最終更新日 2024.9.2

サステナブルとは?基礎知識・注目される理由・企業における取り組みを徹底解説

近年、インターネット上や店舗などでサステナブルという言葉を目にする機会が増えているのではないでしょうか。その意味を「環境に良いこと」と捉えている方も多いかもしれませんが、実はそれだけではありません。

本記事では、サステナブルとは何か・注目される理由・企業における取り組みなどについて詳しく解説します。

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目次

サステナブルの基本知識

最初にサステナブルの理解を深めるために以下の3つを解説します。

  • サステナブルとは
  • サステナブルという言葉が生まれた背景
  • エコとの違い

サステナブルとは

サステナブル(sustainable)は、sustain(=持続する)とable(=可能な)を組み合わせた言葉で環境・社会・経済が持続可能なことやその方法を意味します。

その内容は環境負荷の低減のほか、人権・多様性の尊重・ビジネスの長期的な維持・地域社会・従業員の福祉も含まれます。

つまり、資源を無駄にせず、地球環境を守り、次世代のニーズも満たしながら将来的にも同じレベルの生活を維持することを目指しています。

サステナブルという言葉が生まれた背景

1980年ごろから、世界的に環境問題の議論が深まるようになりました。地球資源の枯渇に対する危機意識などから、環境・社会・経済の永続的な維持方法を模索する必要が生じ、「サステナブル」という言葉のはじまりとなりました。

世界的機関で最初にサステナブルという概念を正式に採択したのは、国連に設置された「環境と開発に関する世界委員会」です。1987年に公表した報告書では、「持続可能な開発」が中心に取りまとめられています。

さらに、2015年の国連持続可能な開発サミットでは、「持続可能な開発目標」であるSDGs(Sustainable Development Goals)が掲げられました。

これらが、現在のサステナブルという言葉の世界的な認知につながっています。

エコとの違い

サステナブルとエコは、どちらも環境に配慮した概念ですが、異なる意味を持ちます。

エコは「エコロジー(Ecology)」の略であり、生態系・生態学という意味ですが、環境保護の意味で使われることが多いです。エコカー、エコドライブ、エコバッグなど、製造時や使用時に地球環境に負荷をかけないことを目的とする取り組みに使われる言葉です。

一方「サステナブル」は、持続可能な社会を目指す考え方であるため、環境保護だけでなく、社会的・経済的な側面も考慮します。地球上の全ての人々が幸せに暮らせるよう、長期的な持続可能性の追求を目的とする言葉として使われます。

なぜ今サステナブルが注目されているのか

サステナブルが今注目されている理由は、気候変動・森林伐採・海洋汚染などの環境問題が急速に深刻化していることにあります。

今、人類の活動によって引き起こされた問題が、将来の生活や経済の発展に悪影響を及ぼすことが懸念されています。こういった環境問題は、国や企業だけでなく、徐々に一般消費者の社会的な関心事としても浸透しています。

環境問題に対応しながらも、さらなる経済発展を続ける方法を模索し、サステナブルの実現に取り組む企業も世界中で増えています。

このように、国の政策や企業のビジネスだけでなく、一般消費者もサステナブルな消費が求められるようになっているため、近年サステナブルが注目されるようになりました。

企業がサステナブルに取り組むメリット

企業がサステナブルに取り組むことにより、以下のメリットが得られます。

  • ブランド力の向上
  • 人材の確保
  • コスト削減

それぞれのメリットをご紹介します。

ブランド力の向上

企業がサステナブルに取り組むメリットの1つ目は、ブランド力の向上です。

世間のサステナブルに対する関心が高まっているため、環境負荷が小さい製品・サービスは、消費者のニーズを満たすことができます。

再利用やリサイクルが可能な製品づくりや、自然エネルギーの使用など、事業活動に環境への配慮を組み込むグリーンマーケティングがビジネスにも有効です。

サステナブルへの取り組みは、社会的・環境的な貢献に直結するため、一般消費者からの支持を受けやすく、ブランド力が向上します。

人材の確保

企業がサステナブルに取り組むメリットの2つ目は、人材の確保です。

サステナブルに取り組む企業は、社会に貢献しているイメージを持たれやすいため、魅力的な企業として認知され、人材の確保につながります。

新しいビジネスチャンスの分野として期待されていることも多いので、成長意欲が高い人材から注目されやすいという一面もあります。

また、社会的な意義を持つ仕事に従事しているという意識は、従業員の働きがいの創出になり、離職率の低下も期待できるでしょう。

コスト削減

企業がサステナブルに取り組むメリットの3つ目は、コスト削減です。

照明をLEDに切り替えたり、高効率の電気機器・設備を導入したり、電子化への移行で紙を削減したりすることは、省エネルギーにつながります。

特に電気代が高騰している現在、節電はコスト削減に大きく寄与するでしょう。

また、サステナブルに取り組む企業は、省エネ設備の導入など、一時的なコスト増加を厭わず長期的な視点に基づいた投資ができるため、結果的にコストを大きく削減できます。

サステナブルビジネスの広がり

サステナブルはビジネスのさまざまな分野でも広がりを見せており、ここでは以下の5つの分野を紹介します。

  • サステナブル経営
  • サステナブルファッション
  • サステナブルツーリズム
  • サステナブルフード
  • サステナブル建築

サステナブル経営

サステナブルビジネス例の1つ目は、サステナブル経営です。

サステナブル経営とは、環境・社会・経済の3つの側面をバランス良く考慮しながら、企業活動を行い、持続可能な社会を目指す経営のことです。環境に配慮した製品・サービスの開発にとどまらず、ジェンダー平等や働きがいのある雇用促進なども目標とし、企業の内部変革にも取り組みます。

また、短期的な利益追求ではなく、長期的な視点が重視され、持続可能な事業展開が求められます。企業の社会的責任を意味するCSRとは異なり、サステナブル経営は国や個人とともに取り組む必要性が生じます。

関連記事:サステナビリティ経営とは?企業が取り組む意義と実現するための5つのステップを解説

サステナブルファッション

サステナブルビジネス例の2つ目は、サステナブルファッションです。

ファッション業界は、過剰生産や大量廃棄による資源の浪費、生産コストカットのための不当な低賃金労働、染色の廃水による水質汚染など、さまざまな問題を抱えています。サステナブルファッションはこれらの問題に対応し、環境や社会への負荷を減らして、健康的な労働環境で生産を行い、より持続可能な製品を提供することを目指します。

具体的には、耐用年数の長い製品づくりや、オーガニックコットンなどの環境に優しい素材や再生可能な素材の採用・原材料の調達・生産・消費まで追跡可能なトレーサビリティの確保などが挙げられます。

サステナブルツーリズム

サステナブルビジネス例の3つ目は、サステナブルツーリズムです。

サステナブルツーリズムは、観光地の環境や文化、現地住民の暮らしに配慮しながら、観光業を確立させることを目的とします。従来は観光客を受け入れるための商業化により、自然が破壊され、環境が汚染される観光地も少なくありませんでした。

サステナブルツーリズムは、自然や文化遺産を保全するだけでなく、現地の食材や物産品の購入推進、ガイドやツアーコーディネーターの雇用など、地域経済にも貢献します。持続可能な観光業の発展と同時に、観光客への豊かな体験の提供を目指し、各地の特色を活かした工夫を重ねています。

サステナブルフード

サステナブルビジネス例の4つ目は、サステナブルフードです。

サステナブルフードは、環境や社会、人間の健康への影響に配慮して作られた食べ物のことです。

食品業界では、買いすぎなどによるフードロスや、多量な化学肥料の使用による土壌汚染や水質汚染、過剰漁獲による海洋生物の減少など、さまざまな問題を抱えています。こういった問題に対応するため、農薬や化学肥料を使わずに生産されたオーガニックコーヒーや、適切に管理された漁業で獲られたサステナブルシーフードなどの流通が進んでいます。

それと同時に、環境への配慮を証明する認証マークも整備されています。原料の生産〜製造に至るまでの基準を示した「国際フェアトレード認証」や、化学肥料・農薬・遺伝子組み換え技術の不使用を証明する「有機JASマーク」などは、サステナブルフードの判断基準に役立ちます。

サステナブル建築

サステナブルビジネス例の5つ目は、サステナブル建築です。

設計・施工・運用の全ての段階で、省エネルギー・リサイクル・有害物質排出抑制などで環境に配慮し、将来にわたって長期的に利用し続けられる建築を目指します。

また、地球環境だけでなく、利用者の快適度や地域の景観などに対する配慮も必要です。環境保護と快適性の両立を目指すのが、サステナブル建築です。サステナブル建築は、省エネや環境負荷の低減によって、ランニングコストも削減され、結果的に建築所有者の負担も軽減できます。

サステナブルな取り組み5つの事例を紹介!

最後に、日本政府や企業で実際に行われているサステナブルな取り組み事例をご紹介します。

日本政府の取り組み「SDGs」

日本政府は「持続可能な開発目標」を意味するSDGsに取り組んでいます。

2016年〜2030年の15年間で達成すべき、サステナブルな社会を実現するための世界共通の目標がSDGsです。豊かさを追求しながらも地球環境を守り、地球上の誰一人取り残さないことを誓い、17のゴールで構成されています。2015年9月に国連で開催されたサミットで、193の全加盟国によって採択されました。

日本政府は「SDGs推進本部」を設置し、各省庁や関係機関と連携しながら、再生可能エネルギー普及による低炭素社会への転換、リサイクルや廃棄物削減に関する政策策定、SDGsの理解を深める教育カリキュラム改革などを進めています。

また、途上国の持続可能な発展を支援するなど、国内だけでなく率先して国際協力に取り組む体制を整え、両面で実施しています。

食品業界での取り組み

飲料メーカーのA社は、新たな容器の提案でサステナブルに取り組んでいます。

使用済みペットボトルを回収し、リサイクル処理して、再びペットボトルとして利用できるよう再生しています。そのほかにも、ペットボトルの軽量化、ラベルレス製品の増産などにより、プラスチックの使用量を減らし、温室効果ガス排出量の削減に寄与しています。

これらの取り組みにより、2022年にはリサイクル樹脂使用率を50%に高め、2030年には石油由来の原料の完全不使用を目指しています。

また、販売した自社製品と同等量のペットボトルの回収、政府・自治体・地域社会などと協働した容器回収・リサイクルスキームの構築にも取り組んでいます。

アパレル業界での取り組み

アパレル業界のB社は、サステナブルな取り組みを積極的に行うことで、アパレル業界全体を牽引しています。

環境負荷を減らしたサプライチェーンの構築と労働環境の改善を目指し、アパレル産業関係者、米国環境保護庁のトップリーダーらを集めた2010年のミーティング開催に尽力しました。

このミーティングがきっかけとなり、環境的・社会的な実績を測定するための指標づくりの取り組みには、100社を超える企業が参加しています。環境に悪影響を与えないアパレル産業を目指す活動は、関連する人々やコミュニティに肯定的な変化をもたらせています。

また、製品をより長く使えるように修理サービスを拡充させたり、自分で修理が可能になるリペアパッチやリペアテープを販売したりしています。

不動産業界での取り組み

不動産業界のC社は、持続可能な社会と継続的な利益成長を目標とし、独自の経営方針を策定し、各方面でサステナブルな取り組みを行っています。

新築物件は高水準の環境性能を標準とし、既存物件はリニューアルによって省エネ性能向上、現地での再生可能エネルギーの創出などを計画しています。

また、建築時のCO2排出量を把握するツールを整備し、関連会社に削減計画書の提出を義務化しています。

社会貢献活動にも力を入れており、地域の文化・芸術活動への支援や、災害復興支援、地域コミュニティのイベントを開催しています。

さらに、施策を推進するために最も重要な原動力は人材であるという考えのもと、働きやすい職場づくりや従業員の健康増進にも取り組んでいます。

アパレルブランドの取り組み

アパレルブランドのE社は、2030年までに55%のCO2排出量削減という目標を掲げ、サステナブルに取り組んでいます。

製品の製造過程で、その製品が環境に負荷を与える影響を分析するとともに、リサイクル素材などを使用、またエネルギー効率の高い工場設計を行っています。

さらに、サプライチェーンから有害物質を排除することを確約し、全ての取引先にREACH規制などに基づく制限物質リストが課せられています。原材料・製品の両方で、使用物質の検証も断続的に行っています。

そのほかにも、外部調達における責任・気候変動への対策・地域社会への貢献などの観点から、様々なサステナブルな取り組みを行っています。

まとめ

本記事では、サステナブルとは何か・注目される理由・企業における取り組みなどについて、詳しく解説しました。サステナブルは、一般消費者にも身近な存在になっており、脱炭素社会への企業の取り組みも今後さらに増加していくことが予想されます。

博報堂グループでは「Earth hacks」を展開し、企業のCO2削減・脱炭素化への支援をしています。サステナブルな社会・環境づくりに向けた事業推進に興味をお持ちであれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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BIZ GARAGE 編集部

BIZ GARAGEコラムでは、ビジネスをとりまく環境の大きな変化により、最適な手立てを見つけることが求められる現代において、生活者の心を動かし、ビジネスを動かすために、博報堂グループのソリューションや取り組みのご紹介、新しいビジネスの潮流などをわかりやすく解説しています。

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