日々、蓄積されるデータを活用し、経営課題を解決するデータ分析は、現代のビジネスにおいて欠かせない要素となっています。しかし、実際にデータ分析の重要性を理解していたとしても実施することが難しいという方も多いでしょう。
そこで本記事ではデータ分析の必要性やメリット・デメリット、データ分析の活用事例などについて解説します。
目次
データ分析とは?
データ分析とは、膨大なデータからさまざまな方法でデータを収集し、整理・加工・統合した後に分析を行い、価値ある情報を引き出すことを指します。
データ分析は、現在のビジネスにおいて不可欠な技術であり、多くの企業がデータ分析をビジネスにおける課題の発見と解決に役立てています。データ分析にはさまざまな手法があり、それらの組み合わせにより高度な分析を行えます。
データ分析とデータ活用の違い
データ分析と似たものにデータ活用があります。両者の違いは、データ分析が収集したデータから有益な情報を抽出すること自体に焦点を当てているのに対して、データ活用はデータ分析によって得た有益な情報を活用して迅速かつ正確な意思決定を行い、ビジネス上の価値に変換することに焦点を当てている点です。
データ分析とデータ活用は相互に関連しており、統合的なアプローチが必要です。
データ分析が必要になった背景
ビジネスにおいてデータ分析が必要になった背景には、消費者行動の多様化、またそれによるビジネスにおける迅速な対応の必要性が挙げられます。
- 消費者行動の多様化
- ビジネスにおける迅速な意思決定が必要
それでは、1つずつ解説します。
消費者行動の多様化
データ分析が必要になった背景の1つ目は、消費者行動の多様化です。
現代の消費者は、個々の多様な価値観や嗜好に合うような、さまざまな商品やサービスを求めています。
また、インターネット・SNS・スマートフォンなどの普及により、それまでと比較できないほどの情報量を消費者が入手できるようになっています。そのため、情報へのアクセスも多様になってきており、消費者のニーズを正しく捉えるためには、データを分析をする必要が出てきています。
ビジネスにおける迅速な意思決定が必要
データ分析が必要になった背景の2つ目は、ビジネスにおける迅速な意思決定が必要になっているためです。
インターネットの普及によりビジネスのスピードも各段に上がってきており、あらゆる場面で迅速な意思決定が必要になってきています。
そこで、膨大な情報を短時間で分析できるデータ分析は、迅速な意思決定の手助けとなりビジネスの成功につながりやすくなるでしょう。なお、データ分析には、さまざまな手法やツールがあり、適切な手法やツールの選択をすることが重要です。
データ分析のメリット
ビジネスにおいて、データ分析の活用が重要になってきています。データ分析により得られた情報をもとに製品やサービスの改善・マーケティング戦略の立案・新規事業の開発などに活用できます。
主なデータ分析のメリットは以下の3つです。
- データドリブン経営の加速
- パーソナライズマーケティングが可能
- 迅速な意思決定・課題解決が可能
データドリブン経営の加速
データ分析のメリットの1つ目は、データドリブン経営の加速です。
データドリブン経営とはデータを重視し、客観的なデータに基づいて意思決定を行う経営手法を指します。主観的な経営に偏らないというメリットのほか、適切な在庫や人員の確保などによるコスト削減効果も期待できます。
データドリブン経営では、市場調査・顧客アンケート・ソーシャルメディアの分析などさまざまな手段を用いてデータを収集・分析を行い、ビジネスにとって重要な指標を明確にした上で戦略を決定します。そのため、企業は市場動向や顧客ニーズを深く把握し、市場競争力を強化できます。
パーソナライズマーケティングが可能
データ分析のメリットの2つ目は、パーソナライズマーケティングが可能なことです。
データ分析の活用で、顧客の属性・購買履歴・行動履歴などを分析し顧客に合った最適な商品・サービスを提供する「パーソナライズマーケティング」が可能になります。
例えば、購買履歴から顧客が好む商品やカテゴリを把握し、それに関連する商品をおすすめする、あるいはウェブサイトでの行動履歴から個々の顧客に適した広告を配信するというアプローチなどにより、顧客のリピート率や売上増加につなげることが可能です。
迅速な意思決定・課題解決
データ分析のメリットの3つ目は、迅速な意思決定・課題解決です。
データ分析により、大量のデータを効率的に処理できる点は、企業の競争力を高めるために重要です。例えば、販売データの分析によって売れ筋商品や効果的な販売ルートを把握したり、顧客の購買履歴から顧客のニーズを正確にとらえることで、それに応じたマーケティング施策を迅速に展開できます。
また、データ分析は課題の早期発見と迅速な解決にも役立ちます。例えば、顧客からのクレームや不具合を分析し、その原因を特定することで早急に対策を講じることが可能です。
データ分析のデメリット
データ分析には多くのメリットがありますが、同時にデメリットもあります。データ分析のデメリットは主に以下の3つです。
- 業務負荷が増える可能性
- 分析業務の属人化
- コミュニケーションコストが増える可能性
業務負荷が増える可能性
データ分析のデメリットの1つ目は、業務負荷が増える可能性があることです。
データ分析には、多くのデータを収集しクリーニング・加工・分析する必要があります。そのため、データ分析を行うと業務負荷が増大する可能性があります。特にデータの品質が悪い場合やデータ量が膨大な場合はなおさらです。
特にデータ分析を新たに行う場合、現状の人員でそのまま分析業務を行うケースが多いでしょう。元々の業務だけで時間的・人的リソースが不足しているような場合は、業務に携わる人員の業務負荷増大により、生産性が落ちないよう留意が必要です。
分析業務の属人化
データ分析のデメリットの2つ目は、分析業務の属人化です。
データ分析には、業務と分析、両方のスキルや知識が必要になってくるため、データ分析を行う人材が限られてくる場合もあります。また、分析業務を行う人間によって分析結果が異なる場合がある点も、業務が属人化しやすくなるというデメリットになります。
もしその人材が退職や異動などで離れた場合、分析業務の継続が難しくなり組織全体でのデータ活用が困難になる危険性があります。
コミュニケーションコストが増える可能性
データ分析のデメリットの3つ目は、コミュニケーションコストが増える可能性があることです。
データ分析を行う上で分析結果を意思決定に役立てるためには、分析結果の関係者への共有が欠かせません。しかし、関係者の中にデータ分析に詳しくない人や専門分野が異なる人がいる場合には、データの分析結果について説明が必要となりコミュニケーションコストが増大する可能性があります。
また、分析結果を共有する際に関係者間で理解レベルや認識に違いがあると誤解が生じることがあり、それにより意思決定プロセスが遅延する可能性もあります。
データ分析の流れ
それでは実際のデータ分析の流れについて見ていきましょう。ビジネスや分析目的によって異なる場合がありますが、データ分析は大まかに問題の定義から実行したアクションの検証まで以下の4つのプロセスを経て行われます。
- 目的の設定
- データの収集・蓄積
- データの分析
- PDCAサイクルを回す
目的の設定
データ分析を行う前に必要なのが、何を解決したいのか・何を達成したいのかを明確にすることです。目的が明確になれば、そのために必要なデータや分析手法も明確になります。必要な情報を得るために、どのようなデータを収集する必要があるか・どのような分析手法を用いるべきかを考えましょう。
また、ビジネス上の課題解決や意思決定のために目的を設定する場合が多いですが、時にはデータ分析の結果を基に新しいビジネスの展開や戦略の構築にもつなげられます。
データの収集・蓄積
設定された目的に必要なデータを収集し蓄積します。収集データには、アンケート調査・Webアクセスログ・POSデータなどの内部データや、外部データとして市場調査結果や競合情報などがあります。データを収集する際には、データに偏りがないかといった精度や信頼性に加え、情報セキュリティにも注意が必要です。
また、場合によっては分析の前にクレンジング(データの欠損や重複の修正)やスケーリング(データが一定の範囲に収まるようにする)が必要です。
データの分析
統計解析や機械学習などの手法を用い、収集したデータを基に分析を行います。分析手法は目的によって異なるため、目的に応じた正しい手法の選択が重要です。収集したデータをグラフや統計量などを用いて可視化し、データに含まれるパターンや傾向を探索します。このプロセスによって、データの特徴や問題点が明らかになります。
分析結果から得られた知見や課題を基に、予測や戦略の修正、施策の改善をスピーディーに行います。
PDCAサイクルを回す
PDCAサイクルは、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の4つのステップからなる、業務の継続的な改善を目的としたプロセスです。
分析結果を基に立案した戦略を実行したら、実行後のデータ分析の結果を評価し、目標に対して新たな戦略がどの程度の成果を出したかを検証し改善を行います。PDCAサイクルを継続的に回すことで、次の分析のための課題を洗い出し、さらなるビジネスの成長や課題解決につなげます。
データ分析の分析手法
データに含まれる情報を有効活用するため、データ分析には分析するデータに合わせた多種多様な手法があります。以下の10個は代表的なデータ分析の手法です。
- バスケット分析
- アソシエーション分析
- クロス集計
- 因子分析
- クラスター分析
- 決定木分析
- ABC分析
- ロジスティック回帰分析
- 主成分分析
- グレイモデル
バスケット分析
バスケット分析の「バスケット」は「買い物かご」であり、顧客が複数商品の買い物をした場合、ある商品と一緒に購入される傾向がある商品を調べる分析手法です。
具体的にはスーパーマーケットなどのレジでの商品スキャンデータを使用して、購買データからどの商品が一緒に購入される傾向があるかを分析します。例えば、「牛乳とパン」といったわかりやすい組み合わせのほかにも、有名な例である「ビールとおむつ」のような、一見想像できない商品の組み合わせも明らかになります。
アソシエーション分析
アソシエーション分析は商品やサービスの購入パターンの分析により関連性や傾向を見つけ出す手法で、ECサイトでの利用が多いです。バスケット分析はアソシエーション分析の一種ですが、アソシエーション分析では商品だけでなく検索履歴や位置情報などバスケット分析より広範囲なデータの組み合わせの中から相関関係を探します。そのため小売り以外のビジネスにも使用されます。
クロス集計
クロス集計は2つまたは3つの複数要素を縦軸と横軸に置き、収集したデータを要素別に集計した結果を表にまとめて関連性を分析する手法です。顧客の属性と購買傾向を分析する場合などに用い、例えば性別と年齢別の売上データをクロス集計することでどの年齢層の男女がどの商品をよく購入しているかといった傾向を分析できます。
クロス集計の結果から、どの商品をターゲットにするかや広告の効果を高める方法といったビジネス上の意思決定を行えます。
因子分析
データが持つ多数の変数(構成要素)を分析し、その背後にある共通点を持つ変数(要因)を抽出する手法です。顧客の属性や市場の特性、消費者行動について把握する目的で利用されます。
因子分析の特徴は各変数間の関連性だけでなく、共通している割合も計測できる点です。
データを共通因子で表せるため、例えば複数の商品の特徴を集計してある種のグループに分類できます。そのため因子分析は、顧客セグメンテーションの分析に有効です。
クラスター分析
クラスター分析は、似た属性を持つデータをクラスター(集団)に分類する手法です。
例えばある店舗の顧客データを年齢層・性別・購入履歴などを元にクラスター分析すると、類似した顧客をグループ化できます。グループごとに傾向を把握し、それぞれに適したマーケティング施策の展開が可能になります。
クラスター分析には、階層的手法と非階層的手法の2種類があります。階層的手法では、類似度に基づいて階層的に分類を行い、非階層的手法では事前にクラスターの数を決めて分類を行います。
決定木分析
決定木分析(ディシジョンツリー)とは、ツリー構造を用いて目的変数に影響を及ぼしている説明変数を見つけ出す分析手法です。目的変数にどの説明変数がどのように効いているのかが、視覚的に分かりやすい特徴があり、マーケティング戦略の策定などに利用されます。
「決定木」の要素にはデータをある条件によって分類する「分類木」と変動する数値で分類する「回帰木」があります。分類モデルの決定には分類木を用い、数値の予測をする目的の場合は回帰木を用います。
ABC分析
ABC分析は、商品や顧客を売上や利益の高い順にランク付けして分析する手法です。
ABC分析では最も売れ筋の高い商品であるA、売上が低い商品であるC、その中間であるBといったようにA、B、Cの3つのカテゴリに分けます。この分析の基となるのは「物事の結果の8割は2割の要素によってもたらされている」という「パレートの法則」であり、結果を生み出す2割を選び重点的にリソースを割くことで効率的なリソース配分や在庫管理を行うために使用される手法です。
ロジスティック回帰分析
ロジスティック回帰分析は、ある事象の発生確率を予測するための手法です。
ロジスティック回帰分析の要素には「説明変数」と「目的変数」があり、目的変数が1に近いほど発生確率が高いとされ2値の結果を予測するために使用されます。この分析によりどの要因が最も影響を与えているのかを特定できるため、商品の購買意欲や購買力などマーケティング分野のほか、災害や金融リスクの予測にも利用されます。
主成分分析
主成分分析とは多数の変数(要素)から成るデータを分析し、圧縮して主成分である新たな変数を作り出して表す手法です。
主成分分析では要素を集約しつつ主成分となる変数を残すため、データの視覚化・特徴の把握が容易になる特徴があり、大量のデータを扱う場合に有効な手法です。
変数を主成分に集約することによりグラフ化が可能になるほか、各主成分に影響を与えている変数がわかる「主成分負荷量」によって、変数間の関係性も表せます。
グレイモデル
グレイモデルは、未来予測を行うための統計モデルであり、過去のデータから将来の予測を行います。明らかなデータを「白」、明らかではないデータを「黒」として、どちらともいえない曖昧な中間の「グレイ(灰色)」のデータを予測します。
グレイモデルは少量の時系列データから未来の動向を予測できるため、リスク管理や新製品の売上予測などに使用されますが、ほかの分析手法と併用する場合が多いです。
データ分析のツール
データ分析のツールとは、データを収集し整理して分析するためのソフトウェアです。表計算ソフトウェアであるエクセルや、統計処理・データ可視化・リアルタイムのレポート作成が可能なBI(Business Intelligence)ツール、機械学習アルゴリズムを用いた高度な分析を行う機械学習プラットフォームなどがあります。以下、3つを紹介します。
- エクセル
- BIツール
- 機械学習
エクセル
大半の企業に導入されており、ビジネス現場で最も広く使用されているエクセルはデータ分析にも活用されています。
グラフにより簡単にデータが可視化できる、ピボットテーブルにより容易にクロス集計ができるといった機能のほかに、エクセルのアドインであるソルバー機能の使用で回帰分析や主成分分析なども行えます。
ただし、膨大なデータを扱ったり複雑な分析を行ったりする場合には、より高度なツールが必要になるでしょう。
BIツール
BI(Business Intelligence)ツールは、企業が保有する膨大なデータから有用な情報を抽出し、可視化・分析するためのツールです。BIツールには、データベースから取得したデータを分析・可視化するためのダッシュボードやレポート機能があります。
ほかにもBIツールにはクエリ作成やデータ加工などの高度な機能が搭載されており、企業が保有するデータの有効活用や課題の早期発見により迅速な意思決定ができるようになります。
機械学習
機械学習は、データから「機械(コンピューター)」が自動で「学習」し、データの背後にあるルールやパターンを発見する方法です。
機械学習には、最初に正解データを与える「教師あり学習」や正解を与えずほかのデータからパターンを学習する「教師なし学習」、与えられた条件の中で目的となる「報酬」を上げるために試行錯誤して学習する「強化学習」などの種類があります。機械学習の活用により企業の業務効率化や新しいビジネスモデルの創造が期待されています。
データ分析の業界ごとの活用事例
データ分析は多様な業界で活用されている、現代のビジネスにとって重要な戦略的ツールです。例えば小売業界ではターゲット層への最適な商品の提供、医療業界では効果的な治療法の発見、金融業界ではリスク管理や投資戦略の決定を目的としてデータを分析しています。
ここでは以下の主要な業界ごとに、データ分析の活用事例を紹介します。
- 小売業
- 製造業
- 農業
- 医療
- 教育関連
- 飲食関連
- 金融関連
小売業
小売業界では、顧客に最適な商品を提供するために顧客の購買履歴・属性・嗜好データなどの分析を行っています。過去の購買履歴から顧客の好みを把握して表示されている、おすすめ商品の提案はECサイトなどでよくみられるでしょう。
また、データ分析は在庫レベルや販売速度の予測により、需要が高い商品を適切なタイミングで補充できる在庫管理のほか、顧客の購買傾向や店内の移動パターンの分析による店舗レイアウトや商品陳列最適化にも役立っています。
製造業
製造業でも、データ分析の活用により生産性の向上や品質の改善を図り競争力を高められます。例えば製品の不良品データを分析して原因を特定し欠陥品を減らしたり、生産ラインの稼働状況や機械の故障データの分析によって生産ラインの効率化・メンテナンスの最適化をしたりといった対応が可能です。
また、製品の需要予測により適切な生産計画を立案し在庫の過剰や欠品を防いだり、需要の変化に応じて必要な資源や設備の配置を最適化することができます。
農業
データ分析は農業でも利用されています。より高い収穫量や品質を実現するために行われているのが、収穫量や品質・天候・土壌データなどの分析です。
これにより生産計画の策定や病害虫の発生予測、農薬散布量の最適化が行われているほか、消費者のニーズに合わせた商品開発や農家の業務を支援する農業ロボットの開発にもデータ分析は役立っています。
医療
医療分野で活用されているデータ分析の一例が、CTやレントゲンなどの診療データの分析による病気の早期発見や早期治療です。ほかにも患者の病歴や生理学的データの分析により、病気の予測や治療法の改善につながる情報を得られます。
また、患者の健康管理データや医薬品の使用状況から病気の予防や治療効果の評価が行われています。治療や予防だけでなく、医療システムのデータ分析で医療費の削減や事務処理の最適化など医療経営にも役立っています。
教育関連
教育関連でデータ分析が活用されている場面は、生徒の学習成果・進路状況・教育プログラムの評価などのデータを基にした教育内容の改善や教育課程の最適化です。
ほかにもCBT(コンピュータ使用型調査)を用いた学力調査・試験のデータ分析を行い、広い範囲の学力を的確に測定できる問題の研究、教育分野の取り組みや調査データの分析から生徒指導や教育格差といった教育課題に関する研究も行っています。
飲食関連
飲食業界では、データ分析が販売戦略や商品開発に役立っています。飲食関連で利用されているのが、顧客の来店履歴・注文データ・人気のあるメニューの売上データなどを分析に用いて、メニュー開発や効果的なキャンペーンの企画立案・販促施策の最適化などに活用されています。
また、データ分析は需要の多い時間帯の把握による店舗の効率的な運営や、顧客の行動分析による顧客ニーズの把握などで従業員の教育にも役立っています。
金融関連
金融業界では、顧客の利用履歴や属性の分析によって個別のニーズに合ったサービス・商品の提供が可能です。また、ローンの審査における借入者の信用リスクなどのリスクマネジメント、金融商品の利回り予測にもデータ分析が活用されています。
また、証券会社では株価や為替レートなどの市場データを解析し投資家に有益な情報を提供しているほか、ロボットアドバイザーのようなAIが顧客の要望に合わせて自動で運用するようなシステムにも利用されています。
データ分析の職種ごとの活用事例
データ分析は今やビジネスのあらゆる分野で必要不可欠なスキルとなっており、各業界だけでなく営業や経理といったそれぞれの職種でも活用されています。ここではどのような場面で活用しているかについて、以下4つを紹介します。
- 営業
- 経理
- 人事
- マーケティング
営業
営業職でのデータ分析の活用場面は、過去の顧客取引履歴やリードデータの分析による顧客との関係性の向上や効率的な営業活動の実現です。例えばどのような商品やサービスがその顧客にとって最適かを導き出し、営業活動のターゲットを絞ったり新しいビジネスチャンスを見つけたりできます。
また、営業成績の分析により個々の営業がどういった点で成果を出しているかを把握し、今後の営業手法や戦略の改善につなげられます。
経理
経理職においては、企業の財務データの分析により企業の業績や財務状況を正確に把握し、経営状況の評価や企業の適切な経営戦略の決定に役立てることが可能です。
また、売上データから収支や予算配分の決定、原材料費・人件費など過去の経費データから経費の詳細な内訳を分析してビジネスの収支バランスや利益率を把握できるため、データ分析を通じて、無駄な経費の削減などにより財務の効率化を図れます。
人事
人事職では、従業員の能力・パフォーマンス・勤怠データの分析によって、人材育成や採用戦略の立案への活用が可能です。具体的には従業員のスキルや知識を把握して教育研修の計画を立てたり、退職率や転職率などのデータを分析して離職防止策を打ったりといった対処が可能です。
また、採用選考においても、過去のデータの分析によって企業に適した人材を明確化できます。ほかにも従業員の能力やスキルを分析して、適切な育成プログラムの設計やキャリアアップの促進に役立てることも期待されます。
マーケティング
マーケティング担当者は、データ分析の活用によって市場動向の把握や顧客ニーズの把握・マーケティング戦略の立案・顧客エンゲージメントの向上などに取り組むことが可能です。
具体的にはウェブサイトのアクセスデータの分析により、顧客のサイト上での行動を把握してサイトコンテンツやデザインの改善から顧客の購入アクションなどにつなげます。ほかには広告キャンペーンの成果の分析による広告予算の最適化やターゲティングの改善が可能です。
データ分析に必要な資格
資格がなくてもデータ分析は行えますが、従業員が資格の取得をすることで「一定の知識がある専門家がいる」というアピールにもなります。
ここでは以下の5つの資格について紹介します。
- 基本情報処理技術者試験 (FE)
- 応用情報技術者試験 (AP)
- 統計検定
- 統計士・データ解析士
- データベーススペシャリスト試験
基本情報処理技術者試験 (FE)
基本情報処理技術者試験(FE)は、情報処理に必要な基礎知識を問う資格試験です。プログラミングの構造などの基礎理論・コンピューターシステム・データベースやネットワークなどの技術要素からシステム戦略や経営戦略といった分野まで広範な知識が問われます。
FEは、情報系の学部や専攻を履修している学生や、情報系の企業で働く人にとっては最低限の知識を身につけるための入門編といった位置づけの資格試験として有用です。
応用情報技術者試験 (AP)
応用情報技術者試験(AP)は基本情報処理技術者試験(FE)の上位に位置するもので、より高度な情報技術に関する知識と技術を問う資格試験です。
「ITを活用したサービス・製品・システム及びソフトウェアを作る人材に必要な応用的知識・技能をもち、高度IT人材としての方向性を確立した者」を対象としており、ITを活用した戦略の立案やプロジェクトの管理を行える人材を目指します。
統計検定
統計検定は、日本統計学会が実施する資格試験で、統計学に関する知識を問うものです。統計学はデータ分析において基礎的な学問であり、統計的手法を適用して問題解決を行うためには、統計学の知識が欠かせません。
統計検定では基礎的な知識から応用的な知識まで幅広い分野の統計学に関する問題を出題しており、「データに基づいて客観的に判断し、科学的に問題を解決する能力」が求められるためデータを活用する知識が身に付きます。
統計士・データ解析士
統計士・データ解析士は一般財団法人実務教育研究所が行っている文部科学省認定の通信講座を受講し修了すると取得できる資格です。資格取得には課題提出と終末試験の合格が必要であり、ほかの資格のように試験のみではない点が特徴です。
統計士は統計学の基礎的な知識を身に付ける初級レベル、データ解析士は統計を仕事で実践するレベルの技術を身に付ける中級レベルの資格として、データ分析に必要な知識と技術が身に付きます。
データベーススペシャリスト試験
データベーススペシャリスト試験は、基本情報処理技術者試験(FE)や応用情報技術者試験(AP)と同じ情報処理推進機構が行っており、データベースに関する知識や技術を評価する資格試験です。
データベーススペシャリスト試験は、データベースの設計、運用、保守に関する基礎的な知識や技術を問う内容となっており、データ分析と関係が深いデータベースに関する幅広い知識や技術が身に付きます。
まとめ
データ分析はビジネスの効率化や競争力向上だけでなく、社会課題の解決に役立つ重要な手法です。目的に適した手法を用いたデータ分析により、企業はビジネスの戦略策定に必要な情報を正確に把握し迅速な意思決定を実行できます。
データ分析で得られた結果を最大限に活用するためには、データ処理の専門知識やツールを使いこなすスキルのほかにも、導入する際の業務負荷の増大への対策や業務にあたるメンバー間でデータを正しく解釈する知識の共有が必要です。
なお、博報堂ではオンボーディングを支援する自社ソリューションとして、「Data Science Boutique:データ分析‧戦略立案サービス」も提供していますので、よろしければご覧ください。
BIZ GARAGE 編集部
ビジネスをとりまく環境の大きな変化により、最適な手立てを見つけることが求められる現代。
BIZ GARAGEのコラムでは、生活者の心を動かし、ビジネスを動かすために、博報堂グループのソリューションや取り組みのご紹介、新しいビジネスの潮流などをわかりやすく解説しています。
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