世界中でさまざまな環境問題や社会問題が積み重なる中で、企業はSDGsの17の目標に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献することが求められています。
SDGsの取り組みによって、世界における諸問題の解消につながるだけでなく、企業にとっても環境面・経営面・社会的信用など多くのメリットがもたらされます。
本記事では、ビジネスにおけるSDGsの重要性や価値を解説するとともに、企業がSDGsに取り組むメリットやビジネス活用の具体例をご紹介します。
目次
ビジネスにおけるSDGsの重要性
近年では、ESG投資の推進などに見られるように、単に「良い製品を提供している」だけで企業の価値をはかることは難しくなってきています。高品質な製品を提供しているだけでなく、環境問題や社会問題をはじめとしたさまざまな課題へ真摯に向き合い、社会に貢献している企業こそが生活者に支持される世の中になってきているためです。
企業においても、SDGsへの理解は少しずつ進んできています。帝国データバンクが2021年に実施した「SDGsに関する企業の意識調査」によれば、SDGsに積極的な企業は39.7%で、前年よりも15%以上増加しています。
このような背景から、経営者はSDGsを意識した経営戦略を構築し、自社の価値を高めるための施策を実行することが重要です。
参考:SDGsに関する企業の意識調査(2021年)(帝国データバンク)
SDGsがビジネスにもたらす価値
国連開発計画(UNDP)がWEBサイトで公開している「SDGsへの影響」によれば、SDGsにおける17の目標が達成されると、2030年までに年間12兆ドルの新たな市場機会が創出される可能性があると述べられています。
企業が持つ事業や技術とSDGsへの取り組みによる相乗効果によって、新製品や新サービスが開発され、これまで存在していなかった市場が生まれてビジネスチャンスが広がるためです。
また、SDGsの17の目標の達成によって、今後10~15年間の平均GDP成長率が世界で2~3倍になるという試算にも言及しています。SDGsを達成することで、持続可能で豊かな世界が実現するだけでなく、企業にとっては新たなビジネス機会の獲得にもつながるのです。
参考:SDG Impact | United Nations Development Programme (UNDP)
企業がSDGsに取り組むメリット
企業がSDGsに取り組むと、資源の有効活用をはじめとした環境面、売上向上やコスト削減の経営面、企業の信用向上など社会的信用面のそれぞれに多くのメリットがあります。
ここでは、企業がSDGsに取り組むメリットを詳しく解説します。
環境面のメリット
環境面のメリットとしては、エネルギー使用量の削減や資源の3Rの推進が挙げられます。SDGsに取り組むことで、環境負荷の軽減をはかると同時に、資源を大切にする体制を構築できます。ここでは、環境面のメリットを2つの観点から解説します。
エネルギー使用量を削減できる
SDGsの目標には、環境に関するものが数多く設定されています。具体例を挙げると、次の通りです。
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この中で、「目標7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の中には、エネルギーを効果的に活用することに関するターゲットがいくつか設定されています。
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こうしたSDGsの目標およびターゲットに則り、省エネ活動に取り組むことで、電気やガス、水資源などのエネルギー使用量を削減できます。
参考:SDGグローバル指標(SDG Indicators)(外務省)
資源の3Rを推進できる
資源の3R推進につながることも、SDGsに取り組むメリットの一つです。
資源の3Rとは、リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の3つのRを指す言葉です。「ごみの量を減らし、使用済みの製品を繰り返し使用し、資源を再利用する」考え方を示すもので、資源の3Rを徹底することによって、資源の消費を抑制できるだけでなく、企業として資源を大切にする姿勢を見せることができます。
経営面のメリット
経営面のメリットとしては、SDGsの関連事業への進出・新製品開発による売上向上や、資源の消費抑制によるコスト削減、社会貢献によるブランド価値の向上などが考えられます。
ここでは、経営面の3つのメリットについて詳しく解説します。
売上向上につながる
SDGsへの取り組みをきっかけに新規事業へ参入することで、新たなビジネスチャンスが生まれ、販路拡大が期待できます。また、社会問題や環境問題を解決するための新製品・新サービス開発が新たなユーザー層に受け入れられれば、売上向上にもつながります。
販路拡大だけでなく、自社の既存製品やサービスをSDGsと掛け合わせることで付加価値を高め、より上位プランへのアップグレードを促したり、高価格帯の製品購入を増やしたりする施策も有効です。
コストを削減できる
製品の生産やサービスの提供をはじめとして、企業活動には膨大なエネルギーと資源を必要とします。SDGsへの取り組みによってエネルギー使用量の削減や資源消費量の抑制を実現できれば、企業活動に費やすコストを大きく削減できます。
企業において利益を拡大するためには、売上の向上だけではなく、コスト削減も有効な手段です。エネルギーと資源の使用量を抑制することで環境に配慮しつつ、自社の利益確保にも貢献します。
ブランド価値が向上する
SDGsに積極的に取り組んでいる企業は、社会に貢献している企業とみなされ、顧客や株主からの信頼を得やすくなり、企業としての評価が高まります。
社会に貢献している企業としての評価が高まれば、ブランド価値も高まり、取引先の増加につながったり、唯一無二の企業として生活者への認知が拡大したりする成果が期待できます。また、SDGsに前向きに取り組むことで、社員が自社に誇りを持ちながら働くきっかけになり、モチベーションアップにも役立ちます。
社会的信用に関するメリット
社会的信用に関するメリットとしては、企業の信用が高まるとともに、採用活動に良い影響をもたらしたり、地域へ貢献したりすることが挙げられます。
環境面・経営面に続き、社会的信用に関する3つのメリットをご紹介します。
企業の信用が高まる
SDGsへの取り組みは、環境問題や社会問題など幅広い課題にアプローチできるため、顧客や株主など製品やサービスを直接的に提供する相手だけでなく、自社の社員や取引先、地域に住む人々など、多くのコミュニティにとって良い影響をもたらします。
SDGsに取り組みながら多様なコミュニティの課題を解決する中で、企業としての信用が高まれば、売上や価値向上にもつながります。
採用活動に良い影響をもたらす
SDGsに取り組んでいる姿勢を対外的にアピールし、社員の働きがいを高めて離職率を低下させるとともに、採用活動に良い影響をもたらすことも可能です。
近年の求職活動においては、給与・休日などの諸条件や働きやすさだけでなく、企業が社会に貢献しているかどうかを重視して就職先を探す人も増えています。このような求職者に対してSDGsへの取り組みによる成果を公開することで、「この企業で働きたい」という気持ちを高められます。
地域に貢献できる
SDGsへの取り組みは、地域貢献にもつながります。地域における事業の創出や雇用創出、消費拡大などの好影響をもたらし、経済を活性化させられます。また、自社の事業とSDGsを掛け合わせた製品やサービスを提供することで、地域が抱えている環境問題や社会問題などの解決にも貢献できます。
他にも、企業としてボランティア活動を行ったり、自社の製品・技術を活用して地域の防災に協力したりする方法で、地域活動に参加することも可能です。
企業がSDGsに取り組むときの注意点
企業がSDGsに取り組む際は、ビジネスと社会貢献の両方を意識するとともに、経営理念と合致した施策を実行することが大切です。また、社員の理解を得て全社的に取り組むとともに、本業を疎かにしないことも意識しましょう。
ビジネスと社会貢献の両立を意識する
企業としてSDGsへの取り組みを推進する際は、ビジネスと社会貢献の両立を意識することが重要になります。SDGsと自社のビジネスが相互に作用し、利益を生み出しながら社会貢献を果たすための戦略を講じましょう。
社会の一員として率先的に社会的責任を果たすことは不可欠ですが、ビジネスとの相乗効果を意識せずに取り組めば、利益につながらない奉仕活動になってしまいます。自社製品を貧困地域に寄贈したり、自社サービスを働き方改革に活用したりと、自社の事業を活かしたSDGsへの取り組みを実現することが求められます。
経営理念と合致した施策を実行する
経営理念と合致した施策を実行することは、SDGsへの取り組みを成功させるためのポイントの一つです。
SDGsへ取り組む際の施策が自社の経営理念とかけ離れていると、理想的な成果は得にくくなります。そのため、自社の経営理念と指針を振り返るとともに、所有している製品やサービスの性質・メリットを十分に理解して、方向性が合致した戦略を定める必要があります。
経営理念と大きく乖離した戦略を定めると、SDGsへの取り組みを掲げながら実態が伴わない「SDGsウォッシュ」を招き、企業としての信頼が低下するおそれもあるため注意が必要です。
社員の理解を得て全社的に取り組む
SDGsへの取り組みが始まると、日常業務に加えて新たな作業が発生します。そのため、少なからず社員への負担が増える可能性は高く、十分な理解を得てから施策を実行しなければ、現場からの反対に遭うリスクが上昇します。
SDGsへの取り組みを成功させるためには、現場の協力が必要不可欠です。現場からの強い反対にあえば、施策の停滞や取り組みの頓挫につながる事態を招きます。
組織の一部だけでSDGsへの取り組みを進めるのではなく、経営層が中心となって「なぜSDGsに取り組む必要があるのか」を全社に対して丁寧に説明し、組織全体が同じ方向を向いて取り組んでいくことが重要です。
本業を最優先に考える
SDGsへの取り組みは、環境面や経営面、社会的信用面に多くのメリットをもたらしますが、SDGsの施策に集中するあまり本業を疎かにすると、かえって顧客からの信頼を低下させたり、ブランド価値を損なったりする可能性もあります。あくまでも自社の基幹となるビジネスを最優先とした上で、無理なく取り組むことが大切です。
SDGsへの関わり方に決まりはなく、企業によって自由です。「絶対に達成しなければならない目標」は定められていないため、本業を軸にしつつ社会貢献を果たせるような、バランスの良い目標を設定しましょう。
SDGsをビジネスに活用した具体事例
SDGsの戦略を講じる際は、既存の具体事例を参考にしながら自社のビジネスへ取り入れる方法が有効です。
ここでは、SDGsをビジネスに活用する具体事例として、「WEBアクセシビリティ改善ソリューション」「HR-Branding for ESG」「販促品・販売品のサステナブルライン」の3つのソリューションをご紹介します。
ダイバーシティに対応した「WEBアクセシビリティ改善ソリューション」
WEBアクセシビリティ改善ソリューションは、WEBサイトのアクセシビリティの診断から実装までをワンストップで提案するコンサルティングサービスです。
近年では誰もがインターネットを通じてさまざまな情報を収集します。その中にはパソコンやスマートフォンを扱う上で視覚や聴覚にハンデを持つ人もいるため、誰もが快適にWEBサイトを閲覧できる環境を整えるためには、アクセシビリティに配慮した設計を行う必要があります。
WEBアクセシビリティ改善ソリューションを活用することで、多種多様な個性を持つ人が分け隔てなくWEBを活用できるダイバーシティに配慮したサイト設計が可能になります。
ダイバーシティに対応した「WEBアクセシビリティ改善ソリューション」について詳しくはコチラ
人的資本経営を後押しする「HR-Branding for ESG」
近年は企業のESG投資が注目されており、「環境・社会・企業統治などの側面から社会に貢献している企業」に積極投資を行う考え方が広まってきています。このような背景においては、企業にとっての「人的資本(=人材)」も資本の一つと捉えられます。
人的資本は単に自社の製品やサービスを販売するための資産ではなく、一人ひとりの価値を最大化してこそ、企業としてのブランド価値は高まります。
HR-Branding for ESGは、企業の人的資本経営を推進するコミュニケーション戦略を策定するためのコンサルティングを行うサービスです。人的資本経営のガイドブックとして知られる「人材版伊藤レポート2.0」の内容を取り入れながら、自社の社員と企業のエンゲージメントを強化し、企業価値を高めるための戦略を提案します。
人的資本経営を後押しする「HR-Branding for ESG」について詳しくはコチラ
サステナブルな商品を届ける「販促品・販売品のサステナブルライン」
「販促品・販売品のサステナブルライン」は、SDGs達成に取り組む企業を支援し、持続可能な消費と生産を実現するために、30以上のソリューションを提供しています。
従来型の「大量生産・大量消費・大量廃棄」から「持続可能な消費と生産」に転換するためのさまざまなソリューションを用意しており、販促品・販売品製作における商品企画・開発・デザインの一連のプロセスをワンストップで提供可能です。
再生プラスチックや天然素材をはじめとした、環境に配慮した素材を使用した反則品の提案や、人権に配慮した認証基準をクリアした生産体制の構築、CO2削減を効率化するためのモーダルシフトの推進など、多角的な視点でSDGsの達成を支援します。
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まとめ
ESG投資が注目を集める中、企業は高品質な製品やサービスを提供するだけでなく、SDGsへの取り組みを通して環境問題や社会問題の解決に貢献し、持続可能な社会の実現を目指していく必要があります。
企業がSDGsへ取り組む際は、自社のビジネスと社会貢献の両立を目指すとともに、企業理念と合致した施策を立案することが大切です。自社だけでSDGsに取り組むことが難しい場合は、外部の専門家の力を借りることも視野に入れるとよいでしょう。
専門家の力を借りることで、プロの視点で自社に適したSDGs戦略を設計し、自社の成長と社会貢献をバランスよく実現することが可能になります。
BIZ GARAGE 編集部
ビジネスをとりまく環境の大きな変化により、最適な手立てを見つけることが求められる現代。
BIZ GARAGEのコラムでは、生活者の心を動かし、ビジネスを動かすために、博報堂グループのソリューションや取り組みのご紹介、新しいビジネスの潮流などをわかりやすく解説しています。
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