2021年5月18日から20日にかけて、Web開発者向けカンファレンス「Google I/O 2021」が開催されました。本記事では、Googleのコマースとペイメント領域を管轄(President of Commerce and Payments)するBill Ready氏が基調講演の中で発表したショッピンググラフについて、概要と通販サイト担当者が知っておくべきことを紹介します。
参照元:Google Keynote (Google I/O ‘21) - YouTube (開始位置 1:01:59)
(図1:Google I/O 2021の基調講演でショッピンググラフについて発表されている様子)
目次
Googleが発表したショッピンググラフとは
ショッピンググラフは、人・場所・物について構造化した情報を提供しているナレッジグラフをベースに開発された、商品に関する情報を提供するためのデータセットです。商品ごとにGoogleが保有する関連情報がまとめられたもので、数十億の商品とその販売者に関する包括的なデータとなっています。
ショッピンググラフには以下の情報が含まれます。
・Webサイト
・価格
・レビュー
・動画
・SKU & Inventory Data(ブランドや小売業者から直接受け取る商品情報や在庫データ、属性)
参照元:Working with merchants to give you more ways to shop
(図2:ショッピンググラフに含まれる情報)
また、コマースプラットフォームであるShopifyとのパートナーシップ拡大も発表されました。Shopifyを利用している170万の販売者が簡単な操作で、ショッピンググラフを通じてGoogleのプロダクト上に商品を表示できるようになります。
Googleのプロダクトでショッピンググラフが活用されるイメージ
ショッピンググラフを発表したBill Ready氏は、最大の強みをGoogleのプロダクト全体で利用可能であることと述べています。基調講演では以下の例が紹介されました。
・Googleレンズ
外出先で気に入った商品を見つけたときに、Googleレンズをかざすだけでまったく同じ商品や類似商品を見つけることができます。
・Google 検索(画像検索含む)
ショッピンググラフにより、あらゆる検索面で商品の包括的なデータを入手できます。
(図3:画像検索結果にて、商品情報が表示される様子 ※2021年6月時点)
・Google フォト
気に入った商品を含むスクリーンショットを取っておくと、Googleレンズで写真を検索するかどうかの提案が表示されるようになります。
参照元:Working with merchants to give you more ways to shop
(図4:Google フォト内の画像でGoogle レンズの利用が提案されるイメージ)
・YouTube
YouTubeでは、2021年初頭に動画内で紹介された商品を簡単に購入できる機能が一部で公開されています。現時点ではパイロット版となっているため、今後の最新情報が期待されます。
参照元:Google Keynote (Google I/O ‘21) - YouTube (開始位置 1:03:56)
(図5:YouTube動画で紹介された商品を簡単に購入できる機能のイメージ)
・Google Chrome
Google Chrome上で複数の通販サイトの過去2週間分のショッピングカートが表示される機能の導入予定も発表されました。カートに入れたままになっている商品がまとめてリマインドされることになります。複数の通販サイトを横断して買い物をするユーザーにとっては、魅力的な機能になるでしょう。
参照元:Working with merchants to give you more ways to shop
(図6:Google Chromeでのショッピングカートのリマインダーのイメージ)
Googleはどうやって商品データを収集しているのか
Googleは商品データを「通販サイト運営者」と「販売者(メーカーやブランド)」のそれぞれから収集する仕組みを用意しています。まず、「通販サイト運営者」がGoogleに情報を提供する仕組みとして、Product構造化データとMerchant Centerがあります。
・Product構造化データ
構造化データとは、検索エンジンやクローラーに情報を理解させるためにschema.orgの規定フォーマットで記述したデータのことを言います。Googleがサポートしている構造化データの種類は多岐に渡っており、商品の情報を記述するProductの他、求人情報を記述するJobPostingやレシピ情報を記述するRecipeなどがあります。Product構造化データでは、商品名や価格、レビュー、画像、在庫情報などの情報を規定のフォーマットで記述します。
参考:商品 | 検索セントラル | Google Developers
・Merchant Center
構造化データの他に、通販サイト運営者がGoogleに商品情報を通知できる仕組みとしてMerchant Centerがあります。Googleが指定する形式で作成したデータフィードをMerchant Centerを通じて通知することで商品情報を提供できます。
参照元:Merchant Center - Google for Retail
(図7:Merchant Centerの開始画面)
もともとはGoogleのショッピング広告に出稿するための仕組みでしたが、2020年の秋から広告出稿をしなくてもMerchant Centerを通じてデータを提供することで無料のショッピングタブに掲載されるようになりました。
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通販サイト運営者は、これらの仕組みを利用することで利用者数が膨大なGoogleのプロダクトから担当している通販サイトを経由して買い物してもらう機会を得ることができます。また、Googleにとっては膨大な商品データを活用してより良い購入体験を提供することで、Googleプロダクトの利用者増加を狙うことができます。
「販売者(メーカーやブランド)」がGoogleに情報を提供する仕組みには、Manufacturer Centerがあります。
・Manufacturer Center
データフィードを通じてGoogleに商品情報を提供する点ではMerchant Centerと同様ですが、Manufacturer Centerを利用できるのはメーカー、ブランド所有者、ブランドライセンサーに限定されています。Merchant Centerよりも詳しい公式な情報が提供されるためGoogleにとってはより精度の高い情報を扱えることになります。また、販売者も商品についての正確な情報をGoogleのプロダクト上で表示できるというメリットがあります。
参照元:Manufacturer Center - Google for Retail
(図8:Manufacturer Centerの開始画面)
通販サイト担当者は何をするべきか
上記の通り、Googleに商品情報を提供することでGoogleのプロダクト上で露出を高めることができるようになってきています。まずは、Product構造化データとMerchant Centerを利用して商品情報をGoogleに提供し、見込み顧客との接点を増やす取り組みをすると良いでしょう。
また、ショッピンググラフのデータはGoogleのプロダクトの様々な場所で活用が広がると推測されます。自社で扱っている商品にとって理想的な見込み顧客との接点がGoogleのプロダクトで実現されるかもしれません。通販サイトの担当者はGoogleのプロダクトの最新動向を追うとともに、創出された見込み顧客との接点でベストなコミュニケーションを取れるよう模索する姿勢が重要になりそうです。
まとめ
検索結果画面にとどまらず、あらゆるGoogleのプロダクト上で見込み顧客にショッピンググラフの商品データが表示されるようになってきています。通販サイトの担当者にとっては、新たな流入経路が増えることになるため、Googleのショッピンググラフ活用推進は売り上げ増加につながるひとつのチャンスと言えるでしょう。検索結果以外のGoogleプロダクトから流入する見込み顧客を意識した施策立案を検討する必要性がでてくるかもしれません。