実装サービス」も提供しています。よろしければ、紹介ページをご覧ください。
BIZ GARAGE 編集部
ビジネスをとりまく環境の大きな変化により、最適な手立てを見つけることが求められる現代。
BIZ GARAGEのコラムでは、生活者の心を動かし、ビジネスを動かすために、博報堂グループのソリューションや取り組みのご紹介、新しいビジネスの潮流などをわかりやすく解説しています。
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